footballhack: つなぎ論 番外 バルサのつなぎを解説

2010年8月27日

つなぎ論 番外 バルサのつなぎを解説

FCバルセロナのパスワークって他のチームとぜんぜん違って見えますよね。他のチームはボールの受け手がみなマークされた状態でボールを待っているのに、バルサの選手たちは何の苦労もなくみんなフリーでボールを受けています。せめて、マーカーを振り切る速い走りをしていたら納得するのですが、まるでマジックのようです。これはなぜだか考えて見ましょう。

バルサのつなぎを見ていると一つの大きな特徴があります。地球上のバルサ以外のすべてのサッカーチームがしているのに、バルサだけがしていないことです。

なんとバルサは

ビルドアップ時にサイドバックにボールを触らせません

びっくりしますよね。だって、普通は、サイドバックのポジションはプレッシャーがかかりづらいしスペースが空いているので優先的にボールを回し、ビルドアップの基点として考えられています。

しかしバルセロナではサイドバックがボールを触るのはハーフラインを超えてからです。サイドバックの攻撃の役割は敵陣に進入してクロスをあげることのみ、非常にシンプルになっています。

なぜか。それは自陣でボールを持ったサイドバックからのパスコースは限定されやすいからです。サイドバックからボールを受けるボランチの選手はたいてい厳しいマークにあいますし、斜めに流れて縦パスを受けたFWはたいていDFを背負ってしまいます。サイドバックはタッチラインを背にしてプレーするという事実の負の側面だけが浮き彫りになってしまうのです。

いくらバルサでもサイドバックが自陣でボールを持ったときはビルドアップに苦労しています。

↑(CBのアビダルがボールを持ってタッチライン際まで張り出したとき、パスコースが後ろしかない。この後斜め前に楔のパスを狙ってカットされる)

ではここで、図を使ってバルサのビルドアップを説明していきます。
↓を見てください


これがバルサの基本フォーメーションです。この時点ではボランチ(セルヒオブスケツ)以外はみなぴたりと敵にマークされています。いや敢えてマークさせているのです。サイドバックは高い位置をとり、ウィングはぴったりライン際に張りつき、ただ立ってボールが来るのを待ちます。そうすることで敵の陣形を横に引き伸ばすことができます。もちろんピケ選手の精度の高いキックがあってこその配置ということをわすれてはなりません。



次にセンターバックは30~40mほど間をとって開き、その間にボランチが入って、3人でボールを回します。相手FWは2人なので数的優位を作ります。このとき大事なのは安易にサイドバックにパスしないことです。かならず中盤の選手を見つけてボランチなどにボールを渡します。



そして3人のうちだれかがボールを前に持ち出しFW2人を置き去りにします。ここではボランチがドリブルしたことにします。このタイミングで中盤の2人(シャビ・イニエスタ)とトップ(メッシ)が動き出します。サイドステップや後ろ走りを使ってプルアウェイをするように、敵数人のちょうど中間地点に位置取りをします。(考えて走る サイドステップと後ろ走り



敵のうち一人はボランチにマークに行かなければならないので、パスコースが必ず3つ以上できます。このときはなるべく上記の3人にボールを渡します。ボールが渡ったときには、マジックのようにフリーで受けることができます。

これでゾーンを上げられるので、サイドバックの攻撃参加も可能になります。

もう一例。こういうパターンもよくあります。










ボランチがボールを持った瞬間に、中盤二人がバイタルへ侵入していく動きです。サッカー解説者山本昌邦さんのいう“3人のDFの重心に入る”ポジションどりはボールを受けるだけではなく、ボール保持者に新たなパスコースを提供する効果もあります。(このシーンではウィングへのパスコースを作っている)

この展開ではウィングにボールが渡りました。ここからウィングはボールをはたいて中に絞ることで、サイドバックが上がるスペースを作れます。→考えて走る5 サイドの使い方

次は→つなぎ論 番外 バルサと日本のつなぎの違い

2 件のコメント:

  1. 2回目の投稿になります。
    上の記事に書いてある通り、バルサはブスケツが降りてきて、ブスケツとピケとプジーの3人で回しているというのがよく分かります。質問ですが、日本人【日本のチーム】は4バックがほとんどなので、僕もよくサイドバックをするので、ボールを受けるといつもワンサイドカットされます。正対するとまだましですが、やはりパスコースが全然ないです。そこで、ボールを受けたらどういう意識をしたら、いい縦パスを通したりできますか?

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  2. @インサイドさん サイドバックのパスコースについて一般的に言うと、まずはボランチへの横パスです。次にひとつ飛ばすパスで遠いサイドのボランチへパスを狙います。なるべくはやくサイドから中央へボールを戻してあげることを心がけてください。サイドバックから縦パスを狙うことは、往々にして窮屈な攻撃になりやすいので、絶対に通るという確信がない限り避けたほうが良いです。

    サイドバックはなるべく高く位置取るのが基本で、自陣深くでボールを持つべきではありません。ですから、そういう状況でサイドバックにパスを出すこと自体が間違っています。とはいっても中高生年代ではキック力が十分でなく、そのような状況に追い込まれることも多々あると思います。そんなときは迷わず「蹴り」です。パスコースがない=敵が前からプレッシャーに来ている、ということは裏にければスペースがあるということです。30~40Mくらいワンステップで蹴れるように練習してください。ちなみに明日開催のクラシコでも「蹴り」の応酬が見られるかもしれません。

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