footballhack: チーム強化計画 (書きかけ)

2012年6月13日

チーム強化計画 (書きかけ)

コンサルティング会社に務める友人とサッカーのチームトレーニング計画の練り方を議論していたら、彼に強化計画の可視化を促されたのでここに記しておきます。多くは様々な書物に記されているとおりなので、目新しいことはありませんが、暇な方は一読されるのもいいと思います。

   チーム強化の手順

  1. スカウティング
  2. 目標設定
  3. コンセプト設定
  4. 実現性検討
  5. トレーニングメニューの考案
  6. 練習
  7. 試合
  8. 分析そして4に戻る



  1 スカウティング

まず、1のスカウティングですが、これは4つの分野で行われるべきです。
  • 自チームの戦力分析
  • 相手チームの戦力分析
  • 自チームの所属するリーグもしくはトーナメントの戦力分析
  • 自チームの所属するカテゴリーの分析
自チームと相手チームの戦力分析については、試合分析法シリーズに記しましたのでそちらを参考に。

リーグの戦力分析が一番難しいですが、これは複数の相手チームを総合して分析することを意味します。それぞれのチームを平均化して得られる共通の特徴を抽出して、それらから訓示を得ようということです。例えば日本の一般的な高校サッカーの特徴は、サイドバックから縦に速い攻撃や前からのプレスがあります。

カテゴリーとは育成段階つまり、サッカーの進化の過程で書いたとおりです。育成年代のうちどの年代に所属するかを考えることで目指すべきサッカースタイルが見えてきます。



  2 目標設定

2の目標設定とは獲得したい結果を可視化しチーム全員で共有することです。「チーム全員で」と言う部分が大事で、全員がその結果を得たいという信念を持てなければ、以下のコンセプトも練習も意味の薄いものとなってしまいます。目標設定こそ、監督やキャプテンだけでなくチーム全員で行うべきだと思います。手法としては監督が設定した目標を時間をかけて選手たちに信じこませることもできますが、カリスマ的な指導者でないとこの手法での成功は難しいでしょう。この段では現状を鑑みた実現性の検討は必要なく、途方も無く高い目標を設定しても構いません。
 


  コンセプト設定

3のコンセプト設定とはいわば基本指針です。サッカースタイル、チームスタイルとも言われます。1で現状を、2で理想を設定したならば、この段で決めるのは手段です。どういう手段で進めれば理想を達成できるのかということです。

コンセプト設定のキーポイントは深い知識にあります。選択肢が多ければ多いほどより正解に近い手段を手に入れられるからです。そこで重要なのが監督の知恵と情報収集です。何事も無から有を生み出すより、成功者の模倣をするほうが効率良く結果を得られますから、他チームやプロチームの成功例を真似ぶことがより早く結果を得ることにつながります。強化計画を続ける上で独自にコンセプト変更することは大いに結構ですが、まず取っ掛かりとして成功者の模倣が勧められます。

例)バルサのパスサッカー、ビエルサビルバオの走るサイド攻撃、4−4のゾーン・ディフェンスから狭いカウンター、モウ・マドリーの間延びしたスペースを使うサッカー

また、コンセプト設定は人的物的資源の制約を受けます。たとえば、グラウンドが半面しか使えなければ、ゲーム形式の練習やロングボールを使った練習ができませんし、つなげるCBがいなければビルドアップを戦術に組み込むことができません。様々な制約をクリアしなおかつ目標を達成できるコンセプトを考えなければなりません。



  4 実現性検討 

 このチーム強化計画のうち1〜4は机上の作業で、5〜7が現場作業というふうに分けられると思います。机上作業のうちこの4の実現性検討が一番重要で、ここを間違ってしまうと全てが台無しになります。


実現性検討とはいわば、現状と理想の擦り合わせ作業です。上記の1,2,3を総合して考え、これらを筋の通るように統合することが主な作業です。この過程で目標やコンセプトが修正されることがあっても構いません。むしろ修正するべきところはどんどん行うのがよいです。



こういった作業ができるのは成人した指導者に限ります。なぜなら10代の選手と比べ観戦値(知)でも実践値(知)でも優れているからです。選手主体でチーム作りをするとこれらの知識や経験が乏しいがために必ず間違った方向に進みます。それは成人した指導者でも経験が少なければ同じ事ですが。



  5 トレーニングメニューの考案
 この段に入ってようやく実際のトレーニングメニューを練ることができます。体現したいコンセプトを落としこむように、メニューを組みます。このとき実際の試合で起こりうる状況を忠実に再現するように心がけます。

最近ではグローバルトレーニングといって、技術、戦術、フィジカルの3要素を同時に鍛えられる練習法がよく取りざたされています。プロチームの練習を見学したり、試合前のウォーミングアップを観察すると概要がつかめるのでお勧めです。

