footballhack: セスクのドリブル ボールタッチと視野の確保

2011年9月19日

セスクのドリブル ボールタッチと視野の確保

セスク・ファブレガスといえば黄金の87年組と言われたバルサカンテラにおいても一際輝きを放ち、シャビの後継者と目されてはいたが出場機会を求めて16歳でアーセナルに電撃的に移籍し、今年ようやくバルサに戻ることが出来た、バルサ哲学を体現する素晴らしい選手です。

何を隠そう僕がサッカーの研究を始めたのも彼のプレーを見たのがきっかけです。なぜあんなに細身なのにボールを奪われないのかを知りたい、というのが強烈な動機になり、U-17ワールドユースの試合を録画したVHSを一時停止巻き戻しを繰り返し、擦り切れるほど見まくったのでした。

彼の良さは、ボールの扱いが滑らかで自然で柔らかく、それと同時に敵味方の位置をすっかり把握しているような駆け引きができている点にあります。また、相手の裏を突く崩しのパスも上手く、展開力もしっかりしていて、高い戦術眼を備えていることもよく分かります。

それらを可能にしている技術とは一体何であるのか?
それはこのブログのメインテーマである二歩一触です。

二歩一触の基本コンセプトは、ボールの確保と視野の確保を同時に行うことです。



ボールを動かすことでスペースを活用し、間を作り、また敵からボールを守ります。
それと同時に、顔を上げ周りを見渡して周囲の状況を把握します。

しかし、それを実際にやろうとしてみるとなかなか難しいのではないでしょうか。ボールばかり気になってしまい顔が上がらないと、パスを出すタイミングを逃してドリブルを続けてしまったり、敵が見えないので駆け引きができない選手になってしまいます。

反対に顔を上げることを意識しすぎてボールタッチが疎かになってしまうと、コントロールミスをしたり、顔を上げている間にDFに寄せられてしまったり、ボールを体から離し過ぎてフィジカル勝負の競り合いプレーばかり増えてしまいます。

そういったプレーは、視野が狭いと言われたり、判断が遅いと言われる原因になります。

ではセスクはどうのようにボールと視野の確保を同時に実践しているのか。最近発見したのは、彼はボールを触る時に顔を上げ、ボールが体から離れている時にはボールを見ているということです。

普通は逆に教わるのではないでしょうか。ボールを触っていない時に周囲を見て、ボールタッチの時はボールを見ろと。このようにプレーするとボールを晒している時間=考える時間になってしまい、後ろや横から寄せてくる敵にチャレンジさせてしまう隙を与えます。また、ボールタッチの瞬間はボールを注視することになるので、DFの出方をみて逆を取る動きが出来ず、DFからしたら予測しやすいプレーを優先的に選んでしまう結果になります。

セスクのようにボールタッチと視野の確保を行えば、ボールに触れる直前までプレーの変更が可能になりますし、顔を上げすぎてボールの行方を失うこともありません。ボールに触れる時間=考える時間となっているため、常にボールを動かしながら判断を柔軟に変えることができるからです。

ポイントはボールを見る時に、顔を下に向けずに視線だけ落とすように眼球を動かすことです。顔を下げてしまうとDFを牽制できませんし、視野が極端に狭くなってしまいます。眼球だけ動かしてボールを見ることが出来れば、目の端でボールを捉え、同時に周辺視野で前方の状況確認ができます。

今度ここに参考動画を載せたいと思います。

「顔を上げろ」「周りを見ろ」といった言葉主導のコーチングでは、状況に即した視野の確保が習慣付けできません。むしろ、ボールを相手に晒してしまう悪習慣が身についてしまう恐れがあります。時にはボールを見て、いいタイミングで目線を上げて状況を把握することで、間を作り簡単にボールを失わない習慣が醸成されます。視線を細かく上下することで、結果的にボールタッチと視野の確保を同時に実施することになり、それが選手のプレーに水のような滑らかな流れをもたらすのです。

次→2歩1触の練習法 まとめ1

6 件のコメント:

  1. 更新ありがとうございます。以前コメントをさせていただいた者です。僕は、バルサに入団したセスクのどこがよくていいのか、
    全くわからずにいました。しかし、この解説を見て、天下のバルセロナが彼を獲得したこともうなずけます。まさに「シャビの後継者」ですね。僕も、セスクとだいたい同じようなポジションをしています。今度プレーするときは、ちょっと意識してやってみようかと思います。

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  2. K/Iさん
    セスクはまさにパスの名手です。縦パスや横パスを入れるタイミングが非常に良いのが特徴です。また、ひとつ飛ばすパスや二者のランニングの入れ替わりのタイミングを逃さずパスを出せる「目」を持っています。ですから、彼がいつどんなパスを出すのかに注目してみると良いかと思われます。彼はアーセナル時代、裏を狙うのが早過ぎる傾向があったのでバルサでフィットするか疑問だったのですが、ここ最近の数試合を見るとそれも杞憂に終わりそうです。

    セスクは足が早い方ではないのですが、時折見せるドリブルの仕掛けも参考になります。

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  3. アドバイスの方ありがとうございます。
    これからも、僕にとってとても参考になるブログです。
    更新がんばってください!!

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  4.  僕は、ポジションが中盤で、セスクが大好きです。試合などはよく観ますがこんなに熱心に観察したことはありません。
     とても役に立ちます。
     気になったことがあります。こういう一流の選手がやっている2歩1触とかは、皆それぞれ意識して考えてやってることなのでしょうか。それとも無意識にやってる「才能」的なものなのでしょうか。もしセスクやメッシが後者なら、僕はどうすればいいのでしょうか。

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  5. HSさん、コメントありがとうございます。

    トップレベルの選手が意識してるか無意識かというと、無意識にやっていると思います。しかも子供の頃から誰に教わるでもなくこれらのことをやっているようです。

    だからと言って才能がなければサッカーを続ける意味が無いということにはなりません。何でもそうですが、継続すれば必ず上手になれます。ただし、方法を間違えなければ、ですが。

    上手になるには習慣化が大事です。つまり、始めは意識的にやっていたことを、徐々に無意識に出来るようにするということです。一つのことをマスターして無意識に出来るようになれば、今度はもう一つ別のことに挑戦できます。このように、トレーニングによって無意識にできることをどんどん上積みしていき、最終的には一つの動きの中に複数の狙いを持ったプレーが出来るようにします。これがサッカーが上手になるということの真の意味です。

    2歩1触を意識的にやっているレベルでは、脳内の容量がそれだけに食われてしまい、試合中に適切な判断をすることが難しくなります。反復、継続、習慣化によって判断に使える脳の容量を広げてあげます。コンピュータで言うならば、OS のアップデートを繰り返すことで、システムがスムーズに動くように改善しながら、メモリの無駄使いを減らすのです。そうすれば、より高い処理能力を得られます。

    2歩1触は3,4ヶ月くらい特訓すればある程度習得することができます。中学生ならもっと短いかもしれません。そこから先、2歩1触をどのように活かすかが上達の鍵です。

    応援していますので頑張ってください。

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  6. 最高のアドバイスです、ありがとうございます。

    サッカー選手としての先が見えてきました。

    セスクを追い越せるよう特訓します。

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