footballhack: ドリブルが上手くなる人は手を使う

2013年4月30日

ドリブルが上手くなる人は手を使う

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試合に出ると「ボール持つのが怖い」って思うことありませんか?僕はそういうタイプの選手です。これは日本人の特徴だと思うんですけど、失敗を無意識に怖がる性質があるんです。なぜなら個人の失敗は集団で責任を取るという風に教育されるからです。一人のボールロストはチーム全体で連帯責任を負わねばならない、だからチームに迷惑をかけてはいけない、そういう風土が日本のサッカーチームには根付いています。

ボールを持ったらなるべく早く味方を見つけてなるべく早くパスを出す、敵に近づかれないうちにね、そうやってサッカーを教わる人は多いと思います。でも、本当に上手い人はそんなふうに考えていません。彼らは「俺がボールを持っている限りチームはボールロストしない」とまで考えています。つまり、他人に預けるより自らキープしたほうが良いという判断をしているのです。

まぁ、普通の人からしたらありえない思考回路なんですけど、わりと外人ってそういう傾向有りますよね。外人と同じチームでプレーしたことあればわかると思います。あいつら取られても全然へいきそうにしてるんです。羨ましいメンタルですよね。

なんてメンタルの話がしたくてこんだけたくさんの資料を集めたわけではないんです。要は


ボールを絶対に奪われないという自信を生み出すテクニックにはどのようなものがあるか



今回はドリブルが上手くなる方法を紹介したいんです。



  アーリーヒットというデマ



メッシpc 002フィジカルコンタクトで優位にたちたければ”アーリーヒット”をしろという教えがあります。しかしこれは間違いです。このおかげでJリーガーになれる逸材でもフィジカルコンタクトがヘッタクソな選手を増産する結果を生みました。

間違いを正すために状況を整理します。左図は上方向に青の選手が攻めています。オレンジがDFで進路を妨害しようとします。

メッシpc 003アーリーヒットとはDFがボールに到達する前に体を当ててDFの姿勢を崩すなり押し返すなりしてボールを守るテクニックです。この時大事なのは腰から当たることだと言われます。

しかし、左図のようにボールから離れてしまうとオフェンスファールを取られる危険性があります。

またOFよりDFの方が体が強い場合、簡単に押し返されてボールを失ってしまいます。ボールが離れている分、DFはOFの当たりを処理することだけ考えればいいから、コンタクトに100%のエネルギーを費やせるのです。

そしてよくあるのが、アーリーヒットを試みるもののDFに回りこまれてしまってボールを失うケースです。実際は足の速さが関係するのでなく、競り合いの中でDFがOFの腕を引っ張るなどして上手く入れ替わるケースが多いです。しかし、審判はボールから離れた位置での競り合いはお互い様ということで見逃す事が多いのです。

この形がOFに不利なのはOFが体を伸ばしきった姿勢でコンタクトするせいです。OFはドリブルで前を向いてます。DFはやや斜め後方から来ますから死角から襲われることになります。だからOFは腕を伸ばし触覚を使うことでどこから来るかわからないDFを妨害しようとするのです。また、「先に腕を広げて相手の当たりの力を弱めろ」なんて指導法もはびこっています。

メッシpc 001よく考えれば”腕を伸ばした状態で相手に当たる”ことがいかに愚行かわかるはずです。ここではゲーセンにあるパンチングマシーンを思い出してください。

パンチの威力は力積で求めることができます。力積を高めるには、的がある位置より奥に拳を押し込むと良いです。伸びきったところに丁度的が来るようだと十分に力を伝えられません。



これと同じ事がサッカーのフィジカルコンタクトにも言えます。腕を使うなら相手の奥まで伸ばしこむほうが強い力を与えることが出来るのです。



  手押しで確実に敵を押し返せる原理


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では正しく手を使った場合はどうなるのか?まず先ほどと同じように並走のドリブルを想定します。

