2013年1月6日
ブスケツの戦術的役割1 攻撃編
ブスケツってほんと凄い選手なんです。彼を発掘したグアルディオラもすごいですが、彼自身の役割はバルサにとって代えの効かないものなのです。それなのに、「ブスケツ」で検索をかけると「チラ見」だとか「ダイバー」だとか散々な汚名を着せられていてホントかわいそうです。
それもこれも誰もブスケツの存在意義の大きさをわかりやすく説明できていないで居ることに原因があると思います。日本語文献はもちろん、英語圏のブロガーさんでさえ、ブスケツの戦術的役割をはっきりと説明できていません。そこで、僕が奮起して彼の汚名を返上すべく、彼なしにはなりたたないバルサの戦術の柱に迫ってみたいと思います。
第一回は攻撃編ということで、早速下の動画を
あたしが作りましたよ。今回は世界中誰でも理解できるように英語にしてみました。なもんで、日本語の解説をしようと思います。
まず第一章は"Lobs and Build-ups”なんですが、これはつなぎ論で説明した通りのことです。例えば、縦縦横、ショートショートロングといったものです。正確性を高めるには練習と試合で自信を高めるしかありません。
唯一、ブスケツについて鋭い分析をなさっている蹴球計画さんのエントリがこちらです。この記事の段階ではロブパスがうまくないという評価でしたが、ここ数年でその精度も大変上がっており、今ではサイドチェンジのパスも味方の足元にピタリと合わせることが出来るようになっています。
第二章は「positioning」つまり焦点プレーのことです。動きすぎず有利なポジションを取ることと、ボールホルダーから顔が見える場所に位置することは背反します。このバランスを上手く取れてこそ一流のピボーテです。
第三章はパススキルということで、これはつまり正対のことです。正対っていうのは覚えたら終わりじゃなくて、実践で何度もトライして駆け引きの精度を高めるものです。正対を覚えてやっとスタートラインに立てるわけであって、良いプレーヤーになるにはそこからさらに長い努力の道がまっていることを忘れてはなりません。
四章はパスの目的。ゾーンディフェンスの崩し方で見た通り、バルセロナは4番スペースでメシニエスタがパスを受け取るパターンを武器としています。攻撃におけるブスケツの役割のなかで最重要なのがこれです。バックラインからパスを受け取り、4番スペースへつなげること。普通はこんな簡単にできることではないのですが、ブスケツは次に見るコントロールと正対を利用して、この難題をクリアしています。
最後の章はボールコントロール=トラップです。くどいようですがコントロールの要項は蹴球計画さんのこちらで学んでいただくとして、ここでのポイントを簡単に説明します。
グラウンダーのパスを止めるとき、足を脱力してボールを上から挟むようにすると、逆回転がかかります。で、完全に足を脱力した状態でやりますと、足がボールの勢いに負けて後方に弾かれます。するとボールは勢いは止まるんですが回転が掛かっているので進行方向にわずかに転がります。この僅かな転がりを利用してターンしたり、キックのためのスペースを作るのがブスケツのプレーの真骨頂なんです。
他に、コントロールの瞬間、足に少し力を入れれば、ボールは前へ弾かれます。それを利用して、バックパスや横パスを受けた時にすぐに蹴れる場所にボールを置くこともできます。ピタっと止めて2タッチコントロールでいなす技も足の力の入れ加減で可能になります。次のプレーをイメージしたファーストタッチコントロールとはこのことなのです。
足の部位でもかかとに近いほうでやるとうまくいきません。拇指球の横でボールを上から優しく包み込むようにするとうまくいきます。対面パスの練習からはじめて三角パスや四角パスに発展し、最後にポゼッションゲームで実践感覚を掴むとよいでしょう。
次回は守備編
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すいません。また投稿させてもらいます。
返信削除この記事の動画の4:05~4:15までのメッシのプレー。
最初はすごすぎると思ってたんですが繰り返すうちにある種の違和感を感じました。
そこで、このプレーについて管理者さんにはどう映ったのかを聞いてみたい、というより解説してほしいと思います。
それと自分なりに分析したことを書き記してみます。
メッシはパスを出すのを含めて8タッチしてます。
その中で2つの違和感を感じました。
1タッチ目、ブスケツからのパスをコントロール
2タッチ目、マシューズフェイントからの背中ごしのDFをかわす
3タッチ目、メッシから見て右のDFをさっきかわしたDFがいた空いたスペースにドリブルでかわそうとする。
4タッチ目、右にきたDFを体をうまく使ってドリブルで交わす
5タッチ目、ゴールに向かうドリブル
ここまではうまい選手のプレーだと思います。
そして6タッチ目。普通はセンターフォワードの選手にパスを出す選択を選ぶ、しかしメッシは自分の前のスペースにドリブルしてより相手にとって脅威になる選択を選んだ。これは偶然ではなく、必然だったように思います。ただ、この技術はどんなものなのか・・。ここが違和感のひとつです。
7タッチ目、敵に囲まれた中で、スペースにドリブル
8タッチ目、セスクにパスを送る・・・。
違和感の2つ目はこのパスを送ったことなんですけど・・。
