2010南アW杯で、スペイン代表が大会中にあげた得点は、前半に3点、後半に4点、延長戦で1点の合計8点だったそうです。このデータからつなぐチームは後半に点を取るという仮説を実証したかったんですけど、前半に3点とってるんですね。あまり強い根拠にはならないみたいです。ただ、後半の3点と延長戦での1点は、いずれも決勝トーナメントでの得点です。きわどい勝負ではスペインは後半に得点を奪っている、ということは言えると思います。
なにが言いたいかというと、つなぐサッカーでは、試合時間が経過するほど、得点が生まれやすくなるということです。
これはいったい何故でしょう。正直、自分もはっきりとしたことはわかりません。
ひとつ言えるのは、守備側のチームにとって、守り続けることが、時間の経過と共に至難になってくるということです。大体試合の終わり3分の1、90分の試合なら後半15分くらいから、守備側が“ダレて”くるようになります。集中力が切れてくるんですね。
守備陣がダレてくると、何でもないような簡単なクロスから得点が生まれたり、簡単にスルーパスを通されたりします。
個人的な見解ですが、相手に圧倒的なポゼッションを与えて守備に徹するチームにとって、試合終了が近づくにつれて、「自分たちにも攻め手があるかもしれない」という考えが芽生え始め、攻撃に転じることで、守備のバランスを崩してしまうのではないでしょうか。
あるいは、「今まで守りきれてきたんだから、このくらいマークを外しておいても大丈夫だろう」というような、心の隙が生まれるのかもしれません。
気づけば得点を奪われ負けていた、というのが今回W杯でスペインに敗れたチームの思うところかもしれません。
今回のスペインチームの戦い方を評して、「パスワークは素晴らしいが、全体的にゲーム展開がスローテンポで面白くない」とか、「シュートまで時間がかかり過ぎてよくない」とかいう意見が出ているようです。
これらは、スペインチームの意図を全く理解していません。
スペインチームの意図は
パスをつないでゲームを支配し、守備の時間を減らす。そして5分に1本程度の間隔でシュートチャンスを生み出し、相手疲れさせ、得点を奪う。試合をリードしたあともポゼッション率と高めて相手に攻撃のチャンスを与えない
ことだったのです。
シュートやクロスで攻撃を終えれば、相手にプレッシャーを与えられます。攻撃がゴールキックになったりやGKのセーブに阻まれても、「ヤラれてる」感を相手に植えつけることができます。この蓄積によって、DFはなぜか足が棒立ちになる瞬間がやってきます。その時に得点が生まれているのです。
逆に、攻撃がシュートやクロスで終わらなければ、相手に「守りきれてる」感が浸透していきます。「ボールを回させてる」という意識です。こうなったら、相手は集中力を高めるばかりで、ゴールは遠のいていきます。
スペインは攻撃を続け、圧力をかけ続けることを一貫して90分間やり通し、勝ち星を積み上げていきました。また、試合展開によって戦い方を変える必要もないので、監督がピッチ上の選手に混乱を与えるような戦術変更も起こりません。
統計的には、一試合に10本シュートを打てば、そのうちひとつはゴールになることが分かっています。90分間で18本のシュートが打てれば、1点かあるいは2点取ることが可能です。
あとはポゼッションして時間が過ぎるのを待てばいいのです。
なんて、口で言うのは簡単です。大事なのは、チーム全員がこのことをしっかり理解し、得点を奪えなくても焦らず、やってきたことを繰り返すことです。
時間が経過するうちに、相手の方からゴールへの道筋を案内してくれるのですから。
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