今回からいい視野を確保するために5W1H方式で観ることについて考えていきます。そんなことをいちいち言わなくてもセンスのいい選手は自然に観えているわけなんですが、ここからの話は下手な選手や指導者向けと考えてください。
「見ろ」とか「首を振れ」とか「顔を上げろ」とか言ったところで、選手自身が何を見たらいいのか、何の情報を得たいのか分かってなければ、ピッチ上のパフォーマンスを上げることは出来ません。 顔を上げて頭の中に“画を入れた”からといって、次の展開のイメージが出来なければ、良い判断につながるとは限らないんですね。これは顔を上げてるのに観えてない状態です。
観るという行為において一番重要なのはやはりイメージ力であり先読みする能力であり、総じて戦術眼ということになってしまうのです。このように複雑な事象を一言で言い表せる言葉はとっても便利なんですが、無知な少年少女に対しては説明の役に立たない謎の言葉です。
ということで、指導者としては何を見たらいいのかという問題について明確な回答を持っていなければなりません。今回はその回答になりうる考え方を5W1H方式に沿って考えていきます。
■5W1H
5W1Hとは(いちいち説明するのも野暮ですが)
いつ
何を
だれが
どこで
なぜ
どうやって
の6項目を簡潔にまとめることで起こった出来事を正確に伝える作文技法です。
サッカーの視野の確保を考える上で上の項目を少しアレンジします。
いつ(タイミング)
何を(対象)
どこを(方向)
誰と(協調)
どこで(ポジショニング)
なぜ(動機)
どうやって(方法)
上記の7項目に沿って考えます。
■いつ見るか
いい視野の確保実現するために最も重要な意識は、いつ(タイミング)、どこを(方向)見るかです。この二つがきちんとできれば、良い判断をするための準備は自ずと身についていくはずです。どこを見るか知ることはサッカーを知らないと出来ません。戦術眼を身につけるために長い時間を要します。いつ見るかということはトレーニングで明日からでも意識付け出来ます。よって個人的に一番重要視しているのがこの観るタイミングです。
周囲を観るということは一時的にボールから目を離すということです。サッカーではボールの行方
が一番重要ですから、ボール周辺の攻防から目を離すことはリスクを伴います。このリスクが少ないタイミングを見極めることが最初のステップになります。なるべくボールの行方を見失う可能性を軽減した状態で周りを見ればいいということです。
ボールの行方が確実に予想できるタイミングというのはボールの移動中です。基本的には選手間をボールが移動している間に首を振ればよいということになります。突風の吹き荒れる日や荒れた土のグラウンドではそうはいきませんが。 選手間のパス、ロングボールの滞空中、自分から離れた位置でのルーズボールなど、選手がボールに触れていない時間にボールが勝手に進路を変えることはありません。
また、ボールの行方が確実に予想できるタイミングとして、ゲームが安定している状態が挙げられます。ゲームの安定不安定についてはこちらの記事をどうぞ↓
マクロつなぎ論 安定不安定その1
マクロつなぎ論 安定不安定その2
味方あるいは敵がボールを確保していて、攻守の切り替えが起こらないと予測できる時や、しばらくはボールホルダーがボールを離さないと判断できるときも、首を振るタイミングと言えます。
実戦を考えます。左の図のように3人の選手がパス交換をして、A→B→Cとボールが渡るとします。この時、自分がCの選手だと仮定します。
Cまでボールが渡る間に、Cが首を振って周りを観るタイミングは3回あります。
こう言うと語弊がありますが、プレー(判断)の決定はできるだけ遅らせたほうがいいです。言い換えるならば、プレーの決定は直前まで変えられるようにすることが理想です。なぜなら、敵に自分のプレーを先読みされた場合、攻撃が成功しないからです。そのためには敵の出方を伺う必要があります。ですから、③の時に得られる情報が一番ホットであり、価値があるのです。
■②や①の時の首振りは③の首振りの準備の為に行われるべき