メッシは4タッチ目まではセスクの位置はみることはできていません。完全に背中を向けているからです。
見えたとしたら4~5タッチ目の間、そして最後の7タッチ目のときには完全に見えたと思います。
ただ、7タッチ目をするまではメッシとセスクの間にDFがちょうどいてメッシからは完全に見えることはまずありえません。また人間の目の構造上トップスピードに近いほど視野は狭くなります。だから7タッチ目をしてそして8タッチ目をするまでのほんの一瞬でパスの判断をしたメッシの判断力。
これはありえないと僕は思うんですが・・。
この技術は経験で培われるものなのでしょうか。
やはり先天的なものか・・。
僕はどこかしらに技術が隠されていると思うんですが。
管理者さんはどう捉えているか、教えてくれたらうれしいです
5タッチ目で飛び出すシャビの背後のスペースにセスクを見つけています。このときはまだセスクはDFの死角に入っておらず、かつシャビの動きがヒントになりセスクを見つけ出せたと思います。スペースは背中で作る、です。6タッチ目の直前から下を向いて背後の敵の伸びる足をみつけ、足の届かないところにボールを運び、あとは正面の敵を避けるために少しずらしてパスです。6タッチ目でパスを出さなかったのは5タッチ目でセスクを発見できたからということで説明できそうです。つまりよりよい選択肢を選んだということです。
削除確かに一連のプレーを見るとすごいものばかりで先天的なものと言う他になさそうです。普通の選手がきっちりみっちり練習を積んだとしてもこういったプレーが出来るとは考えられません。語弊があるかもしれませんが僕の直感で言うと、一流の選手はゴールから逆算された、計算しつくされたプレーをしているというより、自分の能力をいかせる範囲で適当にプレーしているように見受けられます。適当というか場当たり的というか。ただし局面局面の切り抜け方に正しい思考法というかアイディアの持ち方をしているように思います。それは正対であったりボディコンタクトであったり。
つまり正しい思考法を指導によって植えつけることはできるが、それが良い結果を生むかどうかは選手の力次第だと思います。タレントは育てるものではなく発掘するものという通念がそれをよく表しています。
答えの出ない議論になりましたが、また気になるプレーがあればコメントください。僕も十分考えてみます。
返信ありがとうございます
返信削除”つまり正しい思考法を指導によって植えつけることはできるが、それが良い結果を生むかどうかは選手の力次第だと思います”
この部分になってしまうんですよね。
それが指導者が作る環境で選手がいい方向になるように努力して見ます。
はじめまして。
返信削除今日初めてblog見させていただきました。
とても興味深い考察ばかりで感動しています。
時間をかけながら以前の投稿も読ませていただきます。
コメントにありますメッシのプレーについて私も感じたことがありますので少し意見させていただきます。
前を向いていたときに一気に2枚かわせたこと、前方にスペースがあったことがこのプレーの分かれ目だと思います。
一気に2枚かわしギャップに侵入し、相手2、メッシ1の数的有利をクリア。
この時点でメッシにゴールへの欲が出ていると思います。
さらに前方のDFの状態を見て相手が自分にプレッシャーをかけきるまで時間的余裕があります。
シャビが決定的な位置にいることからまずシャビへのラストパスを最優先順位とし、自らシュートも打てる場所へ。
初期の逃げ道は右のSBが寄せてきた時点でアウべスを確保。
最終的にはラストパスとシュートのどちらも可能性が低いとみてセスクが選択肢になった。
結論としては一連の流れにおいてセスクは求めてた選択肢ではなかったはずです。
ですが、メッシがセスクを選んだその時点では最良の選択肢だったと思います。
相手がいるスポーツですから一瞬のうちに今まであった選択肢は消え、新たな選択肢が生まれます。
メッシのこのプレーは常に前方への意欲を持ち、少々の欲を持ち、かつカウンターのリスクは必ず避ける。
非常にバルサらしいプレーだったと私は思いました。
稚拙な文章で申し訳ございません。。
「初期の逃げ道は」から訂正しますと、右前で張っていたのはペドロでアウベスではありません。それと最初から右へのプレーを逃げ道として確保しておいたとは思えません。
削除シャビを使うかセスクを使うかという選択肢において、この両者を二択、見合いで考えることでセットにしています。どちらが最良かではなく、結果的にはどちらでもよい、ただし相手の反応を見て決めるというのが判断の基準になったかと思います。このシーンではセオリー通りシャビを囮に使うことで、彼の背後のスペースを突くことに成功しています。あるいはアレクシスサンチェスへのパスだったかもしれません。
最後にメッシはカウンターのリスクなど微塵も考えていません。その証拠にメッシが逆起点になってカウンターの餌食になるシーンは結構散見されます。彼は常に貪欲にリスクの高い突破の方法を選んでいます。
その他はおっしゃるとおりだと思います。
また、よろしくお願いします
追記、動画を差し替えたため件のシーンは6:41からになっています。
削除返信していただきありがとうございます、うれしいです。
削除返信いただいた中で1つ教えていただきたいのですがメッシが常にリスクの高い突破の方法を選んでいるというのはなぜでしょうか?
