footballhack: 2011/01

2011年1月31日

ポストプレーとポケットプレー1

タイで頑張ってる友人からFWの動き方に関するメールを貰い、非常に面白い展開になったので転載します。気の抜けた文章なので細かいところは余り気にせず読んでいただけるといいと思います。ここでは友人をAとします。Aの発言は緑色にします。


先週からあるチームに練習参加してる。今週よければ契約できるみたい。まあ、契約ここで取るつもりでやってる。

ここではFWでやってる。

・まず、FWのボールの受け方の種類にはどんなものがある?
例えば、DFを背負ってのポスト、DFとMFのポケットに入って受ける、DFの裏を狙う、プルアウェイで開いてもらう。等等。

・最近のネタにあったスペースに入る技、って言うのはDFを背負ってのポスト、の代わりにも成りうる?

※ここでは
3Dポジショニング
の項で書いた三角形の重心で受ける動きのことをポケットプレーと呼ばせていただきます。
簡潔に書くとFWの狙いはAの言うとおり、主に3つあって、優先順位をつけると

1 裏
2 ポケット
3 ポスト

になる。常に1か2 あるいは 1か3を適宜切り替えながらDFに2択を迫り駆け引きをすることが大事。つまりポケットプレーはポストプレーの代わりになる。

他にFWには、Aのいうとおり、プルアウェイがある。つまりサイドに流れて起点を作るというもの。他には細かいけど、外から中へのランニングやオフサイドポジションへの位置取りや引いてきて中盤を助けるというものがある。どれをするにも重要なのは味方の動きと被らないように、または味方が動いてできたスペースに流れるようにすることかな。味方との連動や味方の性格やプレースタイルの把握やチームの意向などが関係するように思う。

最近思うのはピッチの広さも、22人分の体積も毎回大差ないわけだから、どっかにスペースはある訳だし、作る事も可能だってことだよね。プルアウェイで 外、駄目なら中、常に流動的に動いてスペースを探し続けることの大事さが少し分かってきた。後はボールを受ける時の身体の向きで通常より広くスペースを使える、気がしてる。つまり探す時の移動手段も大事ってこと。少しずつだけど。 

・その中で僕ぐらいの背丈の選手に向き不向きの受け方はあると思う?
あるいは僕みたいなタイプが狙うべき動きの優先順位はあると思う?(勿論相手との駆け引きだから一概には言えないだろうけど)

ポストになるということはDFを抑えながらプレーするということだから、逆に言うと常にDFに自分の動きを制限させてしまう事を意味する。これはプレー精度を落とすことにつながる。ドログバのように体の大きな選手は上手くDFの動きを制限できるから有効だけど、香川やマンCのシルバやテベスは体が小さいから自らDFに体を預けるようなことをしない。その代わりにポケットに入る。

だから、Aにおすすめな動きは常に裏を狙いながら要所でポケットに入って足元でボールを受けて前向きにプレーすること。体の小さなAや日本人にはポストプレーは不向きだと言わざるをえない。

・DFを背負ってのポストと比べてポケットプレーのメリット、デメリットはなんですか?

ポケットプレーのメリットデメリット
利点はなんといってもゾーン破壊力がはんぱないこと。アジアカップ決勝を見てもわかるとおり香川不在で日本の中央突破は皆無に等しかった。翻って韓国戦までは香川に縦パスが入るところから攻撃がスピードアップしてDFを一枚ずつはがしながらショートパスで崩すことに成功していた。ポケットプレーは中央突破を可能にするから、結果的に外中外のいいリズムを生むこともできる。

ただしポケットプレーの条件は、後方で味方が正確で素早い横へのパス交換ができることと受け手のコントロールの技術。ポケットポジショニングはボールが自分から遠いところにある段階からバックステップなどでいいポジションに侵入してパスを待つところから始まる。そこにパスが来なければ意味が無いし、パスを受けてもいいコントロールが出来なければパスはおろかドリブルも出来ずに囲まれて奪われる。ポケットプレー=狭いスペースでのプレーってことだね。

つまりポケットプレーのデメリットはプレー難易度の高さにあると思う。チームとしてのつなぎ、コントロールの技術、狭い中での素早い判断。非常にチャレンジングなプレーだよね。

あと、ポケットポジショニングはボールホルダーに2つ目のパスコースを提供することも忘れてはならない。中途半端なポジショニングは周辺のDFの意識を集めるから、ボールホルダが自分へのパスを囮にして第2のパスコースを見つけることができる。これもボールホルダのパステクニックがある程度高いことが条件。

・相手を背負ってのポスト、ってのはプレッシャーが自然とかかるものだよね。あまり成功できずに苦手意識があるんだけど、どういうことを意識すれば成功率は上がるだろうか?