この時に見つけたフリーの味方は、自分にボールが回ってくる間にマークに憑かれてしまうことを頭に入れなければなりません。よくある事例として、指導者が早い判断を選手に促すが故に、選手に早い段階でフリーの味方を見つけなければという強迫観念を植えつけてしまうことがあります。ボールの移動中に選手達はポジションを修正していることを考えれば、早過ぎる情報収集がまったく役に立たないことはわかるはずです。こういった指導者主導、言葉主導のコーチングが盲目パスをする選手や判断が悪く先読みできない選手を増産することになります。憂うべき事態です。
まとめですが、①で重要なのはポジショニングと体の向きを整えることであり、次の段階として望ましいのは、このとき入った”画”から3秒後の世界を想像することです。
この時考えるべきは、③の時にどこを観るか決めることです。プレー方向をこの段階である程度固めておきます。③の時に良い情報を得るために、③の時には見ないであろう方向を確認する場合と③で子細に状況を見極めるために同じ方向を見る場合と2通りあります。
以上説明した通りに、ボールを受けるまでに最低3回の首振りが出来ていれば、かなり余裕を持ってプレーできることは請け合いですし、ボールを奪われる可能性も低くなります。
いずれにしても事前の首振り次第でボールを受ける直前の首振りで得られる情報の密度が変わることを考慮にいれるべきです。そして、直近の味方がボールを持っている時やボールを受ける直前の首振りが最も重要なのです。
次→観る4 視野確保の5W1H 方向
5W1Hとは(いちいち説明するのも野暮ですが)
いつ
何を
だれが
どこで
なぜ
どうやって
の6項目を簡潔にまとめることで起こった出来事を正確に伝える作文技法です。
サッカーの視野の確保を考える上で上の項目を少しアレンジします。
いつ(タイミング)
何を(対象)
どこを(方向)
誰と(協調)
どこで(ポジショニング)
なぜ(動機)
どうやって(方法)
上記の7項目に沿って考えます。
■いつ見るか
いい視野の確保実現するために最も重要な意識は、いつ(タイミング)、どこを(方向)見るかです。この二つがきちんとできれば、良い判断をするための準備は自ずと身についていくはずです。どこを見るか知ることはサッカーを知らないと出来ません。戦術眼を身につけるために長い時間を要します。いつ見るかということはトレーニングで明日からでも意識付け出来ます。よって個人的に一番重要視しているのがこの観るタイミングです。
周囲を観るということは一時的にボールから目を離すということです。サッカーではボールの行方
が一番重要ですから、ボール周辺の攻防から目を離すことはリスクを伴います。このリスクが少ないタイミングを見極めることが最初のステップになります。なるべくボールの行方を見失う可能性を軽減した状態で周りを見ればいいということです。
ボールの行方が確実に予想できるタイミングというのはボールの移動中です。基本的には選手間をボールが移動している間に首を振ればよいということになります。突風の吹き荒れる日や荒れた土のグラウンドではそうはいきませんが。 選手間のパス、ロングボールの滞空中、自分から離れた位置でのルーズボールなど、選手がボールに触れていない時間にボールが勝手に進路を変えることはありません。
また、ボールの行方が確実に予想できるタイミングとして、ゲームが安定している状態が挙げられます。ゲームの安定不安定についてはこちらの記事をどうぞ↓
マクロつなぎ論 安定不安定その1
マクロつなぎ論 安定不安定その2
○ボールが来る前に3回観る
実戦を考えます。左の図のように3人の選手がパス交換をして、A→B→Cとボールが渡るとします。この時、自分がCの選手だと仮定します。
Cまでボールが渡る間に、Cが首を振って周りを観るタイミングは3回あります。
①A→Bへのパス中
②Bがトラップした瞬間
③B→C(自分)へのパス中
③BからC(自分)へボールが移動中
このなかで最も重要なのが③の時です。なぜなら、Cは次に良いプレーをするために正しい方向にプレーすべきで、そのためには正しい向きにトラップ(あるいはパス)をしなければならないからです。③の時の首振りで得られる情報は時間的に直近であり、次の一手を探る最も重要な手掛かりになります。こう言うと語弊がありますが、プレー(判断)の決定はできるだけ遅らせたほうがいいです。言い換えるならば、プレーの決定は直前まで変えられるようにすることが理想です。なぜなら、敵に自分のプレーを先読みされた場合、攻撃が成功しないからです。そのためには敵の出方を伺う必要があります。ですから、③の時に得られる情報が一番ホットであり、価値があるのです。