確かにメッシが失い相手のカウンターの起点になっていることは承知しています。
ただ私はリスクを負うにはそれ相応のチャンスを得られないとリスクは負ってはいけないと思います。
今回のプレーはメッシがターンできたからシャビのランも生きて、セスクのフィニッシュにつながっていると思っています。
ターンして2枚置き去りにしたといってもその時点では相手の方が数的優位でした。
2枚置き去りにしたプレーはメッシの欲張り、その後侵入していく上でペドロは確保できているのである程度のリスクは回避している、だからもう少し欲張って侵入。というように考えていました。
もしかしたらメッシにとっては欲張りではなく、プレッシャーを感じてないリスクのないプレーだったのかもしれませんし、自らの後方は完全に数的優位だとすでに計算してリスクを回避している可能性もありますが。
ただメッシは微塵もリスクを考えてないとすると、メッシがリスクを計算してプレーするよりも危険な位置に侵入して行く方が相手にとって脅威であり、チームとしてメッシが失うリスクよりも得るチャンスの方が大きいということなのでしょうか?
“ただメッシは微塵もリスクを考えてないとすると、メッシがリスクを計算してプレーするよりも危険な位置に侵入して行く方が相手にとって脅威であり、チームとしてメッシが失うリスクよりも得るチャンスの方が大きいということなのでしょうか?”
削除そのとおりです。一言で言えばメッシが王様だからです。リスクを管理するのはメッシより後方の選手たちであり、もっといえばチーム全体で管理していることになります。こういういった庇護下にあるのでメッシは自由奔放にプレーできるのです。そしてそれが勝ち点を重ねるための、現時点で考えられる最もよい方法なのです。
例えば普通のチームでは、リスクマネジメントのために選手にルールを強制します。バルサで言えばブスケツやペドロにその比重が多く、相対的に言えば彼らはメッシに比べて創造性を発揮する機会は少ないです。ブスケツは最近そうした“足枷”が徐々に外れてきた感があり、時折創造的なプレーを披露しますね。
また、ビジャが苦しんでいるのもこのバルサルールの所為です。彼はホントはもっと縦に仕掛けたいはずですが、チームプレーを重んじて中へのバックパスを優先します。
とは言ってもメッシもチームプレー精神を持ち合わせています。それは彼がカンテラで育んだ素晴らしい特徴であり、前時代的なスタープレーヤーには見られなかった現代性の象徴でもあります。しかし、混同してならないのは、彼がチームプレーを発揮するのは、彼自身の性格からであり、決してチーム戦術に組み込まれているものではないという点です。僕はこのように理解することで、メッシの守備の怠慢と稀に見せる激しいチェイシングの矛盾に納得しています。良くも悪くも目の前の攻防に100%なんです。メッシは。
バルサが凋落するとすれば、メッシが通用しなくなる時がターニングポイントになると考えてます。今のバルサはメッシ、シャビ、イニエスタにあまりに依存しており、ひとまず彼らにパスを預けようという空気に満ち満ちています。そこでボール奪取できる守備力を備えたチームが台頭してくればバルサ時代はひとまず終わります。まぁそれも数年あるいは十数年後かもしれませんが。
ご返信ありがとうございます。
削除私はバルサゆえにバルサの哲学、戦術、規律が優先されていると思い込んでいました。
チームの型にあてはめ共通理解をもってプレーすることは大事ですが、やはりプレーする選手によって戦術を決めることもまたとても大事なのですね。
至極当然、簡単な考え方ですが見落としていました。
目からウロコです!
思い込みって怖いですね。。
でもこれが許されるメッシの存在はすごいですが、許されることをチームメイトに徹底して理解させたグァルディオラ、そしてそれを許容したチームメイトもまたプロフェッショナルですね。
とてもためになりました!
これからのサッカーに生かしていきたいと思います。
2度もお答えいただきありがとうございました。