今回は4-4-2のシステム同士がぶつかった時のことに限定して考えます。
左図のように赤青の人型が攻撃側を示し、黄色の丸が守備側を示すことにします。
まず、守備側について考えます。守備をするときは、DFラインをどこに設定するかを最初に考えます。そこで、始めにDFラインをペナのラインに引いてリトリートして守るときのことを考えます。
ペナの幅にサイドの選手を置いて、均等にスペースを埋めるように3ラインを築くのが一般的です。このように中央を固め攻撃をゴールから遠ざけます。
この際、サイドのスペースを空けてしまいます。必然的に相手にサイドのスペースを使わせてしまう現象が生まれます。
ボールが赤丸のゾーンに動かされたら、全体でスライドして数的同数か優位をつくるようにしてボールを奪う必要があります。
つまり4-4の2ラインで守る時、相手に赤丸のゾーンに侵入されることは、ある程度前提として考えなければなりません。
次に相手が攻撃時に取りうる選手配置について考えます。
Aは4-4-2のサイドの選手がひとつずつポジションを上げ2-4-4になっている図です。
4バックのシステムでは攻撃時に基本的に両SBは高い位置を取ってビルドアップを開始します。こうすることで前述のサイドのスペースを有効に活用することができます。
逆にSBが高い位置を取れない場合、ビルドアップ時に相手の前プレをうけやすくなります。
この攻撃の形は4-4-2を採用するJリーグのチームの多くが取っています。両SHがより中央に絞って2-4-2-2の形も頻繁に見ることができます。
Bは中盤の4人がダイアモンドに位置した形です。南アW杯のスペイン代表などがこの形でした。
これはより中央に人数を割くことでボールポゼッションを高め、両SBにより多く攻撃参加させる形です。
中盤の選手が相手よりもボールキープ力に優れていればこの形が機能するはずです。
B’は上のBの形に対してよりサイドでの支配力を強力にした形です。南アW杯でスペイン代表がポルトガル代表相手に見せた形です。
この形ではゴール前に人がいなくなるので、速攻ができません。ゴール前に人を走りこませる時間を稼ぐために遅攻を優先します。
ゴール前を固めて守備をするチームに対して、まずサイドに人をかけて攻略することでゴールチャンスを創造します。
Cは両SHを高い位置にあげた形で、4-2-4になっています。
この形から効果的な攻め方は、SBを経由して速いクロスを上げる方法です。相手ゴール前に人数を増やし、そこに素早くボールを供給することでゴールチャンスを増やします。また、こぼれ球もゴール付近で拾えるのでセカンドチャンスも狙え、相手陣内深いところからのプレスも可能です。
この陣形では中盤で数的不利になるので、なるべく中央にはボールを通さずに、サイドから迂回して攻める必要があります。
ちなみに左のC’は4-3-3の形ですが、Jリーグ10シーズンで名古屋や清水の取る形です。
彼らはCのシステムと同じようにパスを外から迂回させて展開し、早めにゴール前にクロスを送ります。
こういった戦い方では必然的にSBが攻撃の主役になります。ザッケローニ氏が日本には優れたSBが多いと発言した理由もよくわかります。Jのチームの戦い方はSBが目立つように設計されているのです。
じゃあ次は最初に説明したDFのシステムと2-4-4を重ねてみます。
すると、守備側のボランチ二人が余ります(赤丸の二人)。その他の選手は見事にマンマークにハマります。これが4-4-2同士では選手の個々の能力が試合を左右しやすいと言われる所以です。
守備側はボラの2人がフリーなので、攻撃側としては中央へのクサビのパスはインターセプトされるか受け手のところで囲まれて奪われる可能性が高まります。
よって必然的にサイドにボールを回すことになります。4-4-2同士でサイドの攻防が多いのはこのせいです。特に日本では香川のように中央で狭いスペースで前を向ける選手が少ないので、サイドに展開せざるを得ません。
もう一度上の図を見ると、攻撃の選手の中で比較的相手ゴールに近く、比較的フリーな選手はやはりSBの選手です。よってSBにボールを展開してそこからクロスを入れるという攻め方がやはり効率がよさそうです。
次にFWが守備に参加しない場合を考えます。
この時、赤の四角で囲まれた中央のゾーンで守備側の数的不利が発生します。
この時の中央の数的不利感が、SHの選手の意識を中央に寄せてしまいます。すると下図の状態が生まれます。