ポストプレーのメリットデメリット
ポストプレーに関しては個人的にかなり否定的な見解を持っている。その理由は、DFとの体の接触を促すがゆえポストプレーヤーがミスをしやすいこと、パスコースが読まれやすいこと、ポストプレーから第三の動きという一連の崩しが使い古されていて簡単に予測が立つこと、敵はおろか味方までも集まってきてしまい人口密度があがること。

とはいえ、ポストプレーヤーの体格が十分であれば(四肢が長く体重が重ければ)ポストポジションに入ることでDF一枚を確実に殺せるから有効ではある。ポストからターンなんて芸当が成功すればDFにとってこれほど怖いものはない。

自チームが守備から攻撃に移るときにハーフウェイラインあたりで体を張って起点を作るプレーはどうしても求められてしまう。だから、ポストプレーから逃げることはできない。

ある程度のポストプレー技術は持っていないといけないんだね。 

ポストプレーのテクニックについては、僕自身が苦手だからうまく説明できないけど、いくつかあって、
1 DFの動きを制御する
2 ボールにプレーする
3 ファールをもらう

1についてはいま書きかけの記事があるから今度アップするけど、DFの膝を押さえるというものがある。手や尻をDFの膝に当てて動きを押さえてしまえばプレーエリアを確保できるよねという話。これをするためにクサビのパスは足の裏でコントロールすることがおすすめ。南米系のFWは必ず足の裏で縦パスを後ろ向きにトラップする。自然にDFの腿に自分の尻を付けやすくなるからね。ボールを足の裏と地面で挟んでしまえばコントロールが大きくなる心配もなくなるし。

これは僕が今までしてこなかった事だね。新しく覚える必要がある。ポストに入って相手から逃げながらボールをコン トロールすることは、難易度が高いし、相手に背を向けながら逃げれば追ってくるわけだから、自ら自分が有利になるように相手に身体をぶつけた方が成功率は 高いのかもしれない。って考えるようになった。

2について、日本ではボールに触れずにDFを抑える方法でスクリーンする方法が指導されるけど、これだとDFの力が強い場合ボールを守れない。常に先にボールを触れるようにしてDFの動きを感じながらボールを動かしていけば、無理にDFが取りに来たときにファールを貰い易い。

3については僕が言えることはなにもない。点は取れないけどいつもスタメンのFWという人種が世界には多く存在するが、彼らの共通点はファールを受けるのが上手いということ。体をはれるから、痛い思いをしてもチームに貢献したいという強い気持ちがあるからできる術だ。これは実戦で学ぶしかない。

尚、件の蹴球計画に「背面正対」とも言えるようなポストテクニックが紹介されているので参考にしてほしい。→
蹴球計画 「ファン・ニステルローイのマークのずらし方、シュート」


ポケットプレーはサッカーの向上心をそそるが、ポストプレーの成功の為には体格など先天的な条件が揃わないと難しいという意味で、ポストプレーのほうが相対的に難易度が高いと考えている。

ポケットプレーについての補足。
ポケットプレーにはファーストタッチの上手さが絶対条件になる。藤本や柏木のようにボールを体から離してしまったり、近づいてくるDFに気づかなかったりするとまず成功しない。成功させるにはまず、準備動作。ポジショニング動作をする、体の向きを調整する、首を振る、軽くジャンプする、両足を地面につける、体を軽く浮かす、そこからまず周辺のDFに取られない場所にボールをトラップする。僕は 2タッチコントロールをおすすめするけど、ボールを奪われなければある程度ボールを体から離してうごきだしてもいいと思う。

身体の向きの調整にすることによって近づいてくるDFを牽制できることも考えれたら尚いいね。

それともう一つ、これも動画を揃えてる最中なんだけど、受ける直前に2,3歩後退してトラップする技がある。イニエスタが得意なんだけど、香川もよくする。パスが放たれボールが自分へ転がってきたら、2~4歩くらいバックステップを踏んで、軽くジャンプしながらターンする方法。これが出来るとDFのアプローチの角度を少しずらせるから、プレーの選択肢を増やすことが出来る。ただし、トラップの時足を浮かせすぎてボールをスルーさせやすいので気をつけたい。

僕はこのポケットプレーを身につけた方が、積極的にポストに入るより大成出来る気がするんだけど、どうだろう?

その可能性はポストプレーを極めることと比べれば高いだろうね。Aのみならず、日本人の全サッカー選手がポケットプレーを極めてより高い次元のサッカーを国内で見れるようになることを切に願います。

次→ポストプレーとポケットプレー2





ポストプレーとポケットプレー2

前回に引き続きFWの選手のポストプレーとポケットプレーについてのやりとりを御覧ください。

・香川が相手陣内でプレーする時、ポケットにすっと入ってきてボールを受ける事が多いよね。そこで自分で前を向くか、誰かに預けてついてきたDFの裏を狙っ たりしてる。ポケットと裏に出来たスペースを効果的に行き来して得点に絡んでいるように見える。

そのとおり。香川は縦のギャップを自分が作ったり、自然発生したスペースに上手に入ったりしてチャンスメークしている。そのサッカーセンスにはあっぱれというしかないよ。

・ドルトムント3トップだけど、4-4-2の2に入ってこのようなシャドー的な動きをするのは全然ありだと思う?