ドリブルは右足でしようとも左足でしようとも構いません。十分にスピードが出ていればタックルでボールを失うことはないからです。


メッシpc 005DFはOFの体の正面に回りこもうとします。真横から肩に向けてぶつかる奴は阿呆です。ドリブラーの足が速ければ一瞬で置き去りにされます。



メッシpc 006ボディコンタクト2 上半身を倒して前に入れるで考えたとおり、並走における勝敗はどちらが前に出れるかで決まります。だから、DFはOFの前に体を入れようとするのです。


メッシpc 007ですから、「並走=体の正面に競り合いが起こる」という予測をOFは立てることができます。予測というか一瞬で「あっこれは来るな」という感覚です。見なくても雰囲気とか周辺視野とか経験でタイミングを図ることができます。



メッシpc 008丁度敵がぶつかって来る直前に、手で相手の胸を押します。背の小さい人は腕を肩の高さに合わせて、背の大きい人は腕をやや下方に向けて。そうしないと手が顔とかにあたってしまえばOFはファールを取られます。特に顔への攻撃は赤紙対象ですので気をつけてください。



メッシpc 009押すことでDFがバランスを崩し、走行速度を落とし、OFは時間を得る結果になります。

姿勢をわかりやすく解説するために角度を変えます。左図のカメラ視点から解説を試みます。





  手押しは相手を突き放すためじゃない、バランスを崩すためだ

メッシpc 010先ほどと同じように並走ドリブルでこっちに向かってきている状況を思い浮かべてください。腕赤青がドリブラー、腕オレンジ緑がDFです。



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ここまで寄せられると取られる1秒前って感じがしますが、



メッシpc20 012この瞬間に相手の胸を押しながらボールタッチして加速します。

DFはボールに集中してた分、押されるは想定外のはずです。

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走行フォームの一環として手が振られたように審判には見えます。



メッシpc 013また、DFは胸を押されると上半身から斜めに倒れてバランスを崩します。すると、バランスを保つために足を後ろに接地することになり、走行スピードが落ちます。



メッシpc 014もちろんこの後傾具合を利用してタックルに行くことも可能ですが、無理な姿勢での守備はよくて50:50のルーズボールにつながれば御の字です。サイドでのプレーの場合大抵OF側のスローインになります。OFとしては「はい、マイボール」って感じですね。




メッシpc 015手で胸を押されると必ず上半身が後傾します。

また、タックルは苦しくなります。

有能なDFはコンタクト100%でいけばファールになるし、ボール100%で行けばバランス崩されてタックル失敗するってことを知っています。 かれらは独自の配分で守備を試みなければなりません。



メッシpc 016これを知っているDFは無理に取りに行かず、一旦離れて迂回してからディレイを試みます。すると、OFとしては一瞬ですが時間とスペースを得ることができ、結果的に次のプレーを余裕を持って行うことができます。これがキープ力のある選手だけが知っている秘密です。





参考動画ボン!!



これを知っているかどうかは、地区トレセンと県トレセンの差ぐらいあります
もちろん、2歩1触の旋回が自由にできることが大前提ですし、フィジカルに絶望的な差があれば通用しません。しかしフェイントと組み合わせることで効果倍増しますので有効利用してみてください。

これをやってもとられる時は取られます。でも、ファールを受ける確率も同時に上がります。アーリーヒットと違ってこのコンタクトプレーはボールプレーと同時に行うことができます。ボールプレーをしている限り、審判はファールを取りづらい空気感に満たされます。正当にプレーしている印象を与えるのです。また、ボールプレーの継続は体の小さな選手でも生き残れる術です。アーリーヒットは原理的に体重の重い選手しか成功させることができません。

本気のサッカーではファールを上手く受けることが非常に大事です。ワンファールで試合の流れが変わることだってあります。ファール→マイボールのFKになれば実質的にボールをキープしたと言えますよね。上手い人はほんとにファールの受け方が上手い。なぜならテクニックがあるから。審判は技術のある選手を守ることでサッカーに対するリスペクトを表現します。これは真です。

