footballhack: 優れたドリブルのスタイル 2歩1触の可能性

2010年12月5日

優れたドリブルのスタイル 2歩1触の可能性

このブログでは再三にわたって2歩1触というドリブルのスタイルの優位性を説いてきました。その内容の一部は→の「メッシのドリブル 2歩1触」と目次の2タッチコントロールのシリーズで説明しています。

欧州で活躍する選手のほとんどがこの2歩1触でプレーしていることが、このスタイルの優位性を証明しています。ペドロやフレブなど一部の選手は両足でプレーするところを見ると、2歩1触のスタイルが最善の手段であるとは言い切れません。しかし、よく指導者が口にする「精度の高いファーストタッチコントロール」や「視野の広いパス」や「ゴールを意識したプレー」は、この2歩1触により可能になることがより多くの人に知られるべきだと思います。

■「2歩1触」とはどのようなプレーなのか
2歩1触とは言葉どおり、2歩で1回ボールタッチするプレーのことを指します。大抵の場合、利き足のみでボールを扱うことになります。左利きの選手の殆どがこのようなボールの持ち方をします。これは右利きの選手と比べると、使う脳の部位が異なることが原因だろうと思われます。

2歩1触のプレーは体の向きに対して常に同じ位置にボールを置くことを意味します。利き足の前方やや斜め外方向です。ボールの位置に体を合わせるのではなく、センチ単位でボールの位置を調整することを自動化させ、ボールを意のままに操ることを目標にする技術です。


2歩1触でプレーできる選手は、あたかもボールが足にくっついているような印象を与えます。ボールと共に移動するということが極めて自然に行えます。また、常にボールを押し進めてプレーを行うので、スペースの活用法を自然に学べます。


■2歩1触のメリット
前に別の記事にも書きましたが、2歩1触のドリブルから得られるメリットは以下のことが挙げられます。

1 いつでもキックができる → いつでもパスで逃げたりキックフェイントを使える

2 いつでも方向転換ができる → 取られそうになったら体を入れられる

3 ボールがいつも同じところにあるので、ボールを見なくてもよい → 顔が上がる

4 いつも同じ体勢でキックが出来る→ボディバランスを崩さないので強いパスが蹴れる

サッカーで一番重要なのが状況判断です。2歩1触でプレー出来れば、ボールの確保と視野の確保が同時に行えます。これは高いレベルでプレーする上で極めて重要なことです。

2歩1触は観ること、ボールに触れること(コントロールやドリブル)、ボールを蹴ること(パスやシュート)の3つを同列に考えます。左記の3つは2歩1触の中では同じ現象として考えるのです。これが、選手に流れをもたらし、ボールを扱うことを、空気を吸うことくらいに自然に行うようにさせるのです。自然にプレーすることで相手を欺く多くのトッププレーヤーは、コントロールとドリブルとキックの境目がなく、流れる水のようになめらかな動きを披露してくれます。


■2歩1触から発展可能なプレー
以下に2歩1触のボールタッチから可能なプレーをできるだけ具体的に書き出してみます。小さい予備動作でスムーズに移行できるプレーだけを羅列しました。

・インサイドキック

・アウトサイドキック、トウキック、チップキック※1

・キックフェイント(アウト or イン)※2

・180°方向への切り返し(アウト 足の裏)※3

・アウトサイドで利き足側へ、インサイドで軸足側へ抜ける突破 参考動画→LearnFromMessi_0001.wmv

・マシューズフェイント 参考動画→Sir Stanley MATTHEWS dribbling compilation - christinayan (0:27からです。) 


・ダブルタッチ(利き足イン→逆足イン 利き足アウト→利き足イン)※4

・利き足でのシザースフェイント※5

・足の踏み変えによるリズムの変化

・マタドールターン

・ゴールに向かったドリブルの仕掛け

2ステップ

※1 ボールが常に足元にあるためほとんど予備動作(助走や軸足の踏み込み)のないキックが可能

※2 キックフェイントというよりキックキャンセルに近い。2歩1触ドリブルではボールタッチと同じ姿勢からキックをすることが可能。このため、DFにプレーの意図を読まれづらいという特徴がある。中盤においては、キックの動作を伴わなくても、視線だけ周りに配って少し大きな蹴り足の引き上げを伴いながら2歩1触のドリブルで突き進むだけで、相手DFがドリブルのコースを空けてくれることがある。

※3 アウトサイドでの切り返しはほとんど予備動作なしでできるが、足の裏でのストップは膝を少し高く上げるため読まれやすい。しかし、足の裏でのプレーはその後360°どの方向にもボールを動かせるのでとても意外性が高い。インサイドでの切り返しやクライフターンは体の向きを変更せねばならず動作が大きくなる。その上、進行方向を相手に教えてしまう。キックフェイクとしてなら有効。

※4 ダブルタッチは狭いところを抜いていくのに極めて有効。ただし、逆足イン→利き足インのダブルタッチは予備動作が大きくなり相手に読まれやすい。なので、利き足側に行きたい場合は利き足アウト→利き足インのダブルタッチを使うといい。

※5 常に利き足側にボールを置く2歩1触のスタイルでは、逆足での跨ぎ動作は現実味を帯びない。わざわざ仕掛けのタイミングを相手に教えるようなもの。両足でプレーする選手にはこの限りでないが。