ドルトムントは4-2-3-1でこれは見方によっては4-4-1-1で2トップは縦の関係ととることもできる。つまり、4-4-2でも一方のFWのポケットプレーが有効ならばチーム内でポケットプレーが許されるということになる。アリアリです。

4-4-2の2でポケットで受けるのが得意なタイ人が一人いた。そいつも、ポケット、裏を行き来してた気がする。守備の時もDFにプレスよりもボラを見てた。そういう役割がそいつにはあったな。 

ただし、チームのつなぎ、ビルドアップにおいて横パスが少なすぎる場合、2トップを縦関係にしておくと、ピッチの横の幅をFWがカバーできずに攻撃が組み 立てられない事態が起こる。プレミアの中位以下のチームにこの傾向は強い。2トップを横並びにすることで、FWの横への運動量を分配してバランスのいい選 手配置を志すチームだと、必然的にポストプレーの頻度が高まる。ポケットプレーは中盤のパスワークの上手さがあってボールホルダーに余裕があって初めて可能になるプレーってことだね。

・僕はスペースなんてのは相手DFのちょっと前と、裏くらいしかFWの時意識した事がないから、
ポジショニングの技
っていうのは新しく身につけないといけない要素だと思うんだけど。。。 

これが出来るようになると、意外とスペースってあるなっつう感じになるとおもうし、よりスピーディーにプレーすることが求められる。つまり、サッカーが面白くなるってことです。

それと香川を見ていてきづいたことなんだけど、彼は抜けてくるパスを狙うのが非常に上手い。どういうことかというと、先日のクサビとスルーパスの見合いで 紹介したポストプレーヤーを追い越す動きのこと。香川はクサビが他の選手に入りそうになると、必ずそのポストプレーヤーの近くを通るようにして、クサビのパスの進行方向とクロスするように動く。そこにボールがこぼれてくることをあらかじめ予測しているような動きをする。

今思った。MFがシュートすると思ったとき、出来るだけここにキーパーがこぼす、と予想して飛び込んでいく。この能力は他の外人やタイ人より高い と思ってるんだけど。この能力をもっと低い位置で使えばいいのか?つまり、あいつにクサビが入ってここにこぼれる、という予測をするということ。 

例えばクロスに合わせる時もそうなんだけど、ドルトムントでは常にバリオスというファーストターゲットがいて、香川はそのバリオスの裏に走りこむようにする。すると、クロスがズレたとき香川がボールに触れる。このときバリオスが囮になるためDFは香川へのマークが疎かになる。常にファーストターゲットの裏に走りこむ香川は、「このへんにボールが転がってきそうだな」っていう感覚が鋭いと言える。練習したり観戦したりするときもこのボールの動きを意識できるかどうかは雲泥の差だと思う。

裏を狙う動きについてもこれから書くつもりだけど、簡単に説明する。裏を狙うかあるいは足元で受けるかの判断はDFの動きを基準にするといい。 DFが足元を狙っていれば出し手と受け手は裏を狙う、その逆もしかり。たまに、出し手と受け手の意思疎通が上手くいかずスルーパスが通らないことがあるけど、どっちが悪いかの判断はその時のDFの動きを基準にするといい。出し手も受け手もDFの動きに合わせてプレーの選択をすれば理論上、意思疎通が取れないことはない。まぁ難しいけどね。

最後にビジャとボージャンについて。Aにとってはビジャの動きはかなり参考になると思われる。体が小さい、スピードがある、ポケットポジションからワンタッチプレー、そしてポケットポジションでのポジショニング動作から裏を狙う動き。あれだけパスが回るチームだからってのもあるけど、動きの質は高いよね。

反対にボージャンは身体的特徴はビジャに似てるけど、率先してポストプレーポジションに入る。ワンタッチで出し手に落とすけど、DFは全く崩れない。とても非効率な動きをしていると言わざるをえない。ポストプレーに向かない選手が率先してポストプレーをするとどうなるかという悪い意味でいい例だと 思う。

まぁバルサばっか見ててもあんま参考にならんかもね。あんなサッカー出来るチームは他にないわけだし。プレミアの中堅か下位チームを見るほうがいいかも。スパーズのデフォーもいいよ。でもプレミアのFWはみなガチムチだからダメか。チビFWがいて4-4-2でリーグ中位以下っていっても思いつかなんだよな。

あとはFWがフリーで前向きにボールを受けたら、そこには必ずDFが近づけなかった理由があるはずだから、そういう場面に注目して観戦するといいかも。常に疑問を持って観察することで見えてくるもんがあるもんだよ。

プレミアの中堅下位は見ていて窒息しそうになるね。
上位チームと対戦する時のテベスとかならいい見本になるかな

タイのリーグは観たことないけど、きっとJに似てスピードある選手が多いんだろうな。意外とヒントはJリーグに隠されていたりして。

次→FWの動き 差金の動き


2011年1月22日

ポジショニング4 ポジショニングという技

前回まで攻撃時のポジショニングについておおまかに説明してきました。その内容は「ポジショニングとは何か」「2Dポジショニング」「3Dポジショニング」に分けられました。

今回のポイントは「ポジショニングとは技である」と敢えて言うことで、その方法を強く意識してもらうことにあります。

話は変わりますが、サッカーのピッチ上で移動方法は大きく分けて4つあります。


止まる   歩く   跳ねる   走る
遅い     移動スピード       速い



「止まる」は移動に見えませんが、周りの選手が動いてる限りにおいて、止まることで相対的にポジションを変えることが出来ますので、移動手段に組み入れます。

ここで重要なのは「跳ねる」 です。跳ねるとはサイドステップ、バックステップ、スキップあるいは軽いジャンプです。

今回の記事の主旨はこうです。『攻撃におけるポジショニングとは、サイドステップやバックステップなどのスキップ系の移動を意図的に使うことで、体の向きや移動スピードを調整しながら有効なスペースに陣取る技である』


