footballhack: 2011/06

2011年6月20日

考えて走る10 味方を追い越してフリーにさせる

今回は味方を追い越す動きの効用を見ていきます。これが上手く行けばクサビをフリーで受けることが出来ます。
まずは状況設定です。

左のように一番上の水色の選手がクサビを受けに降りてきます。それと同時に左の選手が裏へ抜ける動きをします。

このとき考えられるパス選択肢は2つあります。

ひとつはクサビとスルーパスの見合い重なったら一つと飛ばすで見たように、直接裏へ抜ける選手へパスを送るコースです。

これをやられたらDFとしては非常に痛いところです。
次の選択肢はポスト役に一旦預けて、そこからフリックパスなどで裏へ送るプレーです。この形は第三の動きなどと呼ばれます。

綺麗に決まれば攻撃側としては気持ちいいいですが、フリックのパスの技術が難しいところが難点です。
上の2つのパスを通されるとDFとしては非常に厄介なので、近年のゾーンディフェンス主流のサッカーでは主に左のように対応を図ります。

ポストプレーヤーをマークしていた選手が、マークを離し裏のスペースのカバーリングに回りました。
このとき左図のピンクの丸で示したゾーンが空くのでクサビのパスを安全に入れることができます。

味方を追い抜く走りには自分がボールを受けるだけではなく、味方をフリーにする働きもあります。チェックの動きは一切入っておらず非常にシンプルなランニングだけで相手を崩すことが出来ます。

このようなプレーは主にサイドでの攻防でよく見られます。

大事なのはパスの出し手がこのようにスペースの見つける能力を備えているかどうかです。


このプレーは横関係でも成り立ちます。


バルセロナがフィールド中央でポゼッションする時、この形がよく見られます。









スペースを作り使うサッカーをするために大事なのは、ボールホルダーに常に2つのパスコースを見せてあげることです。そうすれば相手の守備陣はどちらか一方しか防ぐことが出来ませんから、どこかに必ず一つ穴を作る結果になります。そこが活用すべきスペースです。

バルセロナの選手が速く走っているわけでもなく、チェックの動きをしているわけでもないのにフリーでクサビや横パスを受けられるのは、上で見たようなスペースの創造をしているからです。あるいはDFのマーキング意識にギャップを作っているとも言い換えられます。 複数人でそれぞれが別方向に走ることでギャップは生まれます。

今回は重なったら一つ飛ばすでみたスペースの見え方と全く逆の事象を取り上げました。スペースの生成条件は味方や相手の動きによって様々に変わります。瞬間的に正しい判断を下すには相応のトレーニングと柔軟な頭脳が不可欠です。

次→FWの動き方2 差金の動き

2011年6月16日

【図解】シュートのセオリー

今回はシュートのセオリーについて書いてみます。特にGKとの1対1においてのセオリーを紹介したいと思います。

始めに、シュートとパスはどこが違うか考えてみましょう。同じキックでもシュートとパスは意味合いが全然違います。シュートは対象者に捕球されてはならないキックであることに対して、パスは対象者に捕球させなければならないキックであるということです。よく「シュートとはゴールへのパスだ」なんて言います。たしかにその通りなのですが、この言葉はGKの存在を無視しているようにも聞こえます。

GKは全力でシュートを止めにかかるわけですから、少なくともGKに当てないように蹴らなければゴールになりません。(強烈なシュートなら当たっても入りますが。)また、よく「シュートを打つときは隅を狙え」と言います。これもたしかにその通りなのですが、GKにシュートコースを予測されてしまったり、シュートが枠外へ反れて行ってしまってはゴールを奪うことは出来ません。では、理想的なシュートを言葉にするとどうなるか。それは「GKの体に近いところギリギリを通過するようなシュート」だと思います。GKは概ねゴールの真ん中に立っていますから、体のすれすれを抜けばボールが枠外に飛んでいく心配はありません。まぁ極論言うと入ればなんでもいいってことです笑。


ここまでは頭の中の話でした。実際にはシュートはGKとの駆け引きであり、それ故導きだされるパターンがあります。

特にGKとの1対1においては GKの準備姿勢を2パターンに分類することで、その後のセービング姿勢を予測し、左右あるいは上下にシュートを打ち分けることが出来ます。

左のように基本的にはGKとの1対1では、左、右、上、下の4つのシュートコースが存在します。



■GKが前進している場合

GKが飛び出してくる場合、GKの足は縦に開いているように見えます。そしてシューターのキックの瞬間、GKは横に開脚し上半身を立てて飛び込んできます。なぜなら、この時GKは最大のピンチを迎えるわけで、シューターに圧力をかけるため、またシュートコースを最小限に狭めるために、体を大きく見せようとするからです。

