footballhack: マクロつなぎ論
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2013年11月26日

ドルトムントの攻撃パターン

4−4−2の泣き所、トレーラーゾーンを使う

名称未設定 001

トレーラーゾーンとサイドのスペースを行き来する 名称未設定 002



2010年9月25日

マクロつなぎ論8 フィボナッチ数列

つなぎとは味方に預けのパスを出すことです。その目的は、ゾーンを上げてなるべく相手ゴール近くまでボールを運び、最終的には味方に前向きかつフリーでボールを持ってもらい、そこから崩しのパスを狙うことにあります。

このこととフィボナッチ数列がどう関係あるかと聞かれれば、「??」という感じになりますよね。というかまず、フィボナッチ数列って何だって話ですよね。

フィボナッチ数列とは、数列の一種で、次の項は直前の項とそのひとつ前の項の和で求められる数列のことです。式にすると↓

F(n)=F(n-1)+F(n-2)
参考:Wikipedia フィボナッチ数

式なんてどうでもいいんです。大事なのはこの数列の織り成すイメージです。この式から導き出される数字を並べると、

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, …となります。

「へっ?!」って感じでしょうが、結論から言うと

崩しのパスを狙うために必要な預けのパスの本数は、時間の経過とともに増える

傾向があるということなのです。この傾向がとてもフィボナッチ数列的だということを敢えて言うことで、この傾向をより強く意識して欲しいのです。

つまり、攻撃を遅らせるほど次のチャンスを創出するまでに手間をかけねばならず、時間をかければかけるほど崩しのパスを入れるために多くの預けのパスが必要になるということを言いたいのです。

例えば、サッカーではボールを奪った瞬間が最大の好機を生むと言われています。このときに崩しのパスを入れ損ねた場合、一度味方にボールを預けるかドリブルを入れると再び崩しのパスを入れるタイミングがやってきます。これでも崩せない場合は、横に広く展開するようにパスを数本つなぐかクサビのパスから落しを貰うなど、相手の守備陣形を収束あるいは拡散させるようにして崩すタイミングを図ります。このように崩しのタイミングが訪れる時間は、つなげばつなぐほどその間隔を伸ばしてやってくるのです。

逆に言うと、速い攻めほど決定機を生む効率がよくなるということになります。このようにとると、ダイレクトプレーの重要性を支持する仮説のように聞こえます。しかし、この仮説はより重要な事象の理解を僕らに提示してくれます。

それは、やり直しの重要性です。

つまり、初めのタイミングでダイレクトプレーが不可能だった場合、直後のタイミングで再度崩しのパスを狙うと大抵守備網に引っかかってしまう。なので、もう一巡パスを回して落ち着いてやり直してから次の崩しのパスを狙わなければならないということです。

この法則に則らない攻撃を見ればそれは明らかです。特に日本のサッカーでは崩しのパスを入れるタイミングが

0,1,1,1,1,1・・・

のようになっていることがあります。常に崩しのパスを狙うためボールロストが頻発し、攻守の交替が多くおこるゲームがJリーグを中心によく見られます。

この意識がないチームは崩しのパスを入れる機会を間違い、その結果ゲームを支配できないことになるのです。

補足:この話を初めて聞いたのは自分が高校三年生のころでした。当時のサッカー部の顧問の先生が「素数のサッカー」ということを言い始めたのです。この言葉は初めは理解できませんでしたが、一晩おいて考えたら、この言葉が見事にパスサッカーを表現した言葉であることに気が付きました。ただし、自分的には素数よりフィボナッチ数列のほうがつなぎのイメージが近いと感じたので(素数には0と1が含まれませんので)、こういった記事になりました。

次→マクロつなぎ論9 フィボナッチ数列と守備意識




2010年9月19日

マクロつなぎ論7 安定不安定その2

前回はサッカーのゲームを安定状態と不安定状態に分けて観ることを考えました。結論として不安定状態を少なくし安定状態を長くすることでゲームを支配することと、そのためにボール奪取後は安全にパスをつなぎチームとして素早く安定状態に入る重要性を説明しました。

