footballhack: すねコントロール 〜略してスネコン〜

2012年10月8日

すねコントロール 〜略してスネコン〜

サッカーの上手さというのは信頼性だという話は前にしたんですけれども、さらに深く掘り下げて、サッカーの技術の高さとは一体なんでしょうか?「技術」と一言で言っても、ボールを奪うことやポジショニングや判断や駆け引きを通じた戦術眼まで、言及される領域は多岐にわたります。ここではサッカーの上手さを「ボールを扱うこと」に限定して話を進めていきます。


  サッカーの技術とは

サッカーの上手さは以下の5点に集約して整理することができます。
  • 正対
  • ニュートラル・コントロール
  • 浮き球の処理
  • ボディコンタクト
  • スペースの概念
※ドリブルやキックはもちろん技術の範疇に入るのですが、単純にフリーで運ぶドリブルやセットされてからのキックの技術は工夫のしがいがない=上達するには地道に練習を繰り返すしかないので、ここでは上手さの指標から除外してあります。むしろ選手の技術の高さを決定するのは正対を使ったキックやボディコンタクトをしながらのドリブルであり、この点でキック、ドリブルというのは上記の4点と絡めて考えるのが妥当だという理由もあります。

正対とニュートラル・コントロールについては蹴球計画様を御覧ください。ボディコンタクトについては当ブログにまとめてあるのでそちらを。スペースの概念は崩し論にまとめてあります。 今回はこの中でも偶発的要素が高い「浮き球の処理」に焦点をあてて、モダンなドリブラーが日頃から常用するテクニックをひとつ紹介します。




  高い浮き球

浮き球の処理についてはブログ開始当初にいくつか記事を書いておりまして、以下で読めます。

浮き球の処理 使えるリフティング技

浮き球の処理 使えるリフティング技2

上の記事ではボールをなるべく高いところで触れて、動かしていくことでDFの狙いをズラす技術を取り上げています。DFはボール保持者の行動を予測するとき、ボールの位置とボールホルダーの姿勢を見て守備予測を立てます。ボールが浮いていれば当然つぎにボールは落下すると考えるわけですから、守備者はボールの落下地点を目指してアタックを仕掛けます。ですから攻撃手は浮いたボールが落下するのを傍観して、みすみす守備者にボール奪取機会を与えてはならないのです。これが"足上げリフティング”の効能でした。特に胸トラップしたあとなど、ボールが腰より高い位置に浮いている時に非常に有効な技です。


  低い浮き球の処理

では、ボールが腰より低い位置で浮いている時はどうしたら良いでしょうか。

通常DFはこの位置にボールがあるとき、攻撃手がボールの落下するのを待って地面近くでエッジコントロールなどを使ってボールを運ぶと考えます。ですから、ボールが腰の位置まで浮き上がって降下し接地するまでの短い時間に、守備者は鋭く攻撃手に走り寄り、接地直前にボールにアタックを試みるはずです。短い時間ですが、ボールが浮き上がってから接地するまで、攻撃手がほぼ無防備状態になることを守備者は知っているのです。

そしてこの判断は守備者の経験則からくる本能によって下されています。理性でもって「あ、ボールが少し浮いたから落ちてきたところをタックルしよう」なんて考えてません。瞬間的な無意識レベルのうちに、守備者はこのような行動をとるようにトレーニングされているのです。

ですからそれを逆手に取って、攻撃手はボールが落ちる前になんらかのアクションを起こすことで、守備者を出し抜くことができます。

それが、スネあるいはヒザガシラを使ったボールコントロールです。

やりかたは簡単です。トラップ後にボールが少し弾んだ時、スペースに向かってスネやヒザガシラを用いてボールをプッシュするのです。

今度、動画作るんでできたらここに載せておきます。

このスネコンの使用頻度は数限りなくあります。

例えば、スローインを受けるとき。スローインというのは受け手が必ず浮き球のパスをコントロールしなければならない、非常に難しいプレーのうちの一つですが、このスネコンを使えれば、浮き球の処理からドリブルへの移行を非常にスムーズに行えます。