ですから左の図のように股の下が大きく開くわけです。

時にはGKは体を倒して投げ出して、スライディングのような格好でシューターに迫るので、その時はチップキックで上を狙うのもよいでしょう。



■GKが静止している場合

GKが足を横に広げて接地しシューターを待ち構えているときは、シューターがキックする瞬間に必ず左右どちらかに体を倒してセービングを図ります

足を横に広げて接地という姿勢は最高の準備姿勢です。GKとしては体勢十分で判断の余裕もある、そんなときはシュートフェイクをかけて左右に打ち分けるのが良いでしょう。

例えばシューターから向かって右に打つ姿勢をとって、GKを右に倒してから左方向へ、丁度GKの足の上を狙って少し浮かして蹴ればうまくいくはずです。

十分にスピードのあるシュートなら脇の下も通過します。



■GKが見えたら

スルーパスなどで裏に抜けてGKと1対1のシーンを迎えたら、まずはGKの位置と姿勢を確認しましょう。

足を縦に開いていたら、その後開脚して倒れる確率が高いので、股下かループシュートを狙います

クロスのトレンド3でもみたように、今見えた相手の体のあるところが未来のシュートコースなのです。コンマ5秒後の世界を想像することが鍵です。怖がらずに確信を持って蹴りこめばきっと入ります笑。

足を横に開き準備姿勢を整えていたら、表裏のインサイドキックを使って左右に打ち分けるといいでしょう。参考→蹴球計画「ゴールを決める技術


シューターに余裕があったらドリブルでかわすという選択肢もあります。






今回はGKとの1対1を取り上げました。ではミドルレンジ、ロングレンジはどうなるかというと、幸谷秀巳さんが言うように、ゴールポストを狙って思いっきり蹴る練習を繰り返せば良いと思います。

最後に以下の動画でGKの準備姿勢とシュートコースの関連性を確認して下さい。


次→シュートのテクニック 助走でタイミングをずらす

2011年6月15日

ワンツー色々2

前回は基本となる4つのワンツーの型をひと通り見てみました。今回は少し複雑なパターンをやってみたいと思います。

ワンツーは使い古された崩しの形です。「ワン」が通れば次に「ツー」がくることくらい誰でも予想がつきます。

ですので、左のようにパスアンドゴーしたのはいいもののDFに走ってついてこられた場合、どのようにすればよいでしょうか。

一つの答えにワンツー戻しがあります。ワンツーが通ったら壁役の選手にパスを戻す方法です。

これが意外と使えます。DFにとってはワンツーまで読み切ることは、それが使い古されたパターンであるため非常に容易です。しかし、「読み切った」という安堵感が引き起こされるからか、戻しパスまで予測することは大抵出来ません。
縦関係から始める場合は左図のようになります。

特にクサビパスから始まる崩しでよく見られます。

壁役の選手はワンプレーが終わっても気をぬかずにすぐに次のプレーのために動き出さなければなりません。





次はワンツーではないですが、壁パスに似たよくあるパターンを取り上げてみます。

ここでは便宜的に三角戻しと命名しておきます。

バルセロナの試合でよく見られるパス交換です。

これを行うとパスの起点になった選手にスペースと時間を与えることが出来ます。一度プレッシャーを回避してから大きな展開に結びつける時などに使います。



大事なのは常に次の一手を考えておくことです。パスが戻ってきてビックリしているようでは良いプレーは出来ませんからね。

では最後のため息の出るようなバルサのパスサッカーを御覧ください。上記のワンツーがたくさん出てくるので参考になると思います。

<参考動画>
動画消されてるんで、youtubeで「barcelona tikitaka」で検索してみてください。



次→クサビとスルーパスの見合い1

2011年6月14日

重なったら一つ飛ばす

今回は崩しやつなぎの場面で使えるパステクニックをひとつ紹介します。パステクニックというよりパスの見方といった方がいいかもしれません。

どんなものかというと下の図を御覧ください。
別に特別なものでもありません。左のように3選手が一直線に並び、端の選手がパスを出します。この場合は隣の選手を狙うより奥の選手を狙うほうがチャンスが広がるということです

あるいはこういう言い方もできます。一つのパスに反応する2選手がいた場合、より遠くにいる方の選手にボールが渡ったほうがチャンスになりやすい。
パサーからの見え方は左図のような感じです。

