崩すということを考えた時に、その方法はパスかドリブルかということになります。ドリブルについては「ドリブル方法論シリーズ」などで取り上げていますので、ここではパスで相手守備陣を崩すことについて考えます。
パスでの崩しを試みる場合、二つの考え方があります。一つは相手を騙すということ。もう一つは予測されていても絶対に相手の届かないスペースへボールを運ぶということです。
崩しの理想の形は守備者に対して2択を迫ることです。2つの選択肢を常に持っていれば、相手は両方を同時に防ぐことができません。ですから、相手の反応をみて逆を取れば相手を騙すことができます。2択×2択×2択・・・というようにパスを繋ぐごとに選択肢を掛け算するイメージです。すると最終的にパスの本数をnとしたとき2のn乗本だけ、崩しの道筋を仮想することができます。パスが繋がれば繋がるほど受け手に余裕を与えることが理想です。
このようなイメージで崩しを捉えると、その道程が曲線的になってきます。プラジル、アルゼンチン、スペイン代表の攻撃のように。個々の駆け引きの積み重ねが、ひいては守備の集団意識の裏をかくことになるのです。
では逆に、予測されていても絶対に相手の届かないスペースへボールを運ぶということはどういうことでしょう。
それは、「ここしかないというタイミングでここしかないというパスコース」を狙い続けることです。このような崩しは守備陣に読まれやすいため、攻撃側はよりスピーディなプレーを求められます。結果、このような崩しは性急な印象を与えます。速くプレーしなければならないため、焦りが余計な緊張を生みミスを誘発させます。また、チーム全体の重心が前方に傾くため、丁度カウンターパンチを食らうように、ボールを奪われた後の切り替えが遅くなります。
これを直線的な崩しと呼んでいます。 「ここしかない」という判断は、連続的に1つの選択肢を繋ぐことと同義ですので、すると崩しの道筋は1本の直線になります。直線的な崩しはより高いフィジカルレベルを要求します。また、どんなにうまい選手でもミスを誘発してしまう環境(プレッシャー)を生み出します。囲まれやすいということです。
俗に言う第三の動きは直線的な崩しの典型例です。3人がパスの道筋を共有し、一つの定形のように動きます。凝り固まったパターンは相手にも予測されやすいので、上手くいきそうに見えても最後のところでDFに体を寄せられるシーンをよく目にします。決まればかっこいいんですけどね。
連動性といえば即座に三人目の動きという言葉が出てくる印象を受けるんですが、第三の動きだけが連動性のある攻撃を指すのではありません。「スペースは背中で作る」で見たように一本のパスに2人が反応する形、つまりコンビネーションランで崩す形こそが真の連動性であり、美しいサッカーに必要な曲線的な崩しなのです。
他にも崩し方はいろいろあるので次回はそれらを見ていきます。
次→崩し論1 形、イメージ
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