今回はこの安定不安定を更に細かく考えていきます。

ルーズボールや攻守切り替え直後以外で不安定と呼べる状態は他にどんなものがあるかというと

1 ボールが空中に浮いている

2 ボール保持者がDFに1m以内に寄せられている、または身体が接触している

3 ボールコントロールが乱れている

4 ボール保持者のパスコースが読まれて味方が全員ぴったりと守備陣にマークされている

以上の状態について「不安定状態」と分類します。以下それぞれの説明です。

1:ボールが宙に浮いているときのすべてが不安定状態というわけではないですが、安定状態を目指すのにあまり望ましくない場面が多いと思います。例えばスローインやゴールキック、DFからのロングボールなどは、次の展開がルーズボールに近くなるシーンが多くなります。ボールを弾ませたままでは確実なプレーは難しくなります。正確なロビングパス以外は不安定状態といえるでしょう。

2:この認識は日本人にあまり重要視されていないです。ボール保持者に対して相手が1m以内に寄せてきた場合、ボール保持者のプレーの選択肢はかなり狭められます。身体が接触している場合(ポストプレーなど)体の動きを制限されるので必要な技術を発揮しづらくなります。この状態は不安定といえます。すぐにでもボールを失ってしまうような条件がそろっているからです。例えばクサビのパスもこの種類の不安定状態を導きます

3:ボールコントロールがグラウンド状況などにより乱れている場合、不安定状態といえます。ボールがイレギュラーバウンドしているときは安全に安定的につなぐことが難しくなります。

4:味方が相手の守備網に捉えられている場合、次の展開は無理なドリブル突破か無理なクサビのパスかロングボールしかありません。このときはボール保持者に余裕があったとしても不安定状態に分類します。一見安定した状態に見えますが、ボール保持側にとって次の展開が難しいときは、逆に言うと守備側が安定しているということなのです。こんなとき攻撃側がすべきことは、ボール保持者が上手に運ぶドリブルを使って、相手を一人引き付けてやることで味方一人をフリーにしてボールを彼に渡してあげるというプレーです。

不安定時にはミスが増えます。これは世界共通事項です。レベルやカテゴリーに関わらず必然的なことなのです。バルセロナだって不安定状態ではミスが頻発します。

何度も繰り返しますが、良いプレーとは安定状態を連続させるパス交換からシュートチャンスをつくるプレーのことであり、極力不安定状態を避けて安定状態を維持することが勝利を掴むキーポイントになるということです。

そして、安定状態でのパス交換から相手ゴールに迫るプレーはスペクタクルです。バルセロナが時折見せる素晴らしい攻撃は、ボール奪取してからシュートシーンを作るまで一貫して安定状態でボールをつないでいます。つまりDFに寄せる暇を与えていないということです。このような状況下(フリーで前向きな状態)でしたら練習でみるような高いパフォーマンスが発揮できますし、ミスが格段に減ります。

日本では不安定時、俗に言うプレッシャーがかかった状態で“イイプレー”ができる選手が良い選手だとされる、選手に対する評価基準があります。これが選手たちに不安定状態でサッカーをさせることを促すという悪習慣に繋がっています。競り合いに強い選手、どっちつかずのボールをマイボールにできる選手、むずかしいプレーで難しい局面を打開できる選手が試合を決められる選手として指導者たちに重宝される風習があります。

確かにこれらの能力も非常に大事なのですが、これらの能力を磨きに磨いた結果が今のJリーガーたちなのです。難しいプレーを優先的に選択するあまり、攻守の交替が頻繁に起こるゲームが多く、それが外国人選手たちに「日本のサッカーはテンポが速い」と言わせる原因になっています。

しかもこれらの能力の価値は世界に出て行くと無に近いです。つまりルーズボールをマイボールにする能力やポストプレーの能力は身体能力に頼る部分が多く、世界レベルのフィジカルコンタクトの中ではそういったプレーは成功しづらいという現実があります。

繰り返し同じ結論を述べますが、全ての日本人サッカー選手はここで説明した「安定」したプレーを志向する習慣をつけ、「安定」したサッカースタイルで勝利を目指す戦い方を身に付けるべきなのです。レベルやカテゴリーに関係なく、草サッカーやフットサルや育成年代からJリーグに至るまで。

次→マクロつなぎ論8 フィボナッチ数列


追記になりますが、この安定・不安定という考え方は審判団にとっても重要です。なぜなら、レフェリングを必要とするシーンはほとんどの場合不安定状態で起こるからです。レフェリングには試合の流れを読むことが必要ですが、この安定・不安定の考え方が試合の流れを読む一つの助けになると思います。

