つまり、ピッチを基準にした絶対的な位置と敵味方との相対性による位置の2つを区別して考えなければなりません。
位置(ポジショニング)を考える場合、以下の3通りに整理すると容易になります。
- ピッチを3分割したゾーン
- ポジション(味方との関係性)
- ポジショニング(敵との関係性)
1 ピッチを3分割したゾーン
これは巷で言われているように、ピッチ全体をアタッキングゾーン(AZ)、ミッドフィールドゾーン(MZ)、ディフェンシブゾーン(DZ)に分けて考えようということです。
AZではとにかくシュートを意識したプレーを選択します。シュート、クロス、味方がワンタッチでシュートを打てるようなパス、これらとドリブルを組み合わせてプレーを構築すれば、間違いはないでしょう。
MZは、考えるべきことが多すぎて一言で言えませんが、基本はリスクとリターンを推し量ってプレーするのが良いです。ボールを失うリスクと、プレー成功で得られるリターンの推量を体感的に覚えるには実践で意識して取り組むしかありません。指導者の力量が最も問われるエリアです。
DZでは、安全なプレーを優先します。ドリブルよりパスを多く使い、ひとつの場所に長くボールを留めないように、次々とボールを動かしていく必要があります。 時にはフリーでパスを受けた際、ボールを持つことで敵をひきつけることも必要です。このエリアでのビルドアップはシンプルな指導で大きな改善を得られるところでもあります。
これらの3つのゾーンでのプレー感覚は16歳くらいまでに会得しておくと、後々の戦術理解度の熟成に一役買います。
2 ポジション別のプレー
ポジション毎に味方との関係性は変わります。つまりは隣接するポジションのチームメイトとの関わり方です。
ここではポゼッションを戦術の軸に構えるチームの、攻撃方向の優先順位を例に示してみます。ここでいうポゼッションとは、ビルドアップからパスを5本以上繋いでフィニッシュに持ち込めるチーム、あるいはそういったサッカーを目指すチームとします。
先ほどの3分割のゾーンに加え、縦に3分割し、合わせて9つのエリアにピッチを分けます。
このとき各ゾーンから優先すべき攻撃方向を赤矢印で、次に優先すべき方向を青矢印で、避けるべき方向を黒矢印とXで、状況次第で良くもなり悪くもなる方向を黒矢印と?で示しました。
すこしごちゃごちゃしてわかりづらいですが、簡単に言うと、ポゼッションサッカーで試合を有利にすすめるには、ボールを中央に集めることが重要になります。中央に集めたボールは次にどの方向へ進めても大概正解なので、あえて矢印は示しませんでしたが、このときはつなぎのセオリーを使うと効果的です。
このように、ピッチ上のどこでボールを受けたかによって、次にプレーすべき方向は自ずと決まってきます。そして、ポジションは選手の動きを規定しますから、ポジションによってプレーの優先順位もおおよそ決まってくるのです。
誤解を招かないようにもう一度書いておきますが、この例はポゼッションサッカーを目指すチームのみに当てはまります。その他の戦術を取るチームとは攻撃の優先方向が全く異なっています。
3 ポジショニングの集と散
ポジショニングについては右のシリーズにまとめてあります。→ポジショニング
周囲を観ることとポジショニングには非常に強い相関性があります。それはポジショニングの取り方で得られる視覚的情報が変わることもそうですが(この辺はポジショニングという技という記事にまとめてあります。)、良い視野を得る理由は良いポジショニングを取ることに尽きるという点にあります。
つまり、良いポジショニングさえ取れれば、次のプレーの決定はボールを止めた後でもよく、したがって、敵を観るのも味方を探すのもボールを持ってからで間に合うということになります。特にシャビのビルドアップ時にはこうしたプレーが多く見受けられます。もちろん味方のパスフェイクや敵のリトリートなど様々な要因が絡むわけですが。
ですから、以前にも書いたように、自分にパスが回ってくる前々段階では、首振りを伴ったポジショニング動作をして、敵と敵の隙間や敵がプレッシャーに来れないような位置に移動することが大事です。首を振る意味の7割はこうしたポジショニングのための視野の確保なのです。当然、良いポジショニングからは良い視野が確保できますから、自ずと良いプレーにつながるのです。
また、「視野の5W1H 対象」に書いたように収束と拡散を感じ取ってプレーすることも大事です。
ポジショニングをしながら、周囲を見渡した時、敵の人口密度を意識することが重要です。
人口密度が高ければ、少ないタッチでのプレーを心掛け、なるべく遠くのフリーで待つ味方にボールを渡すようにします。例えばワンタッチパスを囮にしたファーストタッチでの抜け出しなんかも効きます。
人口密度が低ければ、しっかりとボールを落ち着け、近接した味方と連携して近くから崩していきます。サイドからのドリブルの仕掛けや、中央でのワンツー崩しなどがこれに相当します。
まとめ
これら3つのセオリーから言えることはなにか?それはボールを受ける「位置」によってプレーの優先順位が決定するということです。そしてこれはつまり、ボールを受ける前に観るべき方向や対象を規定することを意味します。
始めから観るべき方向や対象が決まっていれば、その他の余計な情報を頭に入れる必要はなく、本当に重要な情報だけ整理して考えることが出来るようになるので、考えるスピードが上がります。
「首を振れ」「速く考えろ」といったコーチングの真の意味は、“ポジショニングによって導きだされるプレーの優先順位に則ってプレーすること”なのです。(加えてこれらの優先順位をフェイクとして使うことでプレーの幅は広がっていきます)
次→観る9 視野の5W1H 方法
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