トピ違い失礼します。センターバックの守備についてですが、本日の日本代表の二点目ですが、バイタルでボールを受けようとした相手のボールを奪いに行き、結果失敗し、センターバックのギャップをやられましたが、ああいう場面の正解の守備はどうすべきだったのでしょうか?センターバックの守備について、少し知りたいと感じました。
ーーーードルトムントのインテンシティが高い守備よりーーーー
それで東アジア選手権の第二戦、オーストラリア戦での二失点目を検証してみようと思ったんです。見てみたら、セオリー通りに上手くいってないところと、個人技術が足りないところがありましたので、良い教材になると思って扱うことにしました。
ちなみにこんな失点です
では件のシーンを。2:55からです。
なにが問題かというと、一言では言えないほど色々あるんで、キャプチャー画像とともに見てみましょうか。
ここでは山田と徳永が左サイドで入れ替わっている以外何の問題もありません。高橋はこの後猛烈なアプローチをかけるし、山口螢も連動していきます。
一個目のミスは、まぁミスという程でもないですが、高橋秀人の斜め絞りが遅くなったことです。画像の赤矢印の動きをとるべきでしたが、ボールウォッチャーになってしまいました。山口螢の青矢印の示す動きと連動出来れば、クサビを入れられた後の対応も良くなったでしょう。
でここで楔を入れられるわけですが、CBの千葉、鈴木ともに良い反応を見せています。
特に千葉はインターセプトする気まんまんでした。彼はパス(特にクサビ)が上手いだけあってパスの読みも鋭いんですね。そこでここは相手のパスを読んでインターセプトを試みましたが、偶然か否かオーストラリアのクサビはスキップパスとなっていたため、ツーパスアウェイに位置していた千葉はパスが出た後、前に出ることを躊躇しました。
クサビをカットしに飛び出した鈴木は完全に体を抑えられ、前に出るには回りこむしかありませんでした。
千葉は出足は良かったんですが、この後を見てもらえばわかるように、ボールがワンパスアウェイを通過した瞬間に大大大ピンチに陥ります。味方のカバーリングが少なく、相手のプレーヤーが猛然と追い越して来るのを見て、離れて待つ選択をしました。
高橋が足を止めずにプレスバックすれば、あるいはSBが絞りカバーリングを的確に行っておけば、後から考えるとそう思えるシーンです。しかし、ここで高橋を責めるのはちと酷です。どちらかというとSBの徳永に責任があったと思います。
鈴木が飛び出した分、DFラインが凸凹になり、そこにスペースが生まれています。結局ここを使われてシュートに持ち込まれるんですが、明らかにSBの絞りが遅いのがわかります。CBが飛び出したらSBが絞る、これは自動化されるべきです。このへんのことは4−4−2 ゾーンディフェンス セオリー編に書いてあるとおりです。
先ほどの拡大画像と比べてください。パスが放たれた直後は相手FWに密着していた千葉が、パスが到達する瞬間かなりの距離を開けていることがわかります。また、一度後方に下がってから前へ出ようとして、重心を移動している瞬間が捉えられています。これは明らかにインターセプトを諦めて、一度離れる意志があったことを示しています。それもそのはず、相方のCB鈴木が前へ出てインターセプトを試みたので、千葉は下がってカバーリングに行こうとしたのでしょう。ここまでは完璧にセオリー通りで彼一人を責めることはできません。
そして次の瞬間、ほぼペナ線上で1対2という猛烈なピンチを迎えています。しかも相手は前向きで後方からサポートが猛然と駆け上がってきています。これでボールを奪えと言う方が無理な要求です。同じ局面を迎えたら誰だって下がることを選択するでしょう。実際、千葉はこのあと少し後退しています。
日本のCBが悪いというサッカー言論界の風潮ですが、その主な理由が簡単に下がり過ぎという事らしいのです。しかし実際は鈴木は前に出てチャレンジしました。CBとボランチの4人で作る四角形のなかでプレーしようとする相手FWには厳しく行く、このセオリーを忠実に実行しました。そして、千葉が下がったのは後方のカバーリングがいなかったためです。また、オーストラリアの狡猾なスキップパスを利用したコンビネーションもありました。ここでセオリー通りにプレーする彼らを責めるのはあまりにも酷、それが僕の評価です。