具体的に言うならば、試合が安定状態の時に審判は自分のポジショニングを確認し良い準備を行ない、不安定状態で起こりうる選手の衝突や不測の事態に対処するべく集中すべきです。

話は変わりますが、セントラルMFにとって主審の動き方はとても参考になります。何故なら主審は常に空いたスペースに位置取りますし、そのために後ろ走りやサイドステップを有効に使っているからです。運動量も多いです。しかし如何せん試合の流れ(空気)を読めてことがありますね。

マクロつなぎ論6 安定不安定その1

今回はつなぎ方とは厳密には異なりますが、攻守の交替やポゼッションを考えるにあたって「安定」「不安定」という言葉を使うことでサッカーの本質を理解することを考えます。

“ボールはピッチ上にひとつしかない”という真実はサッカーというスポーツを本質的に捉えた言葉だと思います。

どういうことかというと、「考えて走る ボールの状況を見極める」でも書いたとおり、サッカーにおいてボールを巡る状況は以下の3つしかありません。

1 自チームがボールを持っている

2 相手チームがボールを持っている

3 そのどちらでもない

1や2のときゲームの状態は「安定」と言えます。反対に3のときゲームは一時的に「不安定」状態に陥っています。この差をチーム全員がしっかり認識することが大事になってきます。

ポゼッションサッカーの考え方では、安定している時間でかつ自チームがボールを保持している時間を増やし、不安定な時間を減らすことでゲームの支配権を握ることが重要とされます。これにより、自分たちの想像の範囲でゲームを進めることが可能になるのです。

反対にリトリートしてイタリアのカテナチオや南アW杯の日本代表のように相手にポゼッションを渡した状態での安定を求めることも、ゲームの支配権の握り方になります。

つまり不安定状態をなるべく減らすことが、大人のサッカーで必要なことになり、勝利に必要なことになるのです。勝敗の分け目となる要素を運ではなく戦略に求めようという考え方です。

また1や2の状態でも攻守が切り替わった直後は不安定状態にあると言えます。

この「不安定にボールを保持している」状態での判断が非常に大事になります。この状態のとき、現象として、ボールを再度相手に渡してしまうことが多く、また、相手の守備陣形が乱れていることが多いので上手にパスがつなげれば一気に得点の機会を生み出せます。

ですから、ボールを奪った直後に考えるべきことは

1 相手の守備陣形の隙をつくパスコースを探す

2 不用意に奪われないようにフリーの味方にボールを渡す

この二つが考えられます。

1のようにプレーするにはいい視野が必要ですが、通常ボール奪取後は余裕がないので良いパスは出せません。なぜなら不安定状態だからです。このとき無理をして崩しのパスを出すことはボールを相手に渡すことと同義になります。よって2のようにプレーすることをまず覚えるべきです。

1のようにプレーすればダイレクトプレーになります。2のようにプレーすればボールポゼッション的なプレーになります。どちらがいいかということではなくて、どちらも同じ重要さをもっていて同時に考えなければならないことなのです。そして一番大事なのはボールを失わないということなのです。

その理由はボールロストした直後のことを考えればわかります。

相手陣内でボールロストした直後にもう一度ボールを奪い返すことができれば、絶好のショートカウンター機会が生み出せますよね。逆に言うと、ボールを奪った直後にボールを再度奪われるということは、失点の危険性がかなり高くなることを示しています。

よってボール奪取後は安全に味方につなぎ、いち早くチームとして安定的なポゼッションを目指すべきです。その中でフリーで前向きになれる選手がいれば、その選手がダイレクトプレーを選択すべきです。

つまり、ボールロストした直後も不安定状態といえます。このとき味方はみなパスコースをサポートするポジショニングをとっていて、すぐに守備につける選手は少ないはずです。先ほどのように、このときすぐにボールを奪い返すことができれば大きなチャンスにつながります。そのためにはボールロストしたときにすぐに守備に当たれるように、パスコースをサポートしつつプレッシングができるポジショニングをとることが大事になります。これをチームとして戦術的に志向すると攻撃的守備と呼ばれるプレッシングサッカーになります。