簡単に言うと、ポジショニングを考えるときはサイドステップとバックステップが有効な技である。ということになります。

では下の映像を見てみましょう。


ほとんどの選手がボールを受ける前にサイドステップやバックステップを使っています。

移動時にサイドステップやバックステップの使用頻度を上げる利点は3つあります。

1 移動スピードをコントロールできる

2 準備姿勢を自然に整えられる

3 疲れない

1について。「走る」移動手段しか持たない選手の場合、パスを受けるタイミングは一瞬だけになります。また、背中側へ出されたパスへの反応が遅れます。スキップ系の移動が使えれば、出し手の姿勢を見ながら移動スピードを調整できるので、パス交換の機会やタイミングを増やすことが出来ます。

2について。サッカーにおける準備姿勢についてくわしくはこちらを御覧ください→蹴球計画 「サッカー選手と準備動作」
とにかく両足を地面に着けておくことが大事です。この状態を断続的に作り出せるのがスキップ系の移動法です。トラップは基本的に軽くジャンプした状態で行われますから、スキップ系のステップワークでパスを待つことは非常に理にかなっています。

その場に留まる場合でも、軽いジャンプを連続して行うことで、少しのパスのズレにも素早く反応でき、ミスパスをパスミスにしないコントロールが出来ます。バルサの選手はパスが正確なだけでなく、受け手側の補正能力も高いのです。

3について。ただ、個人的に疲れないなと思うだけです。アウトオブプレー時に多くの選手が後ろ向きスキップを使用するのを見るので、あながち嘘じゃないなと思ってるんですが。専門機関の研究結果が出ていれば知りたいところであります。
※追記 スキップがなぜ疲れないかは右の「スキップがランニングより楽な理由」という記事をご覧ください


こんな当たり前なことがなぜ日本サッカー界では常識とされていないのか不思議でなりません。守備のポジショニングをとるときはどの選手も自然にバックステップや後ろ走りやサイドステップを使いますし、動き出しのいいFWはバックステップを使ってDFの視野から消えるようにプルアウェイをします。つまり、部分的に良いとされる動きやプレーが全ポジションで普遍化されていないという現象について頭を傾げざるを得ないというのが個人的な思いです。

関連記事→考えて走る サイドステップと後ろ走り

2011年1月21日

ポジショニング3 3Dポジショニング

前回はパスコースを確保するために平面的なイメージでボールホルダーをDFの間に見る「2Dポジショニング」を紹介しました。また、2Dポジショニングがもたらす2つの弊害、ボールに寄る動きとポストプレーによる攻撃の組み立てをざっくり見ました。

今回は2Dポジショニングの弊害を取り除くために、立体的なイメージでポジショニングをとることを考えます。

 簡単に言うと、ボールを受けるためのポジショニングをとるときに、自分の背後の状況もイメージしようってことです。

左図の矢印は移動を表していません。意識を表しています。


水色が攻撃側、オレンジ色は守備側を表します。水色は上の方向へ攻めています。







 では、実際のシーンを考えてみます。

仮に左のような状況があったとします。

3Dポジショニングは複数の守備者の中間地点に位置取ることを言います。三角形の重心に立つってやつです。


4人の守備者との距離が均等になるように意識してポジショニングをとります。
または、自分の周りに空間を作るように意識してポジショニングを取ります。

パスコースの確保だけでなく、ボールを受けた後のプレーのためのスペースの確保も同時に考えることが必要です










こうすることで、ボールを受けたときに余裕を持つことが出来ます。逆に2Dポジショニングの感覚しか持ち合わせていない選手は、自分からDFと近づいてDFを背負う形でポストプレーを狙おうとしますから、ボールを受けたときにプレッシャーを受けてしまいます。


ボールを受けたときに周囲の敵全員の注意を引きつけることが出来るのも、3Dポジショニングの良さです。

また、狭いスペースでプレーすることが必要になるので、プレーを成功させるにはコントロールの技術が高いレベルで求められます。
ボールを受けたら例えば左のようなプレー選択肢が生まれます。

どの選択をするにしても一番重要なのは、パスとパスあるいはパスとドリブルを見合いにしてプレーすることです。







3Dポジショニングは周囲のDFの注意を引きつけることが出来るので、ボール保持者に新たなプレー選択肢を与えることも出来ます。

常に自分の背後の状況をイメージし続けることで、自分へのパスコースと味方へのパスコースを同時に提供するポジショニングを実践すれば、ボールホルダーは楽にパスを繋げます。





このポジショニング感覚はある程度技術レベルが高くパスが繋げるチームでないと養成が難しいので、 14~17歳頃までに身につけるのがいいと考えます。

出し手がルックアップしてパスコース探しているときに動き出しても遅すぎます。3Dポジショニングしようと思ってもDFが憑いて来てしまい結局ポストプレーになってしまうでしょう。

自分を誰にもマークさせず、かつDF全員の注意を自分へ向けさせるポジショニングは、出し手がボールを持つ前、2手3手前から陣取っておく必要があります。

2Dポジショニング感覚が強い人は、常に自分がボールホルダーの影に入ってないか気にしすぎて、自分から悪いポジションへ移動してしまいます。3Dポジショニングを実践するには、ある程度ボールホルダーの影に入ることに我慢し、先に良いポジションに入ってそこから動かないことを覚える必要があります。



現代サッカーにおいて3Dポジショニングはボランチより高い位置でプレーする全選手に必須の感覚だと言えます。DFやサイドでプレーする選手は2Dポジショニングで十分だと思いますが。とにかくピッチ中央でプレーする選手は3Dポジショニングと2タッチコントロールで守備の狭い隙間を素早く打開するプレーが必要不可欠だと考えています。

