footballhack: 将棋とサッカーの共通項1

2012年5月22日

将棋とサッカーの共通項1

将棋とサッカーは似ているとよく言われます。元バルサスクールコーチの村松さんやライターの杉山さんが著書の中で語っていますし、個人的によく参照している蹴球計画さんにも将棋の概念を用いたサッカー戦術の解説をしています。なにより、A級棋士である深浦九段が雑誌でサッカーのコラムを持つほど大のサッカー好きらしくて、その彼がサッカーと将棋には共通点が多いとおっしゃるものですから、これは一サッカー戦術マニアとして将棋を勉強しなければ、いや是非やってみたいなと思い立ったのです。

そして将棋を勉強し始めて一年くらい、将棋とサッカーの共通項をすこしずつ発見してきたのでここにその成果を発表しておきたいと思います。



 ❏ 大局観と試合の流れ
 将棋には大きく分けて3つの局面があるそうです。それが序盤・中盤・終盤。この考え方はそのままサッカーにも応用できます。ただしサッカーにはハーフタイムがあるので、そこでの作戦変更が可能になります。ですから、サッカーの場合、序盤中盤終盤のサイクルは2回訪れることとなります。



おおまかに言って大局的に見た将棋とサッカーの共通点は以下の通りです。序盤は用意した戦術を遂行し、中盤にて両者の戦い方の結果が生まれ始め局所的に優劣が決まってきます。その流れを受けて終盤にかけて戦術変更や選手交代(持ち駒の投入)等を経て、結果的に戦い全体の流れが収束していきます。

将棋では序盤に大駒の配置の仕方によって玉の囲いを決め、スムーズに駒組みが組めるようにします。これは攻撃と守備の形を決定することを意味します。また指し手によって戦型の得手不得手があるように、サッカーでもチームによってシステムの形が変わります。序盤は鍛錬した戦術を遂行しやすい時間帯でもあり、大駒はどこにいるか(キープレーヤーは誰でどのポジションか)見極めるために重要な時間です。

中盤は駒得を狙いながらうまくさばいて、展開を有利に持っていきます。サッカーで言うなら、しっかりと駒組(守備ブロック形成あるいは後方からのビルドアップ)をしたあとは、ほころびを作らないように局所打開を図ります。相手の陣形の弱そうなところを攻めたり、個々のマッチアップで勝てそうなところから仕掛けるのが吉です。要は試合展開を優位に進めるきっかけになるポイントづくりです。「ここなら勝てる」という場所を見つけるのです。

また、中盤を優位に進めるテクニックについても将棋から学ぶことがたくさんあります。詳細は次回書きますが、例えば将棋では開戦は歩の突き合いが合図になります。小さな一歩が何十手も後の結果を左右するのです。同じくサッカーでも、なんでもない一本の寄せパスから攻撃が始まることがあります。サッカーの場合は何十手も読む必要はなく、3〜5手先が読めれば十分なんですけど、これを瞬間的に行わなければならないという点に難しさがあります。将棋から学ぶ定石が頭に入っていれば、コンマ何秒か閃きにかかる時間を短縮できるので優位に立つことができます。

終盤は相手玉に寄せるスピードがモノを言います。自玉を固くして相手玉を詰めば勝ちです。簡単ですね。自ゴールを守って、相手ゴールを脅かせば良いのです。将棋の終盤戦は駒組が崩れてめちゃくちゃになりながらもぎりぎりのところでそれぞれの駒が紐付いて助けあい、玉を守っています。サッカーも終盤は体力が削られ中盤が間延びし乱打戦模様を呈することが多々あります。コーナー付近で時間稼ぎをしたり(持将棋)、投了せずに最後まで粘って逆転する(パワープレー)なんてことも珍しくはありません。帰結の仕方にいくつかのパターンがあることも共通していますね。

❏ 見合い・両取り・2択を迫る
ここからは個々の共通点を取り出してみていきます。

まずは見合い。サッカーにおいては最重要ファクターのひとつです。詳しい説明は蹴球計画の「正対と技術ミニマム」で説明されています。 蹴球計画内で見合いを検索にかければもっと様々な記事を読めますのでどうぞご参照に。

将棋においても両取り・見合いの概念は非常に重要で、というか基本ですね。両取りをかけるための仕掛けに何手も読みを重ねるのが将棋なのです。そういう意味で見合いができなければ将棋を指せません。同じように見合いを理解していなければ、サッカー選手としてより競争力の高いステージに上がることは、昨今の進化するサッカー界においてありえないでしょう。

❏ 囲いと守備ブロック

 将棋の駒組とサッカーの守備陣形は酷似しています。互いに紐付き(カバーリングが可能な位置にポジショニングし)、何層かの緩衝帯(ライン)を形成し、玉(ゴール)から敵を遠ざけるのです。