FCバルセロナを参考にした攻撃的守備の詳細はこちら→つなぎ論番外 バルサの攻撃的守備の仕組み


次は→つなぎ論 安定不安定その2


2010年9月1日

マクロつなぎ論4 広い面積を使う意識

DFの集団意識とはなんでしょう。

一つは集団的意図と呼べるものがあります。守備の意図、チーム内での守備の戦術のことです。

もうひとつは、集団的無意識というものがあります。集団で居るからこそ自然発生する意識のことです。

今回は後者の集団的無意識を利用する攻撃法を考えます。

DFは常にチャレンジとカバーの法則で動いています。ボールホルダーにひとりマークをつけ、他の選手は自分のマーカーを見ながら、ボール際の戦況を見極めるために、カバーリングのポジションを取ります。そのために、守備者全員がボールホルダーの方向に体を向けて、ボールサイドの戦況を見る必要がでてきます。これが、サッカーのマンツーマンディフェンスがバスケットボールのようにならない理由です。

当然ボールが動けば守備側の選手たちはポジションを変えねばなりません。このとき、ある法則が生まれます。

ボールが一定の方向に長い距離移動した場合、守備者たちはそのボールの移動先に向かって集まる

というものです。

どういうことかというと、↓

(横パスを流れで続けると、4番目の受け手は厳しいマークにあう)

ボールが長い距離移動した場合、守備者たちは無意識にこう予測を立ててしまうのです。「この後もボールは進行方向に向かって動くだろう」

これを逆手にとって、途中でボールの進行方向を変えてやることで、相手のDF陣を欺くことができます。

具体的にはどうすればいいかというと、

・ 縦にドリブルしたら真横にパスを出す

・ 横パスが二回つながったら、次は縦パスを狙う

または

・ 縦パスが二回つながったら、次は横パスを狙う。

これらはつまり、パスでカバーする面積を広くとるということになります。横方向と縦方向にバランスよく進んでいくのです。パスの方向を変えて、広い面積を使う意識でつなぐことで、単調な攻撃を減らし、相手をじりじりと敵陣へ押し込み、ゲームを支配します。

攻撃のリズムを変えるとはこういうプレーの繰り返しのことなのです。

次は→マクロつなぎ論5 収束と拡散

マクロつなぎ論5 収束と拡散

今回はDFの集団的意図(守備の狙い)の逆をつく攻撃法を考えます。

ゾーンディフェンスの目的は、オフサイドラインを設定し、それぞれの選手間の距離を縮めることで、それぞれの選手の移動距離を少なくして、相手にプレッシャーを与え、ボールを奪うことにあります。

ゾーンディフェンスの方法は、チャレンジとカバーの原則を守り、ボールのある場所に依って、守備者全員のポジションを少しずつ修正することで、相手に苦しい体勢でボールをポゼッションさせてミスを待ち、数人でボールホルダーを囲んで奪うというものです。

このやり方はパスコースが限定されるほど、守備の陣形がより小さくなる、収束する傾向を生みます。なので、攻撃側はDFが集まってきたらボールを密集地帯から外に逃がして、広いスペースに展開すれば、相手の逆をつけることになります。

戦術眼が優れた選手またはサッカーをよく知っている選手は、相手の守備陣形の収束する様子を感じ取り、開いているサイドにうまくボールを運ぶことができます。

では、どんなときに相手の守備陣形が収束しているのでしょう。

1 ボールを奪った直後

2 短いパスが数本続いた後

3 タッチライン際でのプレーが続いた後

4 ドリブルでタメができたとき

などです。

1のとき: ボール奪取後は素早く確実にボールをつないで、フリーの味方に預け、安定した状態でつなぎをはじめなければなりません。このとき、両サイドのスペースが活用できます。素早くボールをサイドの選手につなぎ、相手の陣形を一旦広げる意識が必要です。

2のとき: 短いパスが数本続くと、守備側にとって有利な状況が生まれます。何故なら、選手同士の距離が近くなり、お互いのカバーリングがしやすくなり、少しのボールタッチミスでもボールを奪える機会が増えるからです。

なので、攻撃側は集まってきたDF陣の裏をかいて、長いパスで広いスペースにボールを展開すべきです。そうすれば、開いたサイドからドリブルで仕掛けることができます。なにより、相手のDF陣に長い距離を走らせてスライドやカバーリングをさせることで、ゲーム終盤の体力切れを狙えます