ではどのようにすれば、複数の守備者の間に入り込めるのか、それを次回考えていきたいんですが、香川やイニエスタを注意深く観察するとその答えが分かってきます。しかも、彼らはそれを意識的に「技」のように繰り出しています。「技」が好きな日本人(僕も技が大好きですが)なら、ポジショニングを技として認識すれば、かなりスムーズな改善が促せるんじゃないかと考えています。

次→ポジショニング4 ポジショニングという技

関連記事→FWの動き方 ポストプレーとポケットプレー

2011年1月18日

同調、リズム、ドリブル

先ほどNHK教育で「すいえんさー」という番組を見ました。毎回面白いテーマを扱い、科学的にかつバラエティ要素ふんだんに製作されているのでたまに見るんです。女の子が可愛いというのもありますが笑。

放送のテーマは道端で接近しながら対面する2人が通せんぼしてしまう「お見合い」という現象です。「お見合い」の原因は「同調」であるということが紹介されていました。→すいえんさー「いよいよ火曜は道でお見合い!!」

「同調」とは目に映る人の動きを無意識に真似してしまう人間の特性で、これを意識的に防ぐのは難しいということでした。詳しい内容は再放送を確認していただけるとよろしいかと。

番組後半、筑波大学のサッカー部と浅井武教授が登場し、同調を破るステップワークの紹介がされました。サッカー科学を研究する浅井氏をTVでみたのは久しぶりで、少しココロ踊る気分でした。

彼の主張をかいつまむと、サッカーにおいてDFはドリブラーのステップワークに同調することでドリブル突破を防ごうと心がけ、逆にドリブラーはDFの同調を促し眼前で同調を破ることで抜くタイミングと方向を悟らせないようにして突破を試みるということです。

これには非常に賛同します。以前このブログで扱った「独特のリズム」という項の主旨と合致します。

番組で紹介されていた「お見合い」を回避する方法に「ちょこちょこ走り」というものがありました。お見合いを回避するには有効かもしれませんが、実際にサッカーグラウンドでは有効であると言い切れません。

DFの眼前でステップを細かく踏むことのデメリットは2つあります。DFに突破のタイミングを教えることと、前進スピードを緩めざるを得なくなることです。

ステップワークを細かくすることはフェイク動作と考えていいでしょう。フェイク動作はその動作に時間がかかればかかるほど、次のプレーがターンと加速であることをDFに知らしめてしまいます。また、「ちょこちょこ走り」のようなフェイク動作は同時にボールを押し進めることができなくなるので、ドリブルスピードが低下し、次の加速という動作にスムーズに移行することが難しくなります。

「ちょこちょこ走り」 に近いフェイク動作を実践するジュビロの駒野選手やガンバの加地選手はお世辞にもドリブル突破が得意とは言えません。以上の理由でDFの眼前でただステップワークを細かくすればいいという考え方は有効でないと考えています。

自分が考えるベストのドリブル突破法は「ちょこっ走り」です。2歩1触で正対しながらDFに接近し、DFのステップワークを同調させます。そこから「ちょこっ」とステップワークを変化させて加速して抜き去ります。この「ちょこっ」は同じ足の2度着きや3連符のリズムの導入などです。このようなドリブルを実践しているのが香川やメッシ、ディマリアやロッシなどです。無駄をそぎ落とし、人間の無意識領域の習性を利用してドリブルする様が美しいと感じるわけです。

いずれにせよ、番組で紹介された「同調」という概念はドリブル突破を考える上で非常に重要であると考えています。



関連記事→音楽、リズム、ドリブル

メッシのドリブル 「独特のリズム」

ドリブル方法論1

2011年1月15日

ポジショニング2 2Dポジショニング

味方がボールを持ったときのポジショニングの基本とその弊害について書きます。
水色が攻撃側、オレンジが守備者を表しています。




  ボールホルダーに対して守備者が一人いる場合、その守備者の背後は影になるため、パスコースを作るには受け手は影から出る必要があります。

ピンク色の台形の内側ではパスを受けられません。






「顔を出せ」とか「サポートしろ」という指示に対しては左図の動きが正解です。

9歳か10歳くらいまでにはこの感覚を身につける必要があると思います。
 守備者が二人の場合。二人の守備者の間を「門」といい、受け手はその間に「顔を出す」 ことで、「門」の間を通すパスが完成します。
門を通すパスを受けるAの選手の視野は、きっと下の図のようになっているはずです。
出し手がオレンジ色の守備者の間から見えるようにポジショニングをとっています。

これが2Dのポジショニングです。つまり、パスのコースを確保するために、邪魔者(DF)の間に出し手を見ようという意識です。

受け手の視点から平面的なイメージでポジショニングを取っています。

このポジショニング感覚は12~13歳くらいまでに養うのがいいのではないでしょうか。






この2Dポジショニングが促進させるプレーは、ポストプレーによる攻撃の組み立てとボールに寄るサポートの動きなどです。
 
ボールに寄る動きの弊害はこちら→考えて走る 日本人の走り方

ポストプレーによる攻撃の組み立ての弊害は、守備者を集めてしまうことと、狙われやすいことと、ポストプレーヤーがマーカーと競り合いながらプレーしなければならないのでミスになりやすいことと、後ろ向きにプレーしなければならないので直接ゴールにつながりにくいことなどです。

