footballhack: ドルトムントのインテンシティが高い守備

2013年7月24日

ドルトムントのインテンシティが高い守備



本をまとめて4−4−2のノウハウの部分はある程度頭に入ったところで、インテンシティを高めるにはどうすればよいかという課題が浮かび上がりました。そもそもインテンシティとはなんぞや?ここでインテンシティという言葉の定義をするつもりはありませんし、インテンシティという言葉の意味を明らかにするつもりもありません。ただ言えるのは、今シーズンのCLを席巻したドルトムントのサッカーをよく研究すれば、インテンシティがどういうものか見えてくるんではないか、ということです。そこで今回は僕が感動したドルトムントの守備を紹介します。

まずは動画を!CL QFinal vs Malaga


4−4−2 距離感 from silkyskill on Vimeo.

インテンシティの定義はするつもりがないと言いましたが、便宜上それを宣言しておいたほうがこのエントリはやりやすくなると思います。ということで、このエントリ内のみで通用する定義をします。


インテンシティ=サッカーボールへの関わり


一応このようにしておくと、ドルトムントの守備の距離感の良さがわかってくると思います。


冒頭のドルトムントの攻撃から守備への切り替えはかなり見応えがあります。ギュンドガンがロストした後、ダッシュで奪い返しに行き、後ろには左SBのシュメルツァーが高い位置をとって2ndDFとして立ちはだかります。ロイスもそこへ加わります。そして下の画像につながります。動画の0:23くらいからです。

スクリーンショット 2013 04 16 6 05 10

画像はボールが逆サイドに展開されドリブルでオープンスペースを付かれるところです。ここは右SBのピシュチェクがうまいことディレイします。ゆっくりと外にスライドすることで外方向に攻撃を誘導し、前方からの味方の帰陣を待ちます。

スクリーンショット 2013 04 16 6 05 17

ここにはベンダーが帰って来ました。ドルトムントは4−1の急造ラインを引いてカウンターを抑えます。ベンダーの上手さはバイタルエリアを使わせないコース切りと、ボールへのアプローチを並行して行なっているところです。

スクリーンショット 2013 04 16 6 05 21

ベンダーがワンランしている隙にドルトムントのMF陣はロイス含め4人帰って来ました。これで安定してラインを組めます。

縦切って横へ行かせる、その間に攻撃陣は帰陣する、そしてバックパスの間にDFラインを上げてコンパクトネスを保つ、これらがオートマチックにこなされていることがわかります。

スクリーンショット 2013 04 16 6 05 28

マラガはセオリー通りサイドチェンジ。広い方を使ってゾーンを上げながらクロスかコンビネーションを入れる隙を狙います。

スクリーンショット 2013 04 16 6 05 51


しかしそこにはすでにドルトムントの守備の壁が出来上がっていました。SH,SB,CB,ボラの4人でサイドを封鎖すれば数的優位を常に保てます。

ここでもう一度サイドチェンジを狙うマラガ。しかしこれはミスに終わります。きっちりラインを組めればサイドチェンジにも間に合ってしまうんですね。

スクリーンショット 2013 04 16 6 06 11

クリアボールを拾われてここからクロスを入れられるわけですが、


スクリーンショット 2013 04 16 6 06 29

ボールが流れたファーサイドでの1対1がもうこの距離感。
スクリーンショット 2013 04 16 6 06 46

ディレイすれば3人の援護がはいることは必至なので、マラガは後ろへ逃げました。

見ていただけば分かる通り、ドルトムントはボールへのプレッシャーを常にかけ続けていることがわかります。ボールホルダーとの距離感、味方との距離感、その双方が素晴らしく良いのです。これがインテンシティが高い状態だと個人的に思っています。

ボールへの関わりを増やすこと。関わりを増やすといっても団子サッカーがインテンシティが高いわけではありません。「ボールが展開される可能性を広範囲にカバーすること」これが関わりを増やすということの意味です。ドルトムントはボールの移動の先々でプレッシャーをかけ続けています。つまり、サッカーが強いということです。

これを実現するには高い持久力も必要ですが、予測力という部分も大事になります。相手がプレーしそうな方向へ素早くポジションを移したり、ダッシュをかけるタイミングを見計らったり、細かい1歩2歩の駆け引きに勝ち続けることが大事なのです。

そしてトレーニングによってポジショニングの修正だったり、アプローチの角度だったりスピードを自動化していくことが重要です。試合中に考えている暇はないんです。観察したり、駆け引きをするために脳の容量を残しておくためには、基本動作であるポジショニングとアプローチは自動化しておくことが理想です。これはトレーニングによってしか成し得ません。

また、最近感じるのは、プレーすることに対するモチベーションです。つまり、試合中にどれだけポジティブな感情をプレーの動機とできるか、ということです。

まだわかりにくいので例を挙げます。例えば自分のミスパスで攻撃から守備へ切り替わった時に、当然そこで落ち込んでいたらスムーズな攻守の切り替えはできません。自分のミスは取り返してやる!という気概をもつのも大事ですが、それでもネガティブな感情がプレーの動機となってしまいます。「自分のミスは自分で責任を持とう」という気持ちは少し後ろ向きですよね?

