footballhack: ボディコンタクト5 エジルの並走からシュートまでの持ち込み

2011年12月20日

ボディコンタクト5 エジルの並走からシュートまでの持ち込み

サッカーにおけるボディコンタクトで重要なことは以前書いたように、接触とボールへのプレーを同時に行うことです。先に当たり、弾け、ボールを確保する、この3つを淀みなく行えれば、競り合いに勝つことができます。

今回はメスト・エジルのプレーからDFとの並走状態からシュートまで持っていくボディコンタクトの技術を紹介します。

ではまず、動画を↓問題のプレーは4:19から。






ミュラーのヘディングの落としを受けて裏に抜けたエジルはファーストタッチを大きく取り、加速に入りました。

左の写真はファーストタッチ後、右後方からDFが近づいてくる様子を捉えています。

黄色のバツ印はエジルが次にボールに触れる地点を示しています。そこへ向けて、エジル、DF共に全速力で駆け込みます。
ツータッチ目。DFと接触しながらボールタッチしています。

この時エジルは黒矢印の指すゴール正面ではなく、少し斜め外側に進路を取ります。

理由は赤矢印の示す相手DFの力を利用して更に加速し、DFから離れる為です。

もしまっすぐにゴールに向かっていたら、DFともつれ合うようになるか、ファールを受けてチャンスを逸してしまいます。

DFの走る方向(=接触時の力が伝わるベクトル)と同じ方向にボールをコントロールしたことで、相手と距離を取りながらシュート体勢に持ち込んでいます。










別の角度から見てみましょう。

右後方から敵がやってきます。
エジルは右腕を伸ばして、敵の位置を確認しています。

ここから右腕の伸展と曲折(黄色線)、それから体全体の収縮と伸展に注目してみてみましょう。
接触の直前、右腕を曲げています。また、これはボールタッチ直前の様子でもあります。

エジルは膝を軽く曲げ、猫背になりながら、加速と跳躍の準備姿勢を作っています。
ボールタッチの瞬間。

右腕が伸びきり、 左足も伸びています。背骨もまっすぐに立ち上がり、胸をはっています。
このことから、エジルは右手でDFを強く押した事がわかります。

ゴールネットを基準に見れば、顔の位置が先ほどの画像より高いのがよく分かります。

そして跳躍。加速しDFを置き去りにします。

DFはシュートブロックを目論んだのかスライディングを試みたのかはっきりしませんが、ボールにアタックしに行ったのは間違いなさそうです。高速での並走中は一歩の誤りが生死を分けます。

左のように、タックルをかわされたDFは必然的にバランスを崩すことになり、再加速に余計な時間がかかるので、置き去りにされてしまうのです。


以上のことから、エジルはボディコンタクトの際、当たって弾け、加速し敵と離れてプレーする習慣があることが分かります。 更に、当たる瞬間にボールタッチするため、DFに隙を与えません。また、当たった後、自分の体が弾かれる方向へボールを導くので次のプレーに素早く繋げられます。

ボールを無視して相手を弾き飛ばすように接触する習慣がある選手にはできない芸当です。日本人の多くがボールを守るために相手とボールの間に体を入れろと教わりますが、そういった指導が助長するのは相手を力で弾き返すプレーです。更に悪いことに相手に押されてボールを失った選手に対して、「ボディバランスが悪い」とか「当たり負けしなくなるように筋トレして体幹を鍛えろ」とかいった助言がされます。

どんなに力の強い人でも押されれば重心が動きます。重心が動くということは体が移動するということなのです。 ですから、力の伝達を利用し、体が移動することを前提としたプレー体系を構築できなければ、ほんとうの意味でボディコンタクトに強くなることはできないと考えています。

まぁこのシーンではDFの対応が悪かったということも出来ますが、それを差し引いてもエジルの体の使い方には脱帽です。

おまけ

シュートの瞬間の画像ですが、何がすごいって、かかとの位置がこんなに高くまで上がるのかって驚いてしまいました。

やはりシュートは股関節の柔軟性が大事なんだなと最確認させられる写真です。特に股関節を前後に開く柔軟性ですね。







次→ボディコンタクト6 並走時に利き足側から敵が来たら

6 件のコメント:

  1. コメントします。
    エジルが上の記事で使っている作用と反作用の力は、敵を手で押した後、つまり、0から100まで急激に速度を上げています。こういうのはどの筋肉をつかっているのですか?また、0から100に急激に持っていくトレーニングはあるのですか?

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  2. とても参考になります。最近息子は、前にいる選手を抜ききった後サイドからつめて来た相手選手をどうさばくかに問題がありました。よく見せて、よく説明したいと思います。

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  3. コメントします。
    エジルが上の記事で使っている作用と反作用の力は、敵を手で押した後、つまり、0から100まで急激に速度を上げています。こういうのはどの筋肉をつかっているのですか?また、0から100に急激に持っていくトレーニングはあるのですか?

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  4. @ろんどさん 60から90くらいのイメージです。筋肉ではありません。個人ではトレーニングできません。他人の力を借りる練習をしてください。

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  5. 中学生です。
    質問ですが、上の記事の最後の「おまけ」で、エジルがシュートを打つ前のシーンの写真が一枚あります。股関節が柔らかい(足を前後に開く柔軟性)とシュートにおいて有利というのは分かったのですが、どういうストレッチをすれば足を前後に開く柔軟性を高めれるのでしょうか?
    また、エジルはシュートを打つとき、ひざ下をすごく振っています。ぼくもひざ下を振ることを意識してシュートを打つのですが、意識しすぎて逆に強く蹴れません。何かコツみたいなのがあったら教えて下さい。

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  6. キック力向上のためのトレーニングについてちょこっと書いてみますのでしばしお待ちを。

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