■②や①の時の首振りは③の首振りの準備の為に行われるべき
①AからBヘボールが移動中
この時すでにC(自分)にパスが回ってくるとういう予測ができるので、いいポジションを取れるように準備しながら、ざっと周りを見渡します。自分がどこにいるか、敵味方のおおよその配置などを見える範囲で見渡します。この時はすぐに自分にボールが来る状況ではないので、かなり余裕を持って周りを観ることが出来るでしょう。この時に見つけたフリーの味方は、自分にボールが回ってくる間にマークに憑かれてしまうことを頭に入れなければなりません。よくある事例として、指導者が早い判断を選手に促すが故に、選手に早い段階でフリーの味方を見つけなければという強迫観念を植えつけてしまうことがあります。ボールの移動中に選手達はポジションを修正していることを考えれば、早過ぎる情報収集がまったく役に立たないことはわかるはずです。こういった指導者主導、言葉主導のコーチングが盲目パスをする選手や判断が悪く先読みできない選手を増産することになります。憂うべき事態です。
まとめですが、①で重要なのはポジショニングと体の向きを整えることであり、次の段階として望ましいのは、このとき入った”画”から3秒後の世界を想像することです。
②Bがトラップした瞬間
もしBがワンタッチでパスを送ってきたらこのタイミングで観ることは出来ませんが、大抵は2タッチ3タッチでプレーをするので、②のタイミングで首を振る習慣をつけることは価値があると言えます。この時考えるべきは、③の時にどこを観るか決めることです。プレー方向をこの段階である程度固めておきます。③の時に良い情報を得るために、③の時には見ないであろう方向を確認する場合と③で子細に状況を見極めるために同じ方向を見る場合と2通りあります。
以上説明した通りに、ボールを受けるまでに最低3回の首振りが出来ていれば、かなり余裕を持ってプレーできることは請け合いですし、ボールを奪われる可能性も低くなります。
いずれにしても事前の首振り次第でボールを受ける直前の首振りで得られる情報の密度が変わることを考慮にいれるべきです。そして、直近の味方がボールを持っている時やボールを受ける直前の首振りが最も重要なのです。
次→観る4 視野確保の5W1H 方向
コメントします。
返信削除上の記事の続きが早くすごくきになります。また更新よろしくお願いします。このブログはすごく分かりやすく、いつも見てます。
@あせゆさん 申し訳ありません。一ヶ月以内に書きます。それまで、ご自身でいろいろ考えて、記事が上がった時に答え合わせのようなものをやって頂けると嬉しいです。
返信削除はじめまして。いつも見てます。
返信削除サッカー選手(プロ)はどこのポジションの誰でもこの「5W1H」が出来ているのでしょうか?(キーパーは除く)
@ラームさん 殆どの選手は出来ています。ただし意識はしていません。意識しなければできないレベルならプロにはなれませんから。5W1Hとはひとつの指針だと思ってください。
返信削除いつも更新お疲れ様です。
返信削除一つ気になったことなのですが、バルサの選手はあれだけ高いレベルでサッカーをしているので、当然この「5W1H」はできていると思います。前にTVでバルサの試合がやっていたので、シャビだけを見ていました。(普通はボールを見ると思います)すると、やはりサイドステップと後ろ走り(バックステップ)とスキップを上手く使っていました。それにボールをもらう前に首を振って周囲をしっかり見ていました。
これらの事はシャビ以外の選手もやっているのだろうと見たところ、あのイニエスタやブスケツでさえ首を振っていませんでした。サイドステップやバックステップはしっかり使っていたのですが、シャビのように首は振らず、たまに首を振る程度でした。では、なぜバルサの選手は首を振っていないのにあれほど周りが見えているのでしょう?