とりたてて語るところもなさそうなパターンですが、サッカーにおいては非常に重要な意味を持ちます。これが「観える」か「みえない」かは天と地ほどの差があると言えます。

では、このパターンにはどのような意味があるか説明していきます。
まずはDF心理を説明します。DFの原則はチャレンジとカバーです。ですから、DFは必ずボールに近い相手選手から順にマークに付きます
すると、左図のように一つ飛ばされると守備の集団意図を崩されてしまい、そこに穴を作ってしまいます。これが一つ飛ばすパスの狙いです。

10/11欧州CLの決勝、バルサvsマンUのメッシの2点目は丁度左図のような形から決まりました。イニエスタがシャビを飛ばしてメッシへパスを送ったため、パクは逆をつかれてしまいエブラもビディッチもカバーリングに遅れてしまいました。


加えて、このパターンで使われるパスに特別なパスフェイク動作は必要ありません。なぜなら、奥を狙ったキック動作そのものが、手前を狙ったパスフェイクになるからです。通常、DFはボールホルダーのキックモーションを見て次の手を読みます。このパターンの場合、同じキックモーションからキックの強弱だけで2択をDFに迫ることが出来ます。DFとしてはしょうがなく、よりボールに近い側に高い注意力を払わざるをえないので、奥が空いてしまうのです。このパステクニックがDFの習性を利用した技であるということがよく分かっていただけると思います。


斜めにするとこんな感じです。斜めのパターンはスルーパスやサイド突破など最後の崩しでよく使われます。
頻繁に見るのが左のような形です。奥の選手が走りこむところに、水色の線のパスフェイクを使ってDFを引きつけて、一気に裏を取ります。

DFは目の前のマーカーに気を取られてしまい、カバーリングに回るのが遅れるので、崩すのが容易になります。
もうひとつのパターンは左のように、近い選手が走りこむ形です。

2選手間を横切るように味方が駆け抜けてくれば、奥の味方のマーカーはそちらのカバーリングに気を取られますので、その隙に奥の味方へパスを送れば、マークを引き剥がした状態でボールを渡せます。


縦のパターンはゲームのレベルに関係なく頻繁に見ることができます。

例えばGKからのパントキックを前線でFWが競りあって、抜けてきたところをもう一人のFWが狙う形もこのパターンで見ることが出来ます。

あるいはスローインでもこのような形はよく見られます。
崩しで使うとなると左図のようになるでしょう。

クサビを受けに降りてきたFWの裏をSHが狙うような形です。

スルーパスとクサビの見合いで見たように、味方のすぐ近くを抜くとパスが綺麗に決まりやすいです。


クロスからゴールするシーンを集めれば、ほとんどがこの形から生まれていることがわかるでしょう。CKからのゴールもこの形から多く得点が生まれることが分かっています。→蹴球計画「CKを好きになろう」


競り合いを抜けてくるボールはDFの意識が剥離しやすく、ポケットのように小さな空白がボールの軌道上に現れる傾向があります。目測と人の意識のギャップを狙って、味方のに飛び込めばチャンスは必ずやってくるはずです。

パスは出し手と受け手の二者関係で成り立っていると考えている人が多いと思いますが、サッカーのゲームにおいては三者関係かそれ以上で成り立っている場合がほとんどです。上で見たように、一つのパスを取ってみても、出し手受け手に加えてもう一人関係したほうが容易にパス交換することが出来ます。

日本では未だ、三者関係というと「第三の動き」だけがフォーカスされる風潮があります。第三の動きやワンツーだけだと崩しが直線的になって相手に読まれてしまうことが多いのです。それではダメだと一言いって終わりたいと思います。

最後にメスト・ウズィル選手の目の覚めるようなパス集をご覧いただきお別れです。


ズィルは中学生の頃、学校の用務員さんにチェスの手ほどきを受けたそうです。そのお陰か、彼のパスは3手、5手先まで読んでいるかのような急所をえぐってきます。羽生名人は「羽生マジック」と言って50手近く読みますが、サッカー選手の場合は3手以上先が読めれば十分な気がします。3手詰めの詰将棋をやりましょう!


次→クロスのトレンド1

関連→味方を追い越してフリーにさせる

2011年6月2日

【企画】バルサの守備を解説してみよう

グアルディオラ体制に入ってからのバルサの強さの秘訣は守備にあると言う人がたくさんいます。僕もそう思います。じゃあどんなふうに守備をしているのかと言う点について今回は考えていきたいと思います。

バルセロナの守備の網は攻撃をしているときにすでに仕掛けられています。そしてボールロストした瞬間に複数人で囲んで奪ってしまいます。その守備のポイントを羅列してあげてみましょう。