簡単に書いてしまいましたが、 2Dポジショニングは悪いってことを言いたいのではありません。育成においては、2Dポジショニングは3Dポジショニングへの過程なのです。次回はそのへんを書いていきます。

次→ポジショニング3 3Dポジショニング


香川の2ステップ

2ステップターンはどうやらメッシだけじゃなくて他の多くの選手も使用するらしく、2歩1触でプレーする選手がスピードに乗った状態でターンするときには、自然と2ステップになるようです。日本の期待の星、香川も先日のヨルダン戦で見せてくれました。
2:05からです。


マーカーと正対しながらタッチラインと平行にボールを動かし、ボールをストップさせます。次にカバーリングに来た第2のマーカーへ正対しながら右方向へかわしています。

香川がボールを止めたとき、第2のマーカーはさらされたボールに対して足を延ばす格好になりバランスを崩しています。そして香川は、2ステップ目で第2のマーカーの重心の逆をとり、時間とスペースをつくりました。

ボールをストップさせてから右方向へ動かすのが速すぎて、スローでもよくわかりません笑。

実際僕なんかがこの動きをやろうとすると、結構難しく、ステップワークが合わなかったりして、次のプレーへの接続が遅くなります。

速く動こうという意識より、やっぱり両足のステップ、リズムに重きをおいたほうが良さそうです。タタンタタンというかんじでしょうか。

それと香川選手はターンの際は上体が沈み込むような格好になって、ボールを動かした後に上体が浮き上がるようにクロスへアプローチしています。これはボールタッチした右足で体重を支えている証拠です。

ボールに近い足に重心を移して横移動する意識は非常に重要です。これが出来ないとターンした後すぐに次のプレーに移行できず、ボールを体から離してしまい、DFに寄せられる隙を作ります。GKが横っ飛びするときも香川と同じような重心移動を行い、スムーズに重心を移してより遠くへ飛べるようにジャンプしています。

どうやってターンするかということより、どうやって次のプレーへスムーズに速くつなげるかのほうが大事だと思います。

次→メッシの2ステップ参 ボールコントロールと重心コントロール

ポジショニング1 ポジショニングとは何か

このブログではサッカーの技術戦術に関して様々なテーマを扱っていて、なかなか一つのテーマに対して深く掘り下げられていませんが、「カキタイトキガカキダシトキ」ということで、今回のテーマはポジショニングです。

ポジショニングについては大別して2つあります。攻撃時のポジショニングと守備時のポジショニングです。

攻撃時のポジショニングとは、なるべく相手ゴールに近い位置で、自分がボールを受けたときフリーで前向きの状態をつくるための動きです。それと同時に味方にフリーで前向きの状態でボールを渡すことを考えます。

守備時のポジショニングとは、ボール奪取あるいは相手に厳しくプレッシャーをかけるための位置取りです。同時に味方がボール奪取やアプローチを仕掛けやすい状況をつくることを考えます。

双方に言えることは、自分のパフォーマンスの効率化と味方を助ける動きを同時に考えていくことです。

良いポジショニングは選手の(ボールに絡んだ時の)プレーをよりシンプルにさせます。シンプルなプレーが出来れば自ずと難しいプレーが減り、ミスが起こりにくくなります。ミスが減ればその分チームとしてのパフォーマンスが向上するので、試合で自チームにいい流れを呼び込みます。

良い選手になるには技術と身体能力の向上がベースにあり、それらを発揮しやすくするためにポジショニング感覚があると考えています。

良いポジショニングは試合のレベルによって変わります。例えば、高校選手権とJリーグでは取るべきポジショニングは大きく異なります。それは試合の戦術レベルや個々の能力(キック力やパスの精度)に左右されるからです。

したがってポジショニングの鍛錬は自分の所属するチームやリーグに合わせて行われるべきです。技術やフィジカルのトレーニングは選手の成長に合わせて幼少期から継続的に行われるべきですが、ポジショニング感覚の研磨は周りの環境による強制や促進に依るところが大きいと考えています。

結論的に言うと、ポジショニング感覚の養成はサッカー選手にとって最終で最大の課題となります。サッカーの上達においては、技術レベルやフィジカルレベルが限界値まで伸びた後でも、ポジショニング感覚を継続的に改善していくことで、選手のパフォーマンスが向上するということです。

次回から攻撃時のポジショニングについて普遍的な部分だけ扱って書いていきます。

次→ポジショニング2 2Dポジショニング


2011年1月11日

クサビとスルーパスの見合い1(スキップスルーパス)

「崩し」の基本はDFを騙すことです。パスするかしないか、ドリブルするか止まるか、右か左か、そういう2択を迫ることで攻撃は進んでいきます。今回は手前かの2択をDFに迫ることで可能なスルーパスの出し方を解説したいと思います。

簡単に説明しますと下の図のようになります。かなり単純化されてますが笑。



 水色は攻撃側、オレンジは守備側を表しています。

要はクサビを受けに降りてきたポストプレーヤーの左右を抜くようにあるいは頭上を越えるようにパスを狙おうというものです。

ポイントはクサビのパスを出すタイミングでそのままキックし、少し角度を変えてスルーパスを狙うことです。クサビのパスフェイントをしてから一度持ち直し、タイミングを遅らせて狙っても意味がありません。そのため、同じ予備動作から角度を変えるキックの技術が必要です。