次回は正対からスラロームへの接続における手押しとフィジカルトレーニングの話


以前、エジルのシュート前の持ち込みを解説したものもこれと同じテクニックを使っているので参考に→ボディコンタクト5 エジルの並走からシュートまでの持ち込み

ここで紹介したテクニックは多くのJリーグ外人助っ人FW部隊が備えています。かれらがよくロングボール一本からCBとの競り合いを抜けだして冷静にゴールを決めるところを見ますよね。まぁ殆どの場合手押しを使ってます。だいたい、日本人CBのほうが足は早いですよ。でも抜かれてしまう。日本人FWの場合は追いつかれたら切り返して時間かけてショボシュートが定番ですね。それはフィジカルコンタクトのテクニックの差なんです。よく観察してみてください。


清水エスパルス・バレーの浦和戦でのゴール。手で二回森脇の腰あたりを押しているのがわかりますか?あとこのシーンのポイントは足を上げないトラップです。腿とお腹の中間で走行スピードを落とさずにショートバウンドをうまいことスペースに流しています。

次は「ドリブラーに必要な筋トレ

11 件のコメント:

  1. 鹿島アントラーズに所属している大迫勇也選手の高校時代のプレーを見ると、相手より前に入るときの腕の使い方が今回の技術を体現していて、そのためゴールを量産しているように思います。もうひとつ、チームとしての狙いで、奪ったら相手のディフェンスラインが揃う前に裏に飛びだし、そこにロングパスを配給しているように感じました。ここで管理人の方に質問をしたいと思います。前線の選手が裏を狙うのに適したタイミングや条件とはどんなものがあるのでしょうか、いくつかは考えられるのですが、なかなかまとまらないので感覚でしか動けません。それはパターン化できるのでしょうか。お時間がありましたら答えてもらえると嬉しいです。

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    1. 腕を広げて前に入るテクニックと当記事のテクニックは違います。大迫は前者はできるが後者はできないというのが僕の(オリンピック選考段階までの)評価です。特に彼は腕を伸ばした状態でアーリーヒットを使う癖があり、これは早急に直して欲しいところです。今は改善されているのかもしれませんが。

      裏を狙う判断は簡単です。DFが前に出ていれば裏、逆に下がろうとしていればクサビなどFWの足元にパスを出せばよいのです。これをオートマチック化するには横パスやバックパスの後はダイレクトで裏、キープからの裏表変換のインサイドキックで逆をとる等のテクニックが必要になってきます。他にもパターンはありますので良く観察してご自身で整理してみてください。

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  2. お返事ありがとうございます。
    僕自身も「腕を使うなら相手の奥まで伸ばしこむほうが強い力を与えることが出来る」といった実践感覚はまだなく、相手との体のぶつけ合いでの闘いは五分五分なので早急に、このスキルを習得しようと思います。(いい選手は考える前に出来ているのでしょうが) 裏の抜け出しに関しても、様々な選手を観たり、経験を積んで、もう一度整理してみます。興味深い動き方があったらまた質問をぶつけてみようとおもいます。ありがとうございました。

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  3. YouTubeみました。
    批判があってこそ価値ある見解だと思うので、あまり気にしない方がいいと思います。
    相手が中学生か大人かもわからないネットで、暇つぶし程度の人もいます。

    僕は、あなたの動画や記事を楽しみにしてます。

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    1. すいません、気を使ってもらって。ちょっとあのときはイライラしてたもんで。まぁでも方針としてはブログに埋め込むかツイッターで紹介した時だけ閲覧できるようにします。見たい人が見られればいいかなと。

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  4. 匿名で失礼します。
    僕は海外でサッカーやっていて、ドリブルするタイプの人間なので興味があって読ませて頂きました。
    リベリはよく腕を使っていますよね。ドリブラーの中ではゲッツェ、ファルファンもよく腕を使っていると思います。
    確かに体得すると、一つ上のプレイヤーになれると思います。
    ただ、これはDFとの接触を受けいれるプレーであり僕達日本人には不向きじゃないでしょうか。

    批判文などでは決してないので気を悪くされないで下さい。つまりファウルされる可能性も高くなり、小柄で軽量級のドリブラーが多い日本人には根本的に危険な選択だと思います。

