はっきり言って、サッカーの質はJと変わらないように見えた。前へ急ぎすぎ、不用意なボールロストが多く攻守が切り替わりすぎ、ルーズボールが多すぎ、フィジカルコンタクト多すぎ、楔のパスを狙いすぎ、といったJでも見られる問題点を抱えていた。
そのなかで圧倒的に違うのは、個々の選手のフィジカルの強さ、切り替えの速さ、観衆の熱気、審判のレベルの高さなど。
香川の良さはパスの流れを作りながらラストパスやフィニッシュができるところだと思っていた。ちょうど先日の日本代表対パラグアイのゴールのように、中盤に引いいてきてボールを受けて、ワンツーやドリブルなどでゾーンを上げていき、バイタルにするするっと侵入してから「最後の仕事」をするような。
こういうゲームの組み立て方が出来る攻撃的選手については、日本は数多く輩出している。中村俊輔、松井、小野、前園、などなど。いずれも、まずは自分がボールに触れてから何かを起こそうという考えを強く持った選手たちだ。
こういう選手は時としてチームの「お荷物」になることがある。バランスを考えずにポジショニングを崩し、低い位置までボールを受けに来るが、パスコースがないので難しいプレーをしようとする。オシムはこういうプレーを指して、「ピッチにソファを持ち出しタバコを燻らせる」と言った。まったく的を得た表現だと思う。ちょうどこの試合のジエゴのように。
一方、今日の香川はどうだったかというと、パスの流れに途中から侵入して綺麗にゴールを決めてみせた。このプレーはパスの流れを理解し、先読みし、次の次にボールが来るであろうスペースへ位置取ることで、相手のDF陣形の隙間をつくプレーであり、日本人の歴代の攻撃的MF達がなかなか持ちあわせていなかったポジショニングセンスである。
そして、得点後に見せたのが、ボールの配給役として、敵陣をグラグラ揺らすパスワークである。ボランチの位置まで引いてボールを受けて(悪い癖かもしれないが)、左に一回右に一回横パスを入れ、縦へのパスコースを空けて、フリーの味方の足元に速いパスを入れ前方にラン。ワンタッチの落としを受けてそのまま縦のスペースにドリブルで侵入するかと思いきや、落としをくれた仲間へ横パス。この時点で、この仲間の選手へ、ペナ外15Mほどの地点に広大なスペースと時間をプレゼントすることに成功していた。
今後はトップ下のプレーどころか、セントラルMFの仕事もこなせてしまいそうな、サッカー頭脳のレベルの高さを見せたプレーだった。パスの流れを考え、ドリブルとパスの方向を調整することで、敵陣の隙間に侵入し、味方に前向きかつフリーでボールを渡すプレーだ。
今後の課題はつなぎが不安定の時にボールを奪われないポゼッションをできるようにすることだろう。つまり、前向きで受けられなかった時の判断がまだ良くないので、相手の守備網に自チームのつなぎがハマったときにうまい逃げ道をつくってあげられるようになれば、どのチームからも重宝される存在になるでしょう。
一方の長谷部選手はというと、後半から投入されたものの守備にさく時間が長く献身的に守備をこなしていた。ボールを受けたときは暴走気味のジエゴに優先的にボールを渡しているように見えた。バランサーとしてのチーム内での存在価値は高いだろうが、監督がその他の選手にもっとはっきりした役割を与えてあげないと、長谷部の良さが全く活きてこないでしょう。
おわり
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