footballhack: サンフレッチェ広島のシステムに潜む機能美

2011年7月6日

サンフレッチェ広島のシステムに潜む機能美

今回は前々から書きたかったサンフレッチェ広島のシステムについて書いてみます。サンフレッチェ広島は、数あるJリーグクラブの中で唯一にして最も機能的で独特のサッカースタイルを築いていると僕は考えています。横浜Fマリノスの木村和司監督が、「広島には色があっていいなぁ」というような発言をしたことからもそれはうかがい知れます。では早速、広島のシステムについて考えていきましょう。


 広島のスターティングメンバー発表時のシステムは3-6-1だとされています。おおよそ左図のようなメンバーで組まれるようです。

ここから広島のシステムはボール保持時とボール非保持時に即して2つの動きを見せていきます。

まずはボール保持時、攻撃時の配置を見てみましょう。



 広島の選手がボールを奪いバックパスなどで安定した状態でポゼッションを始めたり、ゴールキックなど後方のリスタートから攻撃を始めるとき左のように各選手が動きます。

サイドの選手は高い位置へ移動し、ウィングは相手チームのDFラインまで、サイドバックはあたかも4バックのサイドバックの高さまで上がります。 するとセンターバックのところに大きなスペースが出来てしまいます。

注目は赤矢印で差したボランチの選手の動きです。2人いるボランチのうち一人が最終ラインに入り、開いた中央のスペースを埋めて、ビルドアップを助けます。
 このようにサイドの選手はワイドに広がります。ここから特徴的な広島の攻撃パターンを見てみます。

まず、センターバックの位置に入った二人は、機を見てドリブルでボールを前に運びます。

ボランチの森崎浩は相手のFWとMFの選手の間に入ってボールを引き出します。

李とムジリの2トップ下は引く動きと飛び出す動きを組み合わせながら、1トップの佐藤寿人とのコンビネーションランで突破を図ります。

注目はミキッチのドリブル縦突破です。ドリブルのコース取りがいいので是非参考にしてもらいたい選手の一人です。

森脇は中に絞ってミドルシュートなどを狙い、左サイドの山岸はカットインと裏への抜け出しで突破を図ります。


 広島のパスワークで非常に特徴的なのは、中央を通すフリックパスです。

左の図は森崎浩経由で、彼がボールを引き出しダイレクトで後方の李とムジリにボールを渡すプレーを表しています。
 あるいは2人のトップ下の李とムジリが引いてきて、そこにパスを合わせフリックで寿人を狙うプレーもよく見られます。特に李選手はフリックした後動き直して、寿人を壁役にしたワンツープレーが得意です。
 後方からのロングパスで相手チームの守備の狙いどころをぼけさせるプレーもよく見られます。

ストヤノフというロングパスの名手が抜けた後、DFラインから一気に寿人の裏を狙うプレーは減りましたが、このような長いパスプレーはピッチをワイドに使う広島ならではのやり方です。

多少パスがずれたり受け手のコントロールが上手くいかなくても、ルーズボールをしっかりと拾える仕組みになっています。なぜなら、広島の選手はワイドに且つ均等にピッチに陣取ることで、一人ひとりが使えるスペースを最大に保っているので、相手チームのカバーリングが遅れてしまうからです。


 つづいて守備時の陣形を見てみましょう。

相手チームにボールが渡った瞬間、広島の選手は左図のようにリトリートして守ります。
 すると左のようになります。

5-4-1の陣形です。

広島のDFラインはかなり低いところに設定してあります。これはJ1復帰後にあまり守備が安定しなかったことからの改善点なのでしょう。

ゴールにしっかり蓋をして守ろうという全員守備の思想です。



 ここからは向きを変えます。水色の選手は攻撃側、相手チームです。

李とムジリの2シャドーはあまり守備に熱心でない場合が多く、帰陣も他の選手と比べると結構遅かったりします。

ここから左サイドにボールを展開されたときの動きを見てみましょう。


 左サイドにボールが渡ると、各々の選手がスライドして、選手間の距離を保ち、スペースを埋めます。

すると、
 左図のようになります。左ウィングの山岸が高い位置からプレッシャーを掛け、残った4枚でDFラインを形成します。
 このように広島の5バックはどちらかのウィングの選手がツルベの動きを繰り返し、常にDFラインに4人の選手がいるように働きます。

ウィングの選手は上下動、3バックは横移動でスペースを埋めて守備にあたります。


格下相手のときには時折、左図のような配置も見られます。










まぁとにかく、広島は良くパスを繋ぐチームだし、システムの機能美も相まって見ていて非常に面白いです。個人で言うと、李のビッグブリッジや押し通るドリブル、ミキッチの縦突破、中島のドリブル時のルックアップ、寿人の動き出しと体の使い方、森脇と森崎浩のミドルシュート、森崎和の危険察知能力等、見所も満載です。


欲張りですが、もう少しトップ下が低い位置まで降りてきてビルドアップを助けながら、ローテーションしてゆったりと中央突破してくれたらいいなぁなんて思います。

関連記事→2011年サンフレッチェ広島の問題点を総括する

CWC広島出場記念→FWの動き方3 ゴールへの嗅覚とは【第一回】

4 件のコメント:

  1. すごいわかりやすい解説ありがとうございます。こないだ柏対広島見に行ったときの疑問が解決しました。あの試合は森崎和の位置に盛田、横竹の位置に中島、中島の位置に青山でしたが、この通りの動きをしていました。

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  2. コメントありがとうございます。最近の広島は守備の時に下がり過ぎるきらいがあるのと、暑いからかムジリと李の守備参加が疎かになってそこから崩されたりしています。攻撃では十八番の中央突破が研究されて通用しなかったり、ムジリが期待はずれのプレーばかりでなかなかリズムを作れません。今年はACL圏内を狙いたいだけにシーズン序盤こそ好調でしたが、イエロー多発などあり困難が多そうですね。

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  3. ええ、守備の時に下がりすぎた結果、攻撃の起点も下がってますよね。中央突破も研究されてる+ブロックしっかり作られる+ムジリが期待ハズレの三重苦では厳しいですよね。
    もしお時間がありましたら、広島この動きがなぜうまくいかなくなるのか?なども解説して頂けると大変ありがたいです。

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  4. 最近はなかなか連勝できていませんね。良いサッカーをしながらなぜ勝ち切れないのか、そのへんのところを詳しく探るために継続して広島を見ていきたいと思います。ということで続編はしばしお待ちください。

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