守備だけではなく、攻撃の形にも影響します。どの駒を守りに使い、どの駒を攻めに使うのか(誰を攻撃に残しておくのか)、また陣形によって攻撃に加勢できる人数とその負荷も変わってきます。 将棋には幾十もの囲いが存在しますが、サッカーでは多くとも10前後しかないのが相違点です。まぁしかし、駒組(システム)を座学で学ぶことも少しはプレー向上の足しになったりします。


 ❏ 初手と立ち上がりの戦略
 サッカーの場合、序盤はまず相手にガツンと強く当たります。ハナから球際で負けてしまっていては試合にならないからです。そのためロングボールを多用するチームが多いのです。

 将棋も似たように、まず初手は大駒の利きを伸ばすように歩を突きあうことが通例です。駒(敵味方)が混ざり合ってないうちは、地道に一歩ずつ前進するより、長距離砲を使って攻めるほうが効率が良いのです。もちろんメンタル的な問題もありますが。

❏ 端攻めとサイドアタック
 端攻めは数の攻めというように、将棋ではサイドを攻略するとき、駒を集結させます。

同じように、サッカーでもサイドを攻略したかったら、人数をかけて攻めるのが良いです。少なくとも2人、多くて4人でしょうか。これ以上多いとせっかくサイドを攻略しても、ゴール前に人数をかけられないので、あまり意味がなくなってしまいます。

サイドを攻める際は、タッチラインを背にしているので攻撃が手詰まりになりやすい分、 スペースの生成と利用を効率良くやらないとうまくいきません。下手すると攻撃を止められ、逆襲の起点になりかねません。このへんは将棋でも同じですね。

 次回が本番!!パスとポジショニングに絡んだ戦術眼の育み方を、将棋との共通点から学びたいと思います。

将棋とサッカーの共通項2


6 件のコメント:

  1. 突然ですが....

    本当に私事なんですが、僕はある公立高校の1年生でキャプテンをやっていて、2,3年生がサイドバックを基点にトップと中盤でのダイレクトプレーを中心に相手を崩していく所謂日本サッカーに対して、僕達の代では、バルセロナとまでは言いませんが、ゲームを圧倒的に支配して、確実な勝利を狙うサッカーを本気でやりたいと考えています。部の力量は、具体的にこちらの思いを伝えれば、それぞれ行動に移すことができるまぁまぁ良いLVです。

    そこで一番尋ねたいことが、このようなバルサに類似したパスサッカー(完璧とまでは言いません)を目指すには、どのような順序でミーティング、練習をやっていけばいいと思いますか?silky skillsさんの考えを教えてください!!

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    1. ちょうど僕も練習手法やトレーニング計画について考えていたところです。その件については、将棋2の記事の次に上げる予定ですので、しばしお待ちを。

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  2. こんにちは。
    久しぶりの更新、お待ちしておりました。
    いつも読ませていただいております。
    ありがとうございます。


    自分は、上の方と同じく公立高校でサッカーをしております。
    高1です。
    進学校のせいか、部活動の練習に大きな規制がありますので自主練習が大事、という状態です。

    自分はフットボールネーションという漫画を読んでおり、その漫画でさまざまな情報を得ています。
    そこで、自分は体幹を鍛えようと思ったのですがどの順番で鍛えていくべきなのかさっぱりです。

    自分で色々調べてはいますが、静→動のトレーニングの変更など抽象的な指導ばかりで具体的な変更の仕方がいまいちわかりません。

    Tarzanの体幹特集のものを買ってはみたものの、サッカーに限った話ではなかったためどこが重要なのかわかりかねます。

    つきましては、体幹の鍛え方、使い方に重点を置いた記事の更新をお願いできないでしょうか?
    自分と同じような境遇の方もいらっしゃるでしょうし、とても助かるかと思います。

    気が向いたときで構いません。
    どうかよろしくお願いします。

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    1. コメントどうもありがとうございます。自分はフィジカルトレーナーとして専門的な勉強をしたものではないので、その質問には十分な回答ができません。アドバイスとしては、サッカークリニックで以前体幹強化の連載をしていたものを、まとめた本が発行されています。書店で手に入るのでそちらを参考にしていてはどうでしょうか?

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    2. お返事、アドバイスありがとうございます。

      サッカークリニックで体幹強化をしていたとき、ですね!
      確かに去年の3月にサッカークリニックを呼んだときに体幹特集がされていたのを覚えています。

      まとめた本、とは
      サッカーがうまくなる身体コーチング Soccer clinic+α
      というものでしょうか?

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