じゃあどうすればよかったでしょう?もう一度違う角度から見てみましょう。
まずクサビのシーン、ここでセオリー的には高橋がプレスバックしておくべきでした。そうすれば鈴木は無理に奪いに行くこともなかったでしょう。しかし可能性の話ですし、実際は多分高橋は相当息が切れていたのでしょう。ツープレーが終わって完全に集中が切れている瞬間でした。また、時間帯のこともあるでしょう。体力、集中力の問題から高橋を責めることはできません。
続いて千葉は前に出てインターセプトできたか、という点です。世界一流のCBならあるいは可能だったのでしょうが、ウェイト&ステイが基本指針の日本の守備文化からそんなCBを生み出すことはこの先10年できないでしょう。そうこれは個人の責任ではなく文化の表出なのです。
やはりやっておくべきはSBの絞りカバーリング。セオリーとしてこれを怠ってはなりません。ボールへ関わりたい欲求つまりインテンシティにも影響してきます。ただし、前にも言ったとおり時間帯的に疲れていたり、前のプレーで集中を出し切っているとなかなか付いて行くのは難しい局面でもあります。インテンシティが高い状態というのは連続したプレーに耐えうる力とも言い換えられます。
しかし、常に100%で取り組むことはできません。8割の力で連続してプレーできるか、そこにサッカーの本質が隠れていると僕は最近思います。
カバーリングがなければこうなるのも必然です。飛び込んでかわされるより打たれて外してくれるのを祈るほうが総合して守りきれる可能性が高まるからです。この数的不利の対応は千葉はほんとに忠実にやっているなと思いました。身体能力さえ高ければブロックできた可能性があります。
じゃあ千葉はどうすれば守りきれたのでしょうか?少し遡って考えてみます。
ボールは鈴木の足元を抜けてポストマンにクサビが入ります。千葉はポストマンの横に密着するようにポジションを取っています。考えてみてください。
答えは手押しです
上の角度から見ると
パスが来る前のポジション取りで手押しを使うことで、相手の姿勢を崩すか、自分が意図する方向へ押し返すことができます。そして自分はぱっと離れて姿勢を回復し、いいポジションをとって準備します。相手の意図を遮り、自分の思い通りに相手を動かすのが手押しの目的です。これができていれば少なくともカットインはさせずに済んだでしょう。
スキップパスを読んでさえいればできたはずです。手押しには力でなくて予測能力が必要です。パスコースを読めないと相手が走るコースも読めません。接触ポイントを読めなければ手押しは使えません。
もちろん手押しだけでどうにかなったとは考えていません。一番の問題は打つべき対策があったのにそれをしなかったのか、できなかったのか、ということです。しないというのは判断なので状況に直面した選手を支持するべきでしょう。できなかったというのはそういう駆け引きがあることを知らないのか、あるいは知っていてできないのかということです。いづれにせよ、万策を持って危機に当たることが大事であり、特に日本の育成年代で指導されていない手押しについては、その応用力を考えただけで影響は多大であると考えています。
じゃあ最後に気に入ってるツイート紹介です
日本人FWの短所は、1対1の勝負を避けたり、シュートを打てる場面でパスを選択するなど、消極的なプレーをすること。腕や体で相手をブロックする基本技術が身に付いていなかったり、しかるべきタイミングでしかるべきスペースに飛び込む判断をできない選手もいた。マグノ・アウベス
— インタビュー記事bot (@soccer_comment) July 22, 2013
FWの話だけどDFにも言えることです。FWとDFて永遠のライバルで互いに技を盗みあって吸収してうまくなっていくんですよね。やっぱり本当の上手さは対戦しないとわからない、そういうことだと思います。
詳しく解説頂きありがとうございます。サイドバックのカバーについては、まったく気づきませんでした。センターバックは、シュートの時どうして体が寄せれなかったのか納得しました。シュートコースの限定くらいは出来たはずと安易に考えていましたが、サッカーの駆け引き、判断の難しさが詰まったシーンだったのですね。
返信削除今回はいきなりの不躾な質問に丁寧に解説頂き誠にありがとうございました。