3のとき: タッチライン際でパス交換が続くと相手守備陣を集めてしまいます。結果、パスコースを限定されてボールを奪われるか、よくてマイボールのスローインにしかなりません。ですから、サイドでのプレーが続きそうな場合、なるべく早くボールを中央か後方に戻し、サイドチェンジをするべきです。

4のとき:中盤の選手がドリブルで時間を作ったときは、その周辺のパスコースを消すためにDFが集まってきます。密集地帯からボールを出してやると、収束したDF陣形は拡散する動きを見せます。この時に広がっていくDFの間にパスを通すことで、中央でフリーの選手に前を向かせることができます。

DF陣形はアメーバのように形を変えているようにみえますが、あるひとつの法則にしたがって動いています。それが、収束と拡散です。縮まる動きのあとは広がる動きを見せ、また縮まる動きをみせる、この繰り返しの逆を取ることで、攻撃の先手をとり、ひいてはゲームを支配するのです。

ショートパスとロングパスを組み合わせたり、1タッチプレーと運ぶドリブルを間に挟んだりしながら、プレスをうまくかいくぐるパス回しが大事になってきます。

次は→マクロつなぎ論6 安定、不安定

2010年8月30日

マクロつなぎ論3 得点の時間帯

2010南アW杯で、スペイン代表が大会中にあげた得点は、前半に3点、後半に4点、延長戦で1点の合計8点だったそうです。このデータからつなぐチームは後半に点を取るという仮説を実証したかったんですけど、前半に3点とってるんですね。あまり強い根拠にはならないみたいです。ただ、後半の3点と延長戦での1点は、いずれも決勝トーナメントでの得点です。きわどい勝負ではスペインは後半に得点を奪っている、ということは言えると思います。

なにが言いたいかというと、つなぐサッカーでは、試合時間が経過するほど、得点が生まれやすくなるということです。

これはいったい何故でしょう。正直、自分もはっきりとしたことはわかりません。

ひとつ言えるのは、守備側のチームにとって、守り続けることが、時間の経過と共に至難になってくるということです。大体試合の終わり3分の1、90分の試合なら後半15分くらいから、守備側が“ダレて”くるようになります。集中力が切れてくるんですね。

守備陣がダレてくると、何でもないような簡単なクロスから得点が生まれたり、簡単にスルーパスを通されたりします。

個人的な見解ですが、相手に圧倒的なポゼッションを与えて守備に徹するチームにとって、試合終了が近づくにつれて、「自分たちにも攻め手があるかもしれない」という考えが芽生え始め、攻撃に転じることで、守備のバランスを崩してしまうのではないでしょうか。

あるいは、「今まで守りきれてきたんだから、このくらいマークを外しておいても大丈夫だろう」というような、心の隙が生まれるのかもしれません。

気づけば得点を奪われ負けていた、というのが今回W杯でスペインに敗れたチームの思うところかもしれません。

今回のスペインチームの戦い方を評して、「パスワークは素晴らしいが、全体的にゲーム展開がスローテンポで面白くない」とか、「シュートまで時間がかかり過ぎてよくない」とかいう意見が出ているようです。

これらは、スペインチームの意図を全く理解していません。

スペインチームの意図は

パスをつないでゲームを支配し、守備の時間を減らす。そして5分に1本程度の間隔でシュートチャンスを生み出し、相手疲れさせ、得点を奪う。試合をリードしたあともポゼッション率と高めて相手に攻撃のチャンスを与えない


ことだったのです。

シュートやクロスで攻撃を終えれば、相手にプレッシャーを与えられます。攻撃がゴールキックになったりやGKのセーブに阻まれても、「ヤラれてる」感を相手に植えつけることができます。この蓄積によって、DFはなぜか足が棒立ちになる瞬間がやってきます。その時に得点が生まれているのです。

逆に、攻撃がシュートやクロスで終わらなければ、相手に「守りきれてる」感が浸透していきます。「ボールを回させてる」という意識です。こうなったら、相手は集中力を高めるばかりで、ゴールは遠のいていきます。

スペインは攻撃を続け、圧力をかけ続けることを一貫して90分間やり通し、勝ち星を積み上げていきました。また、試合展開によって戦い方を変える必要もないので、監督がピッチ上の選手に混乱を与えるような戦術変更も起こりません。