SHが中央の守備に加担することで、相手のSBをより高い位置まで侵入させてしまい、守備全体が後手に回ります。
良い守備は守備者各個人のやるべきことがはっきりしている状態で実現可能です。対応すべき対象が一つに絞られている状態のことです。
ボールか、スペースか、人か。人に付くならば誰に付くべきか、この判断が早い段階で出来れば、いい守備が実現していると言えます。
左の例では、SHが中央のカバーリングに行けばよいのか、それとも相手SBにつけばいいのか迷ってしまいます。
このように選手が2択に追い込まれてしまうのは悪い守備です。
話は飛びますが、守備側のSHを内側に引き止めることでサイドを深く攻略することを、人為的に行うシステムが、前述のBです。←
守備側のMFのラインより手前に攻撃側の人数をかけて安全なパス交換を実現します。これによって空けたサイドのスペースを攻撃的なSBに狙わせます。
これをされると、守備側としてはボールポゼッションを与えてしまい、サイドも深くえぐられるのでやられてる感が強まります。しかし、最終的には 中央で跳ね返せれば失点しないので落ち着いて対応すべきです。
上述のように守備側にとって、味方ボランチの前で自由にパスを回されると、後手に回ってしまいます。
よってFWには厳しく守備にあたってもらうべきです。←通常このように一人がCBにプレスをかけもう一人がパスコースを切りながら中盤の守備を助ける方法が考えられます。
また、相手ボランチがボールを持った際、FWが後ろからダッシュして寄せると、ボールを簡単に奪えることがあります。ぜひ、FWには守備を手伝ってもらいましょう。
次に前線からの守備を考えます。
←のように前線から守備にあたる場合、まずFWが相手CBにプレスをかけて相手のSBにボールを持たせるところから始まります。
なぜなら、SBはタッチラインを背にしているためパスコースが少なく、 サイドに追い込み易いからです。
前線から守備にあたる場合、基本的にはマンツーマンでいきます。
一人でもマークを外してしまうと、その後カウンターを喰らい、前から行く意味がなくなるからです。
方法としては2つ考えられます。
1 後ろから押し上げてスライドしながらマンツーマンで付く。
2 FWが追い込むようにチェイスして、後ろで網にかける。
左は 1の方法です。
前線で追い回す味方の努力を徒労に終わらせないために、後ろの選手は連動してボールサイドに寄せていかなければなりません。
そのためにはどこからプレスに行くか、誰がどのように動くかあらかじめ決めておく必要があります。
4-4-2同士の場合、必然的に両チームの選手がピタリと重なるので、この方法でマンツーマンディフェンスを組む方法が簡単です。
左は2のFWに追い込ませるやり方です。
この方法はFWに守備面において戦術的な負担と体力的な負担を強いることになります。FWには頭のいいチェイシングが必要ですし、 それを可能にする走力も必要です。この方法ではFWの体力的消耗が激しくなるので、試合後半にFWの交代が必要になります。
FWが相手のCBとSBの両方を看ます。まずCBにボールを持たせて、CBからSBに横パスをさせます。
パスコースを切りながらSBを追っていき、左図になったら完了です。
このへんの話は下のビデオで語られています。
こうすることで、FWには大変な負担を強いる反面、相手の攻撃を後ろで待ち構える味方の網にかけることが可能になるので、MF以下の選手はバランスを崩さず、体力も抑えて守備ができます。
そのかわり、FWが相手のビルドアップのパスワークでかわされてしまうと、←と同じ状態になり後手を踏むので注意が必要です。
以上、守備ラインを自陣深くに引いた場合と前線から守備にあたる場合を考えてみました。その中間地点に守備ラインを引いた場合どのように守備にあたるべきかは、チームの方針や相手チームとの力関係によって変わります。監督やボランチCBの選手を中心に話しあって、チームの意思を統一することが必要不可欠です。
まとめ 4-4-2で守備時に気をつけることは、前線からプレスを掛ける場合誰がどのように追うのか決めること。リトリートする場合はMFラインの前のスペースを自由に使わせないこととサイドのスペースにボールを運ばれた場合どのように守備をするか決めることです。
次→4-4-2のサイドハーフの守備
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