では実際の状況に少し近づけてみます。

左図にDFの選手AとOFの選手Bを登場させました。ボールホルダーをCとします。

Cがクサビのパスを狙うとき、ポスト役とそのマーカーはボールに寄ります。こういった動きとCのキック動作によって、Aはクサビのパスが出ることを予測します。

クサビのパスが通る状態、すなわち誰もそのパスをインターセプトできず、かつDF陣がポストプレーヤーを囲いに行けない時、周辺のDF達は次にポストプレーヤーが何をするか観察します。

クサビのパスはポストプレーヤーを後ろ向きにプレーさせる性質がありますから、このときAはポストプレーヤーの体の正面側のスペースに注目して観察するわけです。このとき瞬間的にAがボールウォッチャー状態に陥ります。



このタイミングでBは縦に動き出します。ポストプレーヤーの脇を他の選手が縦に抜ける動きはポストプレーヤーを助ける役目もあります。それについてはくわしく別の項にまとめます。追記→「味方を追い越してフリーにさせる」

Cは上記の角度を変えるパスで裏を狙います。ポスト役の選手が寄ってきた瞬間にこのパスのイメージができなければ、裏にボールを蹴れません。日々のイメージ訓練が必要です。

Cがボールをキックした直後からボールがポスト役の選手を通過するまで、守備者Aはこれがスルーパスだと気付きません。なぜならボールはキック直後ポストプレーヤーへ向かって動くからです。Aの位置からだとボールの軌道がわかりづらく、僅かな遠近感の狂いでスルーパスに気付くのが遅れてしまいます。

この一瞬だけAの意識をBから引き剥がすことができればスルーパスは成功します。最低でも、Cがキックするまでに、Aが後方への全力ダッシュを始めなければ、かなりいい線行くと思います。

ではここで参考動画をひとつ。リケルメのプレーから。彼のスルーパスの中でも個人的に一番印象に残ってるものです。5:13からです。


縦パスを足元で受けようとしたサビオラを囮に使った美しいパスです。サビオラはこのパスに反応して足を伸ばしています。味方すら騙すパスであれば敵が騙されてしまうのも仕方ないことでしょう。

この現象は日常生活でもよくあります。誰かが自分に向かって手を振ったので手を振り返したら、そのひとは本当は自分の後ろにいる人に向かって手を振っていて、小っ恥ずかしい思いをすることと似ています笑。

この形で通るスルーパスはプロの試合でよく見られます。スルーパスが成功するときのに注意しながら観戦すると自分のプレーの幅を広げられるかもしれません。

続き→クサビとスルーパスの見合い2

クサビとスルーパスの見合い2

ちょっと前回の引き続きでクサビとみせかけてスルーパスを出すプレーを考えてみます。このプレーは4-4の2ラインを敷いてブロックを作る守備に対して非常に有効なので覚えておくとお得だと思います。



前回の単純化した図よりもっと実際的な状況を下に図にしてみました。フットサルをイメージしてみました。
 左図のような選手の配置は(アマチュアレベルであれば)よく起こると思います。

水色が攻撃側、オレンジが守備側です。

左図のようにクサビを狙う動作からスルーパスを繰り出したときのDFの動きなどを書いていきます。







 まずピヴォが受けに行きます。このとき、クサビを受けられる状態であり、DFの意識を引き付けられば、ボールに寄っても寄らなくてもどっちでもいいと思います。









 ボールホルダーのキックモーションとともにDFの意識がピヴォに集まります。

この瞬間ピンクの楕円で示した範囲に守備陣の意識が向かいます。オレンジの線はDFの視線や意識を表しています。この楕円は次に起きるであろうピヴォ(水色)とフィクソ(オレンジ)の攻防の範囲を示しています。

ポストプレーからの展開は大まかに分けて1ターン、2キープ、3後ろや横への展開またはフリックパスぐらいなものです。だからDFはこのピヴォの予備動作から次の展開を予測しようとするわけです。


ボールホルダーがキックをしてボールがこの攻防の中を通過しようとすると、DF陣の注意は更に強く楕円内へ向けられます。









しかし、このキックの真意はスルーパスであったためDF陣は後手を踏む結果になります。

出し手に近いDFはこのパスの軌道を読み違える可能性は低いですが、受け手に近いDFほどパスの軌道を読み違えやすいという意味でこれは非常に狡猾なプレーです。

狭いスペースでも有効です。味方の足元を抜くようにして、更に奥にいる選手へパスを狙うことでスルーパスの成功率がアップします。


実際の11人制サッカーでもそんなに珍しくないシーンなので、このパスのトレーニングをすることは無駄ではないと思います。

プロの試合を見ていると、果たして出し手が意図的にこういうプレーをしているのかどうかよくわからないところがあります。結果的にボールが味方の近くを通過しているようにも見えます。一つ言えるのは、上記のピヴォのようにボールに触れなくてもDFの注意を引きつけるだけでチームに貢献できることがあるということです。


キックミスによってこの種のスルーパスが通ることも多々あります。クサビのパスがずれてDFラインの裏に抜けたら、たまたま味方が走っていたというようなシーンです。先日の日本代表ヨルダン戦の前半、香川がGKと1対1を作ったシーンもそんな感じでした。内田は明らかにワンツー狙いであのパスを放ってました。

いずれにせよ、こういう形で裏に抜けるパスをDFが予測することは非常に難しいと言えそうです。なぜならこのパスは守備の集団的意図の裏をかく行為だからです。クサビのパスは守備側にとって絶好のボール奪取機会です。ポストプレーヤーに直近のマーカーだけでなく周辺の選手の守備意識も集中します。ついついクサビの目標地点に意識がいってしまうから、他の相手選手へのマークが甘くなってしまうのです。