まずファーストタッチを胸、お腹、もも、インサイドなどで行います。そのまま利き足と逆の手でDFを抑えながらスネでボールをプッシュし、ボールバウンドを低くします。次にスリータッチ目でボールに触れる時はボールはほぼグランダーの状態に抑えられています。このプレーはFC東京のルーカスなどブラジル人選手や、アレクシス・サンチェスが得意としているのでよく観察するとよいでしょう。

次に挙げる例は、イレギュラーバウンドのコントロールです。特に育成年代やアマチュアレベルでは土のピッチや荒れた芝の上でプレーすることが多く、このイレギュラーに対応する力が随所に求められます。ゴロパスを受けても直前でボコっとボールが跳ねて、ファーストタッチが浮いてしまったために相手に寄せられてボールを失うことは、誰しも経験があると思います。

すねコントロールを使えれば、こんなときでも焦らずに柔軟な判断を下せます。DFはボール保持者のトラップミスを狙えと常々訓練されているので、あなたがトラップミスをしてボールを上に跳ねあげた瞬間、DFは嬉々として猛烈にアプローチしてきます。そんなときはボールがまだ50cmくらい浮いている時にヒザガシラを使って、DFの脇へプッシュしてやれば簡単に入れ替わることができます。

またトラップから即、主導正対へ持ち込みたい時も、ファーストタッチが成功したか否かに関わらず、スネコンでDFに二択を迫ることができます。このプレーはメッシやアレクシス・サンチェスが行なっているのを確認しているので、これもよく観察してみてください。


  ニュートラル姿勢を維持する

すねコントロールの良い点は、ランニングフォームを崩さずに行える点です。膝の高さに浮いたボールをインサイドやインステップでコントロールしようとすると、どうしても足を高く上げる格好になり、走行スピードが一歩分遅れます。この一歩が致命的になる場合があります。

特にDFと並走しているとき、わずかに弾んだボールを足で捉えに行くと、上記のように一歩遅れてDFにタックルさせる隙を作ってしまいます。スネでボールをプッシュすれば、ランニングフォームを崩さないのでスピードを落とさないどころか、相手より早く走ることができます。なぜなら、上述の通りDFはボールが落ちるのを待っているからです。浮いたボールを動かされることは想定してないからです。よって、DFのタックルは未遂に終わり、DFはボディバランスを崩す結果になります。ですから、足が速くなくともスネコンだけで並走するDFを出し抜くことが可能なのです。ほんの一瞬ですが、一歩や一瞬の勝利が大事です。

足を高く挙げないことはニュートラル姿勢の維持につながります。上手さとはニュートラル姿勢をどれだけ維持できるかということだ、という主張を蹴球計画さんはおっしゃっております。僕もそのとおりだと思います。もちろん、走っている時はニュートラルではないんですが、ニュートラルなランニングフォームを維持することは走行速度の向上に一役買います。そういう意味でスネコンの意義は甚大だと思っています。


  偶発性を支配する

今回取り上げたテクニックのキーワードは偶発性です。いままで、このテクニックを意識したことがなかった人も、何らかの形でスネコンを使い、敵のプレッシャーを脱したことがあると思います。偶然を必然にすることが上達には必要不可欠です。偶発的現象を一歩引いて見直し分析し、その現象の蓋然性を向上させていくことでまたひとつ新たなスキルを手にする、これが上達の真髄だと僕は思っています。

浮き球を相手と競りながら処理することは、サッカーの中でも成功率が非常に低いプレーです。マイボールか相手ボールになるか半々ってところが通常相場です。このプレーを確実に成功させることがチームの勝利のためには必要になってきます。偶発性を支配するというと矛盾ですが、確かにサッカーにはそういうことが求められているのです。



次→ショートバウンドの処理〜腹トラ、モモトラの巻〜

3 件のコメント:

  1. 初めてコメントさせていただきます。
    いつも興味深く読ませていただいております。
    朝、ふと見ると新しい記事が!
    良い朝でした。

    今後とも楽しみにしております。

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  2. アグナコトル月曜日, 7月 15, 2013

    子供がローバウンドの浮き球での処理が、よくないので良いサイトを
    探してこちらにたどり着きました
    色々参考にさせていただきます。

    あと質問ですがすねコン、膝頭プッシュの動画編集も参考になりました
    個人的にはバックで流れる曲名とアーティストも気に入りましたので
    教えていただければと思います。

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    1. どうもありがとうございます。曲はalaの「shiny」です。

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