@バルサさん 非常に良い質問ですね。なぜ周りを見ずにプレーできるかというと、プレーイメージをしっかり持っているからです。プレーイメージとは敵の行動の予測です。つまり、「こういう風にボールが動いて来たら、敵はこう動くだろうから、こっちにプレーすれば逆をとれる」などといった思考のパターンです。これらパターンのいくつかは、「つなぎ論」というシリーズで紹介しているので見てみてください。
削除バルサは普段の練習からロンドやポゼッションゲームを頻繁に行なっていると聞きます。こうしたトレーニングのなかで、自然にプレーイメージを磨いているのです。したがって、首を振らなくても敵の動きが頭の中で手に取るように分かっているのだと思います。極論を恐れず言うならば、的確なプレーイメージを持ってさえいれば、周りを見ずとも良い判断を下せるのです。
このような鋭い質問があればまたお寄せ下さい。
ご返答ありがとうございます。
返信削除敵の動きというのはイメージで分かるという所にはよく分かりました。ご丁寧にありがとうございます。でも味方の位置や動きは首を振って見ないと、イメージだけでは分からないと思うのですが?
イメージしてその上で首を振るというのがベストですね。イニエスタやブスケツが首を振っていないシーンというのは特に気にかけて見たことが無いのでわかりかねますが、これからは気をつけて観察してみようと思います。
削除上の記事の首を振るタイミングについて、
返信削除①A→Bへのパス中にポジショニングと体の向きを整え、「ミクロつなぎ論」に書いてあるように、“横パスが多いから縦を見よう”だったり、“左からパスが来ているから右を見よう”という風に、パスの流れを見る。
②Bがトラップした瞬間に、①で見ると決めた方向にいる敵のベクトル(重心)やスペースを見る
③B→C(自分)へのパス中に、最終的にどこにパスを出すかを決める
何か間違っている所などありましたら教えて下さい。
よく整理されていますね。基本的には概ねそれで良いでしょう。
削除②から③にかけては、後方の死角から迫る敵を見つけることを忘れないで下さい。敵の接近具合によってファーストタッチが決まります。また、トラップかドリブルかダイレクトパスかという判断も周囲の敵の密集度合いによって決まってきます。
上記のことを意識しながら練習に取り組み、無意識にできるように鍛錬してください。数ヵ月後、視野の確保が習慣化された時に、新たな問題が発生したらまたコメントを頂けると嬉しいです。
追記ですが、②から③にかけて観た画の情報を元に、スペースの生成をイメージ化することが、戦術眼向上のためには不可欠です。そのへんは「視野確保の5W1H 対象」に書いたのでご参考までに。
削除これはプロの試合でボランチの選手にたまに見られるのですが、上の記事の③のタイミングでは、‘得られる情報が一番ホットであり、価値があるのです’と書いてあります。そもそもサッカーではバックパスより前へのパスのほうがいいにきまっています。(ちなみにボランチの選手はフリーでした)そうなると、③のタイミングで後ろを見ることは損したことになりますよね。それなのにプロの試合でボランチの選手の何人かは③のタイミングで後ろを向いていました。これはなぜでしょうか?
返信削除損じゃ無く得しています。理由は方向の項に書いてあります。
削除ただ、これはわざわざ③のタイミングで見なくても、①や②のタイミングに見て、③の時に前方を見た方が効率がいいと思うのですが。
削除③で見るからこそ意味があるのです。優先すべきは敵を見つけることです。プロの選手はボールを受ける前に次のプレーを”決めて”はいません。受ける時に後ろを向いて自分が安全か確認できたら、いくつかのビジョンから最適なものを選ぶのです。始めから前へ行こうと”決めつけて”プレーすることは必ずしも最善ではありません。
削除もしかしたら③の時に前にフリーの選手がいるかも知れません。その可能性があることを考えると、やはり後ろを見るのはよくないと思います。
削除ではあなたがそう考えるなら、そのようにプレーするとよいでしょう。でもいつか壁にぶち当たると思います。そのときはここに書いてあることを思い出して頂けたら良いと思います。
削除