    もし、論点が技術にあり僕の言っている事が的外れでしたら失礼致しました。

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    1. ファウルされるのは別に構わないというかどんどん受けるべきだと思います。マイボールになるんですから。危険なタックルを受けてけがをする可能性があがるという意味でしたら一考の価値があります。僕はそこまでフィジカルレベルの高いカテゴリーでプレーしたことがないから感覚としてファウルが危険だということがいまいちわかりません。怪我を避けるために審判がファウルをとるというのが僕の解釈ですが。

      背が小さいほどこの技術を取り入れる価値があると思ってます。重さは筋トレで出していけばいいので問題ないと思います。接触を怖がったままだとプレーの可能性を狭めることにつながらないでしょうか?また、メッシがやっているのに日本人は真似をすべきでないのならば、下手でいることを甘んじて受け入れることだ、というのが私見です。

      できれば接触がなぜ日本人に不向きなのかについて理由をお聞かせください。

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  5. 匿名で失礼します。
    いつも楽しく拝見しています。

    私は空手の師範と合気道の師範の二人から、身体の使い方のコツや間合いや目線、キレのスピードの出し方を教えて頂いています。

    日本には古来から、体重差をものともしない智恵が息づいています。
    サッカーはボールを使った体重別階級がない集団格闘技であり、現場のコミュニケーション量が特に多い団体競技なので、我々に1番向いているスポーツではないかと思っています。

    軽量で背が小さいほど、接触の技術を身に付けた方が良いです。
    相手が大きくて体重差が大きければなおさらです。

    ペレ(171センチ、73キロ)は身体が接触する前に、相手の重心をずらすテクニックを持っていましたし、接触する瞬間を完璧に予測した上で、相手の体重が乗る前に、自分の重心を最適な角度でぶつけていたと思います。

    ペレ(マラドーナ、メッシ、ジーコも)ぐらい圧倒的なテクニックを持っていれば、視野が広いので、
    相手がぶつかってくる数秒前から長く息を吐き、丹田にエネルギーを凝縮して、
    自然体の状態から抜重で反対側にためたエネルギーを足裏スタートで、
    息を吐いて爆発的に回転エネルギーを開放できたんだと感じますね。

    視野が広いという表現よりも、相手の感情を読むぐらいの余裕があったと思います。
    (もちろん、管理人さんの2歩1触は大前提です)


    ですので、管理人さんがおっしゃるように、接触プレーを恐れてテクニックに逃げてはいけません。
    (心から)恐れた時点でパフォーマンスは落ちるので、真剣勝負では死を意味します・・・。

    もちろん、相手に一切接触されないぐらいのスピードとテクニックがあれば、
    接触プレーを避けてもいいでしょうが、
    ボールを足で扱うサッカーの特性上、ある程度の接触は大前提でしょうね!!

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  6. http://number.bunshun.jp/articles/-/688431
    今期の大久保選手の活躍の裏には手押しがあったのですね!
    今の大久保選手は助っ人ブラジル人のような感じがします

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    1. いい記事持ってきますね!!大久保の井桁の動きは解説が速く読みたいところです。この記事は手押しそのものですね。うちの社会人チームのエースも助っ人外国人バリに手押しが上手いです笑 そういう才能を持った人ってわりと身近にいますよ!!

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  7. 返信ありがとうございます
    フロンターレの西本さんの記事にはいままでなかなか日本人が意識してこなかったエッセンスが入っていておもしろかったです
    http://number.bunshun.jp/articles/-/339235
    この記事の中で
    「通常のスクワットはつま先よりヒザが出ないように行なうため、ヒザの上の筋肉が鍛えられます。だが、ここに無駄な筋肉がつくと、力が入ったときに靭帯を引っ張ってしまい、上体が起きてシュートがとんでもない方向に飛んで行く原因になる。動物の足を見てください。馬の足は根元に行くほど太いですよね? 人間も同じ。そういう鍛え方をすると、ムチのように足をしならせてシュートできるようになります」という箇所がありました。
    フットボールネーションというマンガでも同じようなことが書かれていました。  silkyskillさんの一助となれば幸いです。

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