統計的には、一試合に10本シュートを打てば、そのうちひとつはゴールになることが分かっています。90分間で18本のシュートが打てれば、1点かあるいは2点取ることが可能です。

あとはポゼッションして時間が過ぎるのを待てばいいのです。

なんて、口で言うのは簡単です。大事なのは、チーム全員がこのことをしっかり理解し、得点を奪えなくても焦らず、やってきたことを繰り返すことです。

時間が経過するうちに、相手の方からゴールへの道筋を案内してくれるのですから。

次→マクロつなぎ論 広い面積を使う意識

2010年8月29日

マクロつなぎ論1 DFの集団意識

つなぐという行為は何のために行われるのでしょうか。それはより多くの得点を奪って試合に勝つためです。

では得点を取るためには何が必要でしょうか。それにはより多くの得点機会、シュートのシーンを作ればよいです。

ではシュートのシーンを多く作るにはどうすればよいでしょうか。それには、なるべくゴールに近いところにいる前向きでフリーの選手にボールを渡せばいいでしょう。

では、ゴールに近いところにいる前向きでフリーの選手にボールを渡すには、どうすればいいでしょう。これが大きな問題です。なぜなら相手のDF陣が全力でもって、これを阻止してくるからです。

相手の守備をかいくぐって、シュート機会をつくるには、相手守備陣の集団意識の裏をかいてボールを運ぶ必要があります。

この集団意識とはなにか。これを解き明かすのがこの「マクロつなぎ論」の目的です。

“つなぐ”行為の本質とは、DFの集団意識を逆手にとって、試合の主導権を奪うことにあります。この狙いをチーム全員がしっかりと認識することが、美しいパスサッカーの完成には必要不可欠です。ではその理解すべき本質と狙いを挙げてみましょう。

1 サイドチェンジの目的

2 得点の時間帯

3 広い面積を使う意識

4 DF陣形の収束拡散

5 安定、不安定

6 フィボナッチ数列

次の記事からはこれらについて一つ一つ考えていきます。→サイドチェンジの目的

マクロつなぎ論2 正しいサイドチェンジ

サイドチェンジの目的って、敵の守備の薄いサイドを突いて、クロスをあげたりドリブル突破することだと思ってませんか。

違います。

サイドチェンジは敵の守備ラインを下げるために行うのです。

まずこれを見てください↓


ビルドアップ時のサイドチェンジの目的は、ゾーンを上げることです。自陣のDFラインで横にボールをつなぎ、反対サイドに着いたらボランチを経由して再びサイドチェンジをしてみてください。はじめよりDFラインが10mは上がっているはずです。

なぜかというと、ゾーンディフェンスの考え方では、ボールサイドの逆サイドを完全に捨てて、ボールが横に動かされてから初めてスライドして逆サイドのケアをするからです。このとき守備陣が全体的に斜め後ろに動きます。逆サイドに振られると、そこからの縦への突破を警戒するからです。

このようにビルドアップ時は、サイドチェンジを2回繰り返すことで、10m以上前進することができます。

では、アタッキングサードでのサイドチェンジの目的はというと、これも敵のDFラインを下げることです。敵陣深くにDFラインを押し込み、最終的にはミドルシュートかクロスのこぼれを狙います

ゆっくりサイドチェンジを繰り返しながら、ペナルティエリアの横のゾーンまでボールを運べば、相手の守備の6人以上がペナルティエリア内にいるという状況を作り出せます。DFと中盤のラインが一緒になるという状態です。

このペナ横のゾーンでドリブルやワンツーで仕掛けながら、ペナルティアークのところにボールを戻せば、抜群のミドルシュートシーンを創造出来ます。

また、このゾーンからボールを真後ろに戻してクロスをあげれば、ゴール前のスクランブル状態を生み出せます。

このゾーンからさらに深くえぐり、ゴールライン際からラストパスが出せれば、さらに決定的なシーンが作れます。

このように、ボール保持率を高める戦い方では、サイドチェンジの重要性とその後の展開を間違えずに認識することが大事になってきます。

サイドチェンジしたら味方の方が数的不利な状況だったとか、サイドチェンジ後に間髪いれずに縦に仕掛けて簡単にボールを失ったりだとか、間違ったサイドチェンジを行うと攻撃が苦しくなるばかりか、守備の時間を増やしてしまいかねません。



次はマクロつなぎ論3 得点の時間帯