footballhack: 崩し論まとめ 三種の崩し

2011年9月15日

崩し論まとめ 三種の崩し


これまでの崩し論で見てきたとおり、崩しには様々な形があります。しかし、僕が20年ほどサッカーをプレーし観戦してきた経験の中で最近ようやくわかったことは、崩しの形は大きく分けて3つの種類に分類できるということです。それは
  1. スペースへ走り込む味方に合わせてパスを送る
  2. スペースを作り出し、スペースを使う別の選手に合わせてパスを送る
  3. ひとつ飛ばすパスでDFの意識のギャップを突く
です。極論を言えば、崩しの形は以上の三種類しかありません。そして、各々の崩しの形は上の3つを組み合わることで全て説明できます。

では一つ一つの崩しを細かく見ていきましょう。



  1 スペースに走り込む味方に合わせてパスを送る

これは簡単なことで、現時点で空いているスペースをダイレクトに狙うということです。「裏を狙う」と俗に言います。この種の崩しには以下の
  1. スルーパス
  2. ワンツー
  3. 第三の動き
  4. ポストプレーを起点とする崩し
  5. DFとGKの間を狙うクロス   ↓
  6. ニアサイドを狙うクロス →参照「クロスのトレンド」
などが含まれます。

相手DFより一足先にスタートを切って走りこめればチャンスを生み出せます。しかし、狙うポイントが一つしか無いため、DFにパスを読まれやすいという欠点があります。ですから、このような直線的な崩しは性急な印象を見る者に与え、スピード勝負、フィジカル勝負の競り合いにもつれこむことが多いのです。

上手なパサーは正対、パスフェイクと間の作り方を駆使してDFの狙いを外せるので、そういった場合には綺麗に崩すことが可能になります。

この種の崩しは出し手と受け手のみの二者関係で作り出されますので、僕はこれを二人称の崩し、あるいは二次元的な崩しと呼んでいます。




  2 スペースを作り出し、スペースを使う別の選手に合わせてパスを送る

これはつまり、スペースを作る選手、使う選手、パスを出す選手の三人で関係するプレーのことを言います。スペースのない状況下で、一人が動き出し、その選手が元々いた場所に二人目が走りこんで使うということです。一番単純な例はスイッチです。他には例えば以下のプレーのことを言います。
  1. 背中でスペースを作る
  2. サイドの崩し方
  3. 2列目の選手に合わせるクロス →参照「クロスのトレンド3」
このプレーではボールホルダーに対して2つの選択肢を与えることが出来ますから、守るDFとしては判断に悩まされることになります。スペースを作る選手のマーカーはマークを外すわけにはいかず、かといって2人目へのパスコースを切れなければ崩されることは明白です。「分かっているけど止められない」と負け惜しみを吐くのが関の山でしょう。

動きのあるダイナミックかつ華麗な崩しになることが多いです。

前述したように、このプレーは3人の選手が関係するので、三人称の崩し、あるいは3次元的な崩しと呼んでいます。




  3 ひとつ飛ばすパスでDFの意識のギャップを突く

これは以前書いたとおり、一本のパスに2人が反応するプレーのことを言います。詳しくは右の「重なったらひとつ飛ばす」を見てください。【この記事は非常に重要です。】

この種のプレーの代表例は
  1. スルー
  2. スローイン、ゴールキック、コーナーキック
  3. DFラインからの長いフィード
  4. クサビとスルーパスの見合い
  5. ファーサイドを狙ったクロス
などがあります。このプレーもボールホルダーに対して2つの選択を供給することが出来ます。以前も書いたとおり、このプレーはDFの集団意図の裏をつくプレーであり、またDFを一瞬油断させてしまうという意味で、非常に狡猾なプレーです。

動きとしては大きいものではないのですが、綺麗に崩すことが可能です。 スタティック(静的)に見える分、外から見ると何が起きているかわかりづらいという側面があります。そのため、この崩しの形に気づくことは比較的難しいと思われます。3種の崩しの中で一番難易度が高いプレーになります。

これも3人の選手が関係しますので、三人称の崩しあるいは三次元的な崩しと呼べます。




   次元を一つ上げて考えよう 

次元を一つ上げるとはどういうことか、つまりパスに関わる人数を増やそうということです。

まずはじめに考えるべきは、2本のパスを繋ぐ軌跡をイメージすることです。パスを二本以上繋ぐには3人必要になります。一本のパスしかイメージできない選手は、サッカーの戦術理解度が二人称で止まってしまいます。もう一人増やして三者関係でつなぎ、崩しを捉えることが出来れば、第三の動きやショートショートロングなどの崩しが可能になります。

次にはボールホルダーに2つの選択肢を与えるタイプ(上述の2と3)の三者関係でサッカーを理解することに努めます。これが理解できるようになると、サッカー観戦もプレーすることも面白くなってきます。

さらに4人、5人とイメージを膨らませていけば、最終的にはチーム全体でのイメージの共有につながり、さらにサッカーが味わい深いものになっていきます。

一人称分、理解を広げることでサッカーの見方を変えることが出来ます現在Jリーグやアマチュアや高校生、中学生を見ていると、殆どの選手が二人称まででしかサッカーを理解していないと感じます。これは非常に残念なことで、僕としてはもっともっと多くの人により高い戦術眼を身につけて欲しいと感じるのです。

また、次元を上げるということは、「スペースの概念」を理解するとも言い換えられます。 スペースの作り方、見つけ方、使い方をマスターすれば、バルサに入団した久保建英くんのように小学生でも大人顔負けのサッカーが出来ますし、逆に理解が出来なければ、成人でいくらフィジカルに優れていても幼稚園児みたいなサッカーしか出来ません。日本には幼稚園児みたいな選手が溢れ返っていて非常に嘆かわしく感じます。サッカー指導者の皆さん、もっと勉強と仕事に勤しんでください!

こうやって記事を書いていると、物事を多元的に見ることの重要さを再確認させられます。表層しか理解出来ない人は(上記の1まででしかサッカーをプレーできない人)は常に情報弱者で在り続けますし、搾取されづつける存在へと甘んじることになるのです。一人称でしかサッカーをできない人を見て僕はほんとにあの人はアホだなぁと思ってしまうのです。実生活においても深層を見抜けないんだろうなぁと。意識を変えましょう!

今回は断定形で書いてみましたが、間違っているところなどあればコメントを頂けると幸いです。

3 件のコメント:

  1. 顧問の先生が、「ラストパス(スルーパス)を出すときは、その前に一度横パスをしてから出せ。」と言っていたのですが、よく分かりません。どういう意味か教えて下さい。そもそも顧問の先生の言っていることは正しいのでしょうか?

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    1. 概ね正しいです。状況にもよりますが。意味は「横横縦あるいは縦縦横」という記事を見ればわかると思います。一度広げてDFの守備網が開いていく瞬間に縦パスを狙うのがセオリーです。

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  2. 僕はボランチなんですがスルーパスばかりだからFWを休ませろと言われます。
    どうすれば良いでしょうか?

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