このパスを意図的に成功させるためのポイントはイメージ力です。ボールを前向きでフリーで受けてクサビのパスコースが見えたとき、瞬時にその奥にいる選手の動きを視認し、2つ目の選択肢を想像できるかどうかなんです。

次→重なったら一つ飛ばす

2011年1月8日

メッシの2ステップ 弐

5-0で終えた2010-11シーズンのカンプノウでのエルクラシコ、その4点目はメッシがケディラをかわしてからビジャに送ったミドルレンジスルーパスから生まれました。

このときメッシがケディラをアウトサイドで左にかわすんですが、ここで使われているテクニックが話題の2ステップってやつです。
では動画で確認してみます。(3:23からです)


もうちょっと前から映っていると判りやすいんですが。。。

軽く解説すると、カウンターの機会を得たメッシがズンズンと縦へドリブルで前進したところに、カルバーリョがこれまた前進守備で縦への進路を切りに来ました。メッシがドリブル進行を遅らせたところに、メッシの左後方からケディラが追いついて来ました。ここでメッシは後方へ戻ろうとするケディラの重心の逆をとってひょいひょいと左にかわしています。

この動画ではメッシはパスを出すまでに4タッチしている(ように僕には見える)んです。1タッチ目でボールスピードを落とし、2タッチ目でカルバーリョの正面にボールを突いています。3タッチ目でマシューズフェイントの動きをして、ケディラの正面にボールを動かしています。

このときケディラは2つの反応を起こしてしまいました。一つ目はケディラとカルバーリョの間をケアする反応、二つ目はその直後に目の前にさらされたボールを奪いに行く反応です。

そしてようやくメッシは4タッチ目で大きくボールを動かしてケディラを左にかわしています。このときの3タッチ目と4タッチ目の動きがこの記事でテーマにしている2ステップのターンです。

メッシが2ステップで敵をかわしにかかるとき、1タッチ目で敵の正面へボールを動かし、餌をまくような具合で敵の足を止めているんじゃないかと思うわけです。

上のシーンではもし4タッチ目が遅れてしまえばケディラにボールを刈られてしまうわけですから、3タッチ目から4タッチ目にかけてはスムーズで素早い動作が必要になると思います。

もうちょい続けます

次→香川の2ステップ

2011年1月4日

ブラジル人に学ぶ声の出し方

普通、ピッチ上でパスがほしい時はどんな風に声を出しますか?「ヘイッ」とか「ハイ」とかでしょう。そうやって声を出せって指導されますから。

しかもできるだけ大きな声で呼べと言われますよね。ボールホルダーはボールを扱うことに夢中で周りを見渡せないことが多いですから、大きな声でアピールしないと自分の存在に気づいてもらえないわけです。

でも大きな声で呼んでも気づいてもらえないことって多くないですか?

プロの試合では観客が絶えずチャントを歌っていてピッチ内は騒音に包まれています。そんなときはなかなか声が届きません。アマチュアの試合でもピッチ内では選手同士が大きな声で指示を出し合い、声の小さな人はなかなかパスを呼ぶ声が伝わりません。

こんなときブラジル人ならこうやって声を出すでしょう。

「ホッ」

ホッっと高い声で呼びます。こうすると何故か遠くまで声が届きます。ジェンダー的に問題ある内容かもしれませんが、通常サッカー場にいる人の8割以上が男性です。飛び交う声の多くは男性特有の低い声であって、観客のチャントは怒号のような低い響きを轟かせます。この環境の中では、高い声というのはとても目立つんです。なので「ホッ」と裏声で声を出すと、他人の声に埋もれることなく、ボールホルダーの注意を自分に向けさせることができます。

やりかたは、合唱の練習でやるように、腹筋を使って息を小気味良く吐き出しながら、スタッカート気味に裏声で発声するようにします。「ホッ」と言う感じで。

これを初めて聞いたのは某プロサッカークラブの練習を見学したときでした。ブラジル人選手のほうから奇声がきこえてくるので観察していたら、パスを要求する声でした。その後フットサルチームの練習を見ていたら同様に声を出す選手がいて、これはブラジル流のコミュニケーションなのかなと思ったんです。

ちょっと恥ずかしいですが、慣れれば味方に確実に通じる声の出し方をマスターできます。声の小さい人にもお勧めです。

サル顔の人が連発すると「ゴ○ラ」というあだ名がつくかもしれないので気をつけましょう笑

メッシの2ステップ 壱

ドリブルで敵を抜いていくときは、敵の意表を突くタイミングで、ズバッと1タッチで抜いていくのがいいと、多くの人が考えていると思います。抜くときだけ速く動き、そこで緩急をつけるのが定石であると。

しかし、そういった考え方ではメッシのドリブルを理解することは難しいです。メッシは時として上記の定石を逸するようなターンを見せます。

メッシの2ステップはまさにその動きのことを指しています。メッシがターンをするときに、一発で方向転換するのではなく2回あるいは3回に分けて方向転換する癖があるというのは、各所で言われ始めているところです。

このブログではそのメッシの2ステップについて細かく分けて書いていきます。(まとめるのがめんどうなだけですが)

下のビデオの4:05のところがメッシの2ステップです。