■攻撃時の選手配置
  1. 均等な距離
  2. 適度な奥行き
  3. 前後のバランス
■ボールロスト後
  1. 運動量
  2. 後ろからのチェイス
  3. 前進
■守備時の原則
  1. チャレンジとカバー
  2. ワンサイドカット
  3. 扇状の選手配置
■守備意識
  1. 抜かれてもいいから素早く当たる
  2. 相手の攻撃を縦に細くする
  3. ボール中心のポジショニング
■セットディフェンス時
  1. 4-4のゾーンを敷く→参考「松田浩インタビュー
  2. WGが守備参加する
  3. 中央から押し出していく
     
シンプルな言い方をすると、普通のチームとバルサとで異なる点は守備時の走行速度前進意識ボールを囲むポジショニングの3つにあると思います。

バルセロナは自分たちが攻撃を熟知しているからこそ、相手には正対、間の確保、中央を使う攻撃をさせないことを第一に守備を組み立てています。

バルサの守備を詳しく見るにはピボーテの初動をみるのが一番良いんですが、資料がないのでその件についてはまた今度書きます。

関連記事→バルサの攻撃を解説してみよう

次→モウリーニョの前プレ 11/12スーペルコパ2nd leg

2011年6月1日

【企画】バルセロナの攻撃を解説してみよう

クライフ、ライカールト、グアルディオラと経てドリームチーム第三期に突入している現在のFCバルセロナは今季CLを制し史上最強と騒がれています。

「なんでこんなに強いのか」の疑問に答えるために様々なことが言われています。カンテラ、戦術、メッシという個人、パスワーク、ハードワーク、背が高く足元の上手い守備陣、等々。

特にトラップの技術とポジショニングやパステクニックが高レベルにあるということが取りざたされています。バルサを理解する過程で、「これらのテクニックのレベルが高いから」と言って思考停止してしまうことが一番危険です。今回は更にもう一歩踏み込んで戦術的な観点からバルサの攻撃を解説したいと思います。

バルサの攻撃のポイントを大きな視点から徐々に小さな視点へ移すように羅列してみます

 ■ワイドにかつ均等に選手配置する 
  1. ピッチを広く使う
    1. パスの距離を長くする
    2. 個人が使えるスペースを広くする
  2. パスコースを増やす
  3. ルーズボールを拾う
    1. アプローチの距離を最短にする
    2. カバーリングの距離を最短にする 

 ■ボールを保持する
  1. 相手に攻撃時間を与えない
    1.  相手の攻撃機会を減らし心理的負担をかける
    2. 守備体力の温存
  2. 90分間で得点できるという心理的余裕
    1. 心拍をあげるのではなく頭の回転を上げる
    2. パスミスを減らす
  3. 数的優位を作る
    1. ロンドの連続性→
    2. 守備時の囲い込みから素早くつなぐ→「『現代サッカー』の敗北」サッカーショップ店長の徒然なる日記

 ■中央を使う
  1. 攻撃の可能性を広げる
    1. 360°のプレー選択肢=攻撃選択肢の増大
    2. ビルドアップの過程でSBにボールを渡さない
  2. サイドを有効に使う 
    1. 中央でタメてサイドへ、サイドチェンジ


 ■バイタルエリアを取り囲む
  1. ミドルシュート
  2. スルーパスのパターン化
    1. 10~15mのチップキック
    2. 20~30mのダイアゴナルパス
  3. 攻撃的守備 
 
 ■マーカーの意識を剥がす=スペースを作る
  1. コンビネーションラン
    1. 背中でスペースを作る
    2. サイドの崩し方
  2. 重なったら一つ飛ばす
    1. クサビとスルーパスの見合い
    2. 味方を追い越してフリーにさせる
  3. ワンツーで寄せる
    1. ワンツー・基本
    2. ワンツー・応用
  4. 中間点レシーブ
    1. サイドステップとバックステップ
    2. 周囲の敵と均等な距離を保つ  

 ■正対 
  1. 表裏のインサイドキック(蹴球計画を参考にしてください。右上タブ“リンク”)
  2. 2歩1触
    1. 顔を上げる
    2. 体の向きを変える
    3. 旋回する
  3. トラップをずらす(受け場と置き場を変える)
    1. 回転を使う
    2. 移動を使う
 ■周囲を見る 

視野の確保 5W1H
  1. タイミング
  2. 方向
  3. 対象
  4. 協調
  5. 動機
  6. 位置
  7. 方法



特に表裏のインサイドキックコンビネーションラン重なったら一つ飛ばすという3つのコンセプトが重要です。これらが判らないと「バルサのパス回しはゆったりしているのになんで取られないんだろう」という疑問が消えることはありません。

細かい部分はおいおい書き足していこうと思いますが、これが現時点で僕が分かっているバルサの攻撃の肝です。

次→バルサの守備を解説してみよう