footballhack: つなぎ論 番外2 バルサと日本の違い

2010年8月27日

つなぎ論 番外2 バルサと日本の違い

バルセロナのつなぎは前回説明したとおり、サイドバックではなくセンターバックとボランチを基点にして、中盤の選手がサイドステップと後ろ走りでボールを引き出してゾーンをあげていく方法をとっています。

では日本においてつなぎの定石といえばどういうものでしょうか。いくつか特徴を挙げると

1 最終ラインで横にボールをつないで、サイドバックを起点にする

2 サイドバックからボランチへ横パスを入れる 

3 最終ラインもしくはボランチから前線の選手にくさびのパスを入れる

4 ポストプレーの落しから中盤の選手が前を向いてプレーする

5 くさびのパスが入った瞬間にスピードアップする

といったところでしょうか。

まず、1のサイドバックが起点になることですが、前回も書いたとおりサイドバックがボールを持つと相手チームにとってプレッシャーをかけやすい状況が生まれます。ワンサイドカット(中へのパスコースを切って外に追いやる)がしやすくなります。なので、サイドバックが起点になる攻めというのは、攻撃の幅を狭めて、自分たちで自分たちの首を絞めることとおなじなのです。

2のボランチへの横パスですが、ここにパスが通れば落ち着いてゾーンをあげて攻めることができるのですが、組織的に守備をするチームを相手にすると、ボランチのところにものすごいプレッシャーが来ます。なので、パスが通ったとしてもボランチの選手がボールロストしてしまうことが多く、ショートカウンターを喰らってしまうのです。

ユース年代の指導者は、中盤の選手が横パスを受けることを怖がったり、ボールロストするのを責めますが、これは当たり前のことなのです。わざわざ相手の守備の網にかかるようにつないでいるわけですから。ちょうどボランチやサイドバックがその犠牲になってしまうので、とてもかわいそうな役回りだといえます。

3のくさびのパスですが、これも日本ではおかしな指導論が展開されてます。長いパスは途中でカットされる確率が高くなるだとかいう話は論外にしても、くさびを受けるFWはチェックの動きでマーカーをはずさないといけないというのは常識にさえなっています。

この方法だと、出し手と受け手のタイミングが寸分の狂いなく噛み合わないとつながりません。もしくは身体能力が非常にすぐれたポストプレーヤーがいなければなりません。これでは、敵のレベルによってくさびのパスの成功率が五分五分くらいまで低下します。ビルドアップというのはアタッキングサードまで安全にボールを運べる確率が7割以上あるべきなのにもかかわらず。

4と5も日本の特徴ですね。この部分が日本のサッカーが“速い”といわれる所以でしょう。くさびのパスが入ると、周囲の選手はポストプレーヤーからボールを受けるべく、走る速度を増して、ボール周辺に集まります。敵チームの中盤を置き去りにする必要があるからです。

この結果ボールの周辺の人口密度が一気に高まり、攻撃全体が縦に長くなります。横への展開の可能性が徐々になくなり、同サイドに固執する傾向が生まれます。また、敵の選手も集まってくるので、狭い地域に囲い込まれる格好になり、パスの成功率が低下します。

ここを突破できればチャンスが生まれ、奪われれば逆襲をくらう、まさにぎりぎりの戦いに自ら持ち込んでいるのです。日本人が信じるつなぎは、自らをボールロストの方向に導く自滅行為に等しいのです。

何度も言いますがビルドアップには確実さが一番重要です。

この日本のつなぎ方の一番のポイントは、確実なポストプレーができるFWの存在です。ポストプレーが100%うまくいくならなんら問題ありません。しかし、ここが潰されれば、確実なビルドアップは保証されません。

代表レベルの試合で、Jや育成年代で長年培ってきたプレーが見られないは、世界の舞台で通用するポストプレーヤーが日本にはいないためなのです。

確実にボールを前に運ぶ手段を失った日本代表が、守備を固める戦略にでるのはとても納得がいきます。あと10年くらいはあの守備重視の戦略で戦ってほしいものです。



次は→つなぎ論 番外 バルサのつなぎを封じるには

関連記事→バルサと日本のつなぎのイメージ差

0 件のコメント:

コメントを投稿