居抜きパスは以前見た『ひとつ飛ばすパス』と『背中でスペースを作る』を組み合わせた崩しの形で、崩し以外の場面でも頻繁に見ることができます。
『居抜き』とは将棋用語で、飛車や角など遠くに利く駒の利き筋に居る自分の駒を一つ動かす(抜く)ことで、利き筋を伸ばした駒と動かした駒で両取りを狙う形のことです。ではサッカーにおいて居抜きを使うとどうなるのか。早速、図解で説明してみましょう。
ボールホルダーに対して味方が2人一直線上に並ぶようにポジションを取るところから始まります。
そこから、中間にいる選手が直線上から抜けるように動き出します。
するとパスコースが空き、奥の選手へパスが通るようになります。
中間の選手はマーカーを引き連れてパスコースを空けるイメージを持ちます。
中間の選手のマーカーは当然ついていきます。
また、端の選手は中間の選手が動き出すのを見て、パスコースが空くのを確認し、パスを受ける準備を開始します。
端の選手のマーカーは中間の選手がダイナミックな動きで裏をとるのを見ると、どうしても意識が引きつけられてしまい、カバーと自分のマークの2択に悩まされます。
中間の選手と入れ違いざまにパスを通すと、端のDFはそのパスを予測することが困難になります。
では実践例で見てみましょう。
先のミッドウィーク開催のリーガエスパニョーラ第5節、バルセロナ対バレンシア戦からです。この試合後半以下のようなプレーがありました。
バルサがバレンシアを相手陣に押し込んだ形から、シャビが右後方のDアウベスにパスを戻します。
この時の選手配置は左の通りで、バレンシアは十分に守備の組織を整えています。
アウベスにボールが入った時、チアゴとメッシは一直線に並びました。ここから、チアゴがダイアゴナルランで裏抜けを図ります。
すると、バレンシアのセンターバック一枚はチアゴの走るスペースへカバーに入ろうとします。
チアゴが『抜け』たため、メッシへのパスコースが空きました。
また、この時アウベスはチアゴへのパスフェイクを使っているため、バレンシアのボランチ(バネガ?)が向かって右(バネガから見て左)に釣られているのが分かります。
アウベスは蹴る瞬間、ひざ下の角度を変えて、バネガの逆をとっているため、パスカットされづらくなります。
チアゴが空けたスペースを通して見事にスルーパスが通りました。
チアゴのマーカーは完全に出し抜かれ、カバーリングも手遅れなポジションに取り残されてしまいました。
また、メッシのマーカーはなんとか付いているもの一歩分遅れています。これは彼がチアゴへのパスを予測していたため一瞬油断したせいだと思われます。本来なら上の2個目の画像の時により中央へ絞ってメッシを注意深くマークするべきでした。
上の画像は以下の動画(7:50)から抜き取りました。多分下の動画はすぐ消されてしまうので、見れる人は早めに見てみてください。
5:46からはメッシの正対(間の作り方)からひとつ飛ばすパスで華麗に崩すシーンをご覧頂けます。チアゴが囮になっているのを見抜けたでしょうか?
次→崩し論まとめ 三種の崩し
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