シャビはもちろんバルサのブレインなんですが、彼が世界で最も(統計的に言って)秀でている点は"積極的にプレーしているのに圧倒的にミスが少ないこと”です。もっというと、以下の5点に集約されます。(ここで消極的にとはボールを外に蹴りだしたりして時間稼ぎを狙うプレーを言う)
- ゲームを読む力
- キック、コントロール等の基礎技術
- スペースの概念と表裏のキック
- いなすトラップ
- 正対を用いた運ぶドリブル
1を実現するために2〜4を用いていると考えると理解しやすいです。ゲームを読む力というのは僕は説明できないんですが、簡単に考えると「(攻撃や守備の)技術を用いて敵をコントロールすること」と言えます。そこから先の詳細は僕レベルのプレーヤーではあずかり知らぬ領域になります。では、ゲームを読む力を育むにはどうしたらよいでしょう?
多分、小さい頃から常勝チームの中心選手で居るだけのエリートか、チームモデルのはっきりしたクラブで育つことが条件になるかと思います。なぜかというと、評価や分析というのは少なくともひとつの軸がないとできないからです。ゲームを読む力というのはプレーしながら試合の分析をすることを意味します。ですから、常に同じ戦い方をしながら相手のリアクションを見て自分たちのやり方を変えたり、調整することがゲームを読む力につながると思うのです。毎試合、違う戦い方を強いられるチームでは、その場その場の局面で勝つことしか考えられなくなり、結果的に90分を通した戦い方を調整する能力は培われないでしょう。
寄り道しましたが、シャビのプレー指針は至ってシンプルで、彼のプレーイメージを実現するためにあらゆるテクニックを使うことです。プレーイメージとはチームプレーを軸とした創造性と言えます。
計画性というのがひとつキーワードです。シャビの計画の範疇に敵のプレー規範が収まっていればシャビの勝ちですし、それより逸脱すれば計画は失敗に終わります。ボールロストするということです。じゃあどんなときシャビにとって想定外の出来事が起こるのでしょうか?
動画を作ったので見てください。
シャビ ロスト from silkyskill on Vimeo.
世界で最もミスが少ないシャビでさえミスをするのに、アマチュア選手やユース選手のささいなミスを咎めることができるでしょうか?僕にはできません。シャビと同じような状況でならば。
この時シャビと同じような状況とはどんなときのことをいうのでしょう?
右の「マクロつなぎ論7 安定不安定2」であらかた説明してあります。再掲しますと以下のようになります。
- ボールが空中に浮いている
- ボール保持者がDFに1m以内に寄せられている、または身体が接触している
- ボールコントロールが乱れている
- ボール保持者のパスコースが読まれて味方が全員ぴったりと守備陣にマークされている
問題は自ら首を絞めるように、こういった状況に陥るポジショニングをとってしまう選手や、それを促す指導者が居ることです。
実は最近発見しつつある"浮き球処理”と"ボディコンタクト”を使えば、上記の1と2の問題を高確率でクリアできることが分かって来ました。ただ、100%確実な技術ではなく、あくまでも可能性を高めることが出来るという話ですが。
シャビなど中盤から後ろの選手にはこれらの"偶然を切り抜ける技”を身に付けていないことが多いように思われます。なぜかというと、ボランチや中盤の選手はビルドアップに関わることが多く、より確実なプレーを選択する傾向があるからです。確実にプレーするには敵からなるべく離れたほうがよく、したがって「寄せられる前にはたけ、絡まれる前に逃げろ」という結論が導かれるのです。ビルドアップではこれで間違いないのですが、アタッキングサードでは”アイディア不足”とか”攻撃センスが足りない”だとか言われてしまいます。シャビ・アロンソがドリブルで持ち上がった時の期待感の無さはこれですね。
反対にサイドハーフより前の攻撃手はビルドアップで安易なパスミスを起こしたり、ボールロストしても全く反省を見せない選手が多いように思います。代わりに寄せられたりイレギュラーバウンドしても落ち着いて状況を切り抜けることができます。顕著なのがメッシとエジルです。彼らはたまにひどいミスを起こすんですが、あたかも自分には責任はないかのように飄々としています。
シャビはロストを怖がっており、メッシは取られても飄々としてる、この差は何なのでしょうか?
一つはポジションの違いによる指導の受け方の違いというものがあります。どうしても指導者ならば攻撃手に甘くなり守備的な選手に厳しくなります。この差がボールロストへの責任感の感じ方の差に現れるのではないでしょうか。それと性格の違いもあります。やはり責任感が強いほうがより後ろ目のポジションに就くことが多くなります。結果としてプレーの安全度合いからアイディアを規定する思考回路が形成されるのです。
ここまでぐちぐち言い回すのはシャビが技術的に進化の余地があるとか、メッシは精神的にもっと責任感をもったほうがいいとか言うためではありません。彼らのプレースタイルの違いはキャラクターの違いに基づいているもので優劣は付けられません。一長一短なのです。ここで念を押したいのは攻撃手だけが持ち合わせている”偶然を切り抜ける技術”を一般化してすべてのポジションの選手に適用できないかということです。例えば、チェルシーのラミレスなんかは高い攻撃センスを持ちあわせています。これは稀有な例ですが、近い将来彼のように守備にも攻撃にも確かな技術を持った選手が巷にあふれるような時代が来るかもしれません。
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