footballhack: プレーエリアと戦術眼

2011年2月5日

プレーエリアと戦術眼

先日のアジアカップで見事日本代表は優勝を果たしました。特にオーストラリア戦での長友の左サイド突破はあっぱれでした。後の選手インタビューでの遠藤保仁選手が非常に興味深いことを言っていたのでそれをネタに一つ記事を書きます。

今回のテーマは戦術眼の優れた選手になるにはどうしたらいいかということです。戦術眼という言葉をプレーエリアと集中の切り替えという観点から解説したいと思います。

結論から言うと、戦術眼の優れた選手になるには、常にピッチ全体で起こっている現象を把握しなければならないということにはなりません。そんなことは人間の能力の限界を超えています。もちろんアンテナを張り巡らせて子細な出来事に気づくというのは重要な能力ですが。

この記事の主旨は、どこに着目すべきか考える事で戦術眼を磨くことが出来るということです。言い換えれば、集中しどころを適宜切り替えていくということになります。では図を使って説明していきます。

左の図に自分を中心に同心円が4つ描かれてあります。それぞれの円はプレーエリアを表しており、それは同時に集中すべき範囲の区別を表しています。

下の図で、なぜ1,10,30,60メートルで分けたのか、説明があります。

自分から半径1Mという範囲は球際の攻防を表しています。

半径10メートルは2対2や3対3などの局面を表してあります。

半径30メートルは自分がピッチの中央に立てば大体ピッチの横幅68Mをカバーできることになります。また現代サッカーでは2チームの最終ラインは30M前後に保たれることが多く、この範囲は横への展開また縦への展開を考える上で丁度良い距離になります。

半径60メートルは自分がセンタースポットに立てばピッチの縦105Mをカバーできます。つまりピッチ全体を見渡すために必要な距離ということになります。そしてそれは試合の流れを読むために必要な距離を意味します。

球際の攻防においての勝負に勝てなければ選手として評価されることはまず無理でしょう。そこには技術やフィジカルなどの要素も関係しますが、なにより集中や気迫といったメンタルの部分が重要になります。もちろん頭のいい選手は競り合いを避けてプレーすることも出来ますが、それはほとんど例外と言っていいでしょう。

局面の判断において重要なのは、フィジカルより技術や戦術、つまり予測やイメージ力といった判断力だと思います。局面を有利に運ぶ必殺パターンをいくつか持ち合わせていれば打開が可能です。局面打開あるいは局面守備のセオリーについてはこのブログでもすでにいくつか紹介してあります。

展開において、特に攻撃面で重要なのはチームでボールを運ぶ意識です。その概要はマクロつなぎ論ミクロつなぎ論で紹介していきます。守備においてはチームによってマンツーマンやゾーンなどやり方は変わりますが、普段の練習における意識の統一が不可欠になってきます。つまりポジショニングということです。

試合を読む力というのは、技術力や展開力、カバーリング能力とはまた違った能力のように思えます。言葉にすると、ピッチ上で何が起こっているのか正確に把握し、いくつかの現象から予測を立てるという行為になります。それをピッチの上で走りながらリアルタイムで実践するということです。一体どうやったらそれが可能になるのでしょう。

試合の流れを読むことについて書いていたら非常に長くなったので別の記事にまとめました。→サッカーの試合の流れを読む

では最後の図を御覧ください。左図。

矢印がいっぱいあります。全部で10本あるんですがこれはそれぞれのエリア間を行き来しています。

例えば0m(自分)→10mの矢印は球際の攻防に集中しろということを意味しています。

ドリブルなどで敵をかわして球際を抜け出たら次に考えるべきは10m、30mあるいは60mになる、ということをそれぞれの矢印は意味しています。

例えば、敵が1m以内に寄せてきているのに、展開ばかり考えていてはすぐにボールを失ってしまいます。逆に球際ばかりに集中して局面が見えていなければパスを出すタイミングを逸してしまいます。上手な選手は、ボールと自分の距離、あるいは敵と自分の距離に応じて集中すべきエリアに正しく意識を向けることが出来ます。

サッカーというスポーツは連続的にシーンが切り替わるスポーツであり、切り替わりはホイッスルが吹かれるまで続きます。切り替わるというよりとめどなく流れるという方が実際に近いかもしれません。そのなかで集中すべきプレーエリアを上手に切り替えることが戦術眼を磨くために必要だと考えています。

最後に冒頭の遠藤選手のインタビューを抜粋します。

前回(韓国戦)のロスタイムでああいうふうになったので、みんなよく分かってました。集中を途切れさせず、ボールが止まった時に声を掛けてましたね。(長 友に勝負にいかせたが)相手の右サイドバックの8番(ウィルクシャー)がバテバテだったし、そんなにディフェンスがいい選手じゃないので、佑都(長友) に、持ったら1対1をどんどん仕掛けろって言ってました。オカ(岡崎)のへディングシュートもそうですけど、あそこが狙い目だと思ってました。僕は監督の プランをよく知らないですけど、あそこで1対1を仕掛けられる選手がいれば、相手のサイドバックはそんなにディフェンス強くないですし、あれはいい形だっ たと思います。今ちゃん(今野)が後ろに下がることでしっかり守備ブロックを作れるんで、あれはあれで非常にいいプランだったかなと思います。


遠藤選手は執拗に左サイドにパスを送り続けていましたね。当時は狭い方ばかり選んで何やっているんだろうと思ったものですが笑。このコメントはボールが遠くにあるときに頭を働かせることの重要性を物語っています。あれほど白熱したピッチの上で冷静に敵戦力分析をしていた遠藤選手の戦術眼には脱帽の思いです。

関連記事→ボディコンタクト4 ジダンに学ぶルックダウンの必要性


0 件のコメント:

コメントを投稿