そういうときは、自分のミスを忘れてしまうほど次のプレーに没頭することが理想ではないでしょうか?つまり「ボールを奪い返したい」という強い欲求を全身に感じるのです。次のプレーで良いプレーをしたいというのは非常にポジティブな感情です。奪い返すことを欲する、ボール奪取を自分の手柄にして評価に繋げたい!という欲求こそサッカー選手には必要じゃないかと思うんです。そしてそれがワンプレーとワンプレーの間をシームレスにつないで行きます。

人間はポジティブな感情を動機にする時、もっとも創造的になれます。創造性には限度があるわけでなく、環境が整えばいくらでもいつまででも創造的でいられます。それは非常に難しいことですが、クロップが目指しているのはそういうサッカーなんじゃないかなと感じています。「選手にポジティブな感情を植え付け、常に創造性を発揮させる」これがドルトムントのトレーニングに仕込まれた秘密ではないかと勘ぐっています。

では結びに今日の格言!

サッカーはノウハウではない、相対性だ!

攻守の切り替えを制するものが試合を制する!


10 件のコメント:

  1. 質問失礼します。
    この動画はYouTubeにありますか?

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  2. 初めまして中3男子です。

    突然ですがプロになれるような実力がない僕ががコーチになるために必要なことや進路を教えていただけないでしょうか?

    お願いします

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    1. サッカーをプレーし続けることです。少なくとも20歳くらいまではプレーヤーでいたほうがいいです。理由はプレーヤーの心理を理解するためです。あとはサッカー選手独特の性格の癖とか空気感とかノリとかを把握するのも大事です。そのなかで、これは完全に運ですが、いい指導者との巡り合いが必要です。高いレベルでプレー出来れば自然といい指導者に出会えます。強豪校とか伝統校への進学が無難です。僕が最近感じるのは指導者にも経歴が重要ということです。キャリアを積んでいくにはやはりプロである必要があるし、例えば秋田豊などは典型で、指導者としての才覚がないが元日本代表としての経歴だけでJクラブを指揮しています。そこには代理人とか知名度とか事務所(テレビ解説の仕事の斡旋)などの要素も絡んでいるようです。プロキャリアがないのに指導者として一流を目指すならまずは小学生のカテゴリーで結果を出して認められるしかないです。それで中学高校と上がって最後は大人です。日本には指導者のキャリアを結果から評価する文化がまだないですが、スペイン他サッカー強豪国には普通にあります。これから日本もそうなっていくでしょうから20年30年スパンで考えればジュニア世代の指導がつながっていくと思います。一つの案としては大学生になったらジュニア指導と選手の2足のわらじを履くということです。やはり高校生にはまだ指導は難しいんじゃないでしょうか。理解力とか経験とか低いし。そういうことでまたなんかあったら質問ください。

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    2. ありがとうございます。

      とても参考になりました。指導者になれるよう頑張ります。高校の先生はとてもいい監督なのでたくさん吸収しようと思います。

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  3. トピ違い失礼します。センターバックの守備についてですが、本日の日本代表の二点目ですが、バイタルでボールを受けようとした相手のボールを奪いに行き、結果失敗し、センターバックのギャップをやられましたが、ああいう場面の正解の守備はどうすべきだったのでしょうか?センターバックの守備について、少し知りたいと感じました。

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  4. とても参考になりました
    気になった点で質問です

    リトリート時にボールへ寄せるディフェンダーの走り方がJリーグの選手と比べて加減速が小さいなと思いました。奪いにいくときは当然大きかったですが

    ぼくはひょっとしてこれが90分間プレッシングを維持する秘訣なのだろうかと思ったのですがどうでしょう?

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    1. 答えられない質問ですが、一応答えときます。プレッシングは角度と空間把握力が大事なんですかね?確かに加減速が小さく見えますし、日本人のようにダッシュで距離を詰める様子が見当たりませんね。しかし、確実に距離を縮めているのはドルトムントの選手のほうです。それが何に起因するのか今はわかりませんが、指導方針の違いとか、読みの鋭さとか色々目に見えない部分が違うような気が、今はしています。追って研究したいと思います。

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  5. 4-4-2系のシステムを主に採用しているチームで、攻守に基本に忠実でお手本になるような、silkyskillさんのおすすめのチームがあれば、ぜひ教えていただけないでしょうか。

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    1. 昨年まででしたらレバンテ、セビージャが良かったんですが、今季はわかりません。強い4−4−2ならアトレチコ、ドルトムント、チェルシー、バイエルンとあります。ただしこれらのチームは強いんで参考になりません。実際は中位以下12位〜5位あたりのリーガかプレミアのチームで探してみてください。個人的にはマルセリーノ・ガルシア・トラル監督が好きです。

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