僕が個人的に推奨するグローバルトレーニングは、試合の中の四要素をバランスよく鍛える方法です。サッカーの試合ではボールを巡る状況は3つしかありません。(マクロつなぎ論6 安定不安定その1)加えて、アウトオブプレーからの復帰の方法はセットプレーのみです。 これらを比率で表すと、
  1. 味方ボール(攻撃) 2〜4割
  2. 相手ボール(守備) 2〜4割
  3. ルーズボール 1〜3割
  4. セットプレー(攻守) 1〜3割
このとおりのバランスで各練習メニューを組み立てると良いと思います。

また個人的に、"心拍数の上がらない練習は練習ではない”というモットーを持っています。なぜなら心拍数が上がった状態でいかに良いプレーができるかということが重要だからです。



  6 練習の実践
練習の難易度は人数、広さ、ルールによって調整ができます。うまく行かなければその都度これらの条件を調整することが必要です。このへんの判断は指導者としての経験に左右されます。

練習の目的は選手の頭の中身を変え、直感的に正しい動きができるように習慣づけることです。ですから、練習の意図や実際にどういう場面を想定しているのかなどを確認することを怠ってはいけません。練習を一旦中断しても、これらの確認を行うことが優先されます。選手目線で練習に疑問を感じたら躊躇せずに指導者に質問したり、指導者側も練習の意図が十分に伝わっていなかったら、中断し再度ミーティングを行えるような雰囲気作りが大事になってきます。

また、意識を変えることが目的なのに、選手に高い身体的負荷をかけるだけで満足してしまう「手段の目的化」に甘んずる指導者が少なくありません。選手自身にもそういった意識が潜んでいることも問題です。

個々のトレーニングメニューについては多岐にわたるのでここでの言及は控えますが、上述したようにチームの現状、目標、コンセプトにもとづいて柔軟に行うことを心がけるべきです。



  7 試合

試合は勝つために思いっきりやります。もともと結果を出すためのコンセプト作り、練習があるので、無駄なことは考えずに今発揮できることを思い切ってやるのが正解です。



  8 分析
試合の評価は試合後に行います。もちろんハーフタイムでの戦術確認も重要ですが、チームの強化を考えた時、一番適切なのは試合が終わって一息ついて冷静に話し合いができる環境です。試合をビデオ撮影したのならばそれを見ながらでも良いでしょう。

分析で気をつけなければならないのは、既存の言葉に囚われないことです。既存の言葉とはいわゆるサッカー専門用語、クサビとかラインの押上とかサイドチェンジといった言葉です。これらの言葉は古きサッカー思考を象徴する言葉です。既成語を使っている限り既存のサッカー観から抜けだせず、それ故結局、他チームとチーム方針が同化してしまう危険性があります。他チームと同じ事をやっていては勝てません(個人の能力で秀でない限り)。他チームに勝つには既存の言葉を捨て、新しい語群でサッカーを切り開くしかありません。ですから、"サッカー用語"を使うのは極力やめましょう。

分析とは主観で行われます。よく勘違いされていますが、分析は決して「客観的に」とか、「主観を捨てて」行われるわけではありません。完全な客観的視点は存在しません。データがあれば客観的だという人もいますが、データでさえ恣意的に指標を作ったり、主観的に用いる事ができます。分析は経験に基づく直感で行われます。経験とは膨大な実践、観戦における知識の集合であり、それらから導き出される共通項がセオリーとなります。このセオリーを基軸に引き出される分析こそ、直感と理性の邂逅で信ずべき一つの柱になります。つまり、継続は力なりということです。

そして手順の4、実現性検討に戻ります。練習の成果は発揮できたか、成果が結果に結びついたか等を検討し、必要ならばコンセプトを見直し、次の課題を設定し、トレーニングメニューを再構築します。



  TO BE モデルのサイクル

 以上の手順を図にすると左のようになります。まずスカウティングによる現状把握、目標設定、2つを結びつける基本指針の決定があります。

そして実現性検討、練習、試合、分析を通じてコンセプトに沿うように成長していきます。
 するとひとつのサイクルが出来上がります。これをコンサル業に従事する友人をして「To Be モデルサイクル」と命名しました。左図です。

To Be モデルに常に新しい情報を入れるところがミソです。情報とはモデルチームのチームスタイル、モデル選手のプレースタイル、活字媒体でのトレーニングメニュー入手などです。こうしてコンセプトを常に刷新していきます。
 このモデルは上記の図にぴったり当てはまります。


そしてチームの成長曲線はぐるぐると円を描くように上昇します。

つまり、上昇と下降を繰り返しながら長期的に右肩上がりに上昇するのが理想です。







  リソースの拡充

今までは練習メニューという可変要素をいじるだけでチーム強化をはかりましたが、他にもチーム強化の方法があります。それがリソースの拡充です。

ここで手順の3に戻ってみます。コンセプトの設定は限られた人的資源の中で行われましたが、ここで様々な環境を変えることができたらどうでしょう?例えば
  1. 選手を新加入する
  2. 設備を新しくする
  3. 練習時間を変える
  4. 監督を変える
こういったことが出来れば、コンセプトを全く違ったものに設定することも可能です。




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