footballhack: マクロつなぎ論6 安定不安定その1

2010年9月19日

マクロつなぎ論6 安定不安定その1

今回はつなぎ方とは厳密には異なりますが、攻守の交替やポゼッションを考えるにあたって「安定」「不安定」という言葉を使うことでサッカーの本質を理解することを考えます。

“ボールはピッチ上にひとつしかない”という真実はサッカーというスポーツを本質的に捉えた言葉だと思います。

どういうことかというと、「考えて走る ボールの状況を見極める」でも書いたとおり、サッカーにおいてボールを巡る状況は以下の3つしかありません。

1 自チームがボールを持っている

2 相手チームがボールを持っている

3 そのどちらでもない

1や2のときゲームの状態は「安定」と言えます。反対に3のときゲームは一時的に「不安定」状態に陥っています。この差をチーム全員がしっかり認識することが大事になってきます。

ポゼッションサッカーの考え方では、安定している時間でかつ自チームがボールを保持している時間を増やし、不安定な時間を減らすことでゲームの支配権を握ることが重要とされます。これにより、自分たちの想像の範囲でゲームを進めることが可能になるのです。

反対にリトリートしてイタリアのカテナチオや南アW杯の日本代表のように相手にポゼッションを渡した状態での安定を求めることも、ゲームの支配権の握り方になります。

つまり不安定状態をなるべく減らすことが、大人のサッカーで必要なことになり、勝利に必要なことになるのです。勝敗の分け目となる要素を運ではなく戦略に求めようという考え方です。

また1や2の状態でも攻守が切り替わった直後は不安定状態にあると言えます。

この「不安定にボールを保持している」状態での判断が非常に大事になります。この状態のとき、現象として、ボールを再度相手に渡してしまうことが多く、また、相手の守備陣形が乱れていることが多いので上手にパスがつなげれば一気に得点の機会を生み出せます。

ですから、ボールを奪った直後に考えるべきことは

1 相手の守備陣形の隙をつくパスコースを探す

2 不用意に奪われないようにフリーの味方にボールを渡す

この二つが考えられます。

1のようにプレーするにはいい視野が必要ですが、通常ボール奪取後は余裕がないので良いパスは出せません。なぜなら不安定状態だからです。このとき無理をして崩しのパスを出すことはボールを相手に渡すことと同義になります。よって2のようにプレーすることをまず覚えるべきです。

1のようにプレーすればダイレクトプレーになります。2のようにプレーすればボールポゼッション的なプレーになります。どちらがいいかということではなくて、どちらも同じ重要さをもっていて同時に考えなければならないことなのです。そして一番大事なのはボールを失わないということなのです。

その理由はボールロストした直後のことを考えればわかります。

相手陣内でボールロストした直後にもう一度ボールを奪い返すことができれば、絶好のショートカウンター機会が生み出せますよね。逆に言うと、ボールを奪った直後にボールを再度奪われるということは、失点の危険性がかなり高くなることを示しています。

よってボール奪取後は安全に味方につなぎ、いち早くチームとして安定的なポゼッションを目指すべきです。その中でフリーで前向きになれる選手がいれば、その選手がダイレクトプレーを選択すべきです。

つまり、ボールロストした直後も不安定状態といえます。このとき味方はみなパスコースをサポートするポジショニングをとっていて、すぐに守備につける選手は少ないはずです。先ほどのように、このときすぐにボールを奪い返すことができれば大きなチャンスにつながります。そのためにはボールロストしたときにすぐに守備に当たれるように、パスコースをサポートしつつプレッシングができるポジショニングをとることが大事になります。これをチームとして戦術的に志向すると攻撃的守備と呼ばれるプレッシングサッカーになります。

FCバルセロナを参考にした攻撃的守備の詳細はこちら→つなぎ論番外 バルサの攻撃的守備の仕組み


次は→つなぎ論 安定不安定その2


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