以上が21世紀初頭までのサッカー史において、淘汰され洗練されてきた技術体系です。つまり、これらは速く考え速くプレーするために選手達に選ばれ続けたテクニックであるということです。それ以外のテクニック達はオプションに過ぎないというのが持論です。

■2タッチコントロール
2歩1触の考え方ではボールを常に自分の支配下に置くこと(利き足の前にコントロールすること)が最も重要になります。

パスを受けてからボールを支配(コントロール)するまでの時間が短ければ、その分余裕を持って顔を上げることができます。そのためにトラップの際はボールを注視します。続いて2タッチ目で完全にボールを支配下に置き、同時に顔を上げることで、トラップ時の2歩1触が完成されます。方法は右記を参考にしてください→「2タッチコントロールが有利なわけ」


上記のとおりに2タッチコントロールが実践されれば、おのずとファーストタッチの精度が上がりますし、同時に有効な視野の確保も可能になります。これによって視野の広いプレーのための条件が満たされるのです。


■仕掛けるプレー 
2歩1触で目指すべきレベルは、どんな速度でプレーしていてもボールを支配することです。

アタッキングサードでは、ボールを常に利き足の前にコントロールすることで、常にシュート体勢をつくることが非常に重要になります。「いつでもシュートできるんだぞ」という姿勢をDFに見せつけることで、ゴール前の攻防を有利に運ぶことが可能になります。

この姿勢こそが「ゴールを意識したプレー」の条件になると思います。

2タッチコントロールからのミドルシュートあるいは2タッチ目でDFを外してシュートなどのプレーはトップレベルの試合で頻繁に見られます。

高速で敵に接近する仕掛けにおいても、2歩1触で行えば、ボールコントロールを失わないので、少しずらしてシュートコースを作ったり、相手の出方を見て逆を突いていくプレーが可能になります。抜いた後もボールを近くに置き、すぐにシュート体勢に持ち込めるので、かわすためだけのドリブルや相手を欺くためだけのプレーが減ります。


以上の説明のとおり、2歩1触は人体構造上ごく自然な動きで、一つの予備動作から多様な選択肢を得ることができ、戦局を有利にすすめるために必要な技術だと考えています。そしてファーストタッチの精度の向上、有効な視野の獲得、ゴールを意識したプレーの習慣づけも期待できます。


関連記事→2歩1触のための超基礎

次→明日から使える正対技 静止ver


 

10 件のコメント:

  1. はじめまして。こんなブログがあったなんて!
    サッカーが好きになり、日々フットサルやサッカーゲームを楽しんでいる者です。

    上手くなるため、より深く知るために、
    今までもいろいろなWEBサイトを見つけては
    勉強していたつもりでしたが、、感激しました。

    コメント記述時点では全てを拝見している
    わけではないのですが、今から読むのが楽しみです。

    これからも拝見させていただきます。

    取り急ぎお礼まで。

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  2. コメントありがとうございます。身内以外でこんなに暖かいコメントは初めてで嬉しいです。

    並行して蹴球計画というHPも見てみてください。全くの他人のブログですが、そちらのほうが感激しますよ。

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  3. 返信ありがとうございます。
    実は蹴球計画は頻繁に見てます。
    更新が止まってしまっているので、待ち遠しいところです。
    ドリブルに憧れがあるので、いま私にとっては
    こちらがホットですが、どちらも素晴らしいサイトです!

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  4. ドリブルについては蹴球計画さんのおっしゃる「正対」という考え方が基本になるわけで、こちらのブログではどのように正対を使うかという重箱の隅を突くような技術論の展開になっちゃってるわけです。2歩1触でドリブルしていてもスラロームになってしまっては意味がないのです。

    それでも読んでいただけたら光栄です。

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  5. こちらのブログには何時もお世話になっています。
    質問なんですが、右利きの選手が左サイドに開いて、もらった時にサイドスッテップしながらドリブルする選手がいますが、これはどんな効果があるのでしょうか。例をあげますと、http://www.youtube.com/watch?v=lwqFxXimsJA この動画の0:40秒辺りのイニエスタが突破するシーンです。正対しているのですが、プレーベクトルが相手にむいていません。できればこのようなプレーを分析していただきたいです。

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    1. ちょっとよくわからなかったのですが、0:44~0:46の三人目を抜くプレーが該当するのでしょうか?

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    2. http://www.youtube.com/watch?v=5flCBITMtfM
      これの4:50とかはどうでしょう?

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    3. 正にこれです。説明不足ですみません。

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    4. サイドステップを使ったドリブルは、正対しながら、断続的に浮きニュートラル状態を作り出し、リズムを変化させDFの同調を破るのに適したドリブルです。いわゆる独特のリズムってやつですね。タッカタッカタッカ。

      浮きニュートラルについては最近の蹴球計画さんが詳しく記事を投されているのでそちらをご参考に。

      独特のリズムについては、当ブログの「独特のリズム」「同調、リズム、ドリブル」等をご参考ください。

      あなたの言うプレーベクトルとは、ドリブル時にボールを動かす方向のことですよね。DFに向かっていくのではなく平行に動かすことで、正対状態を保ったまま間合いを保てます。正対状態を保ったままですので、左右のどちらにも抜ける「見合い」を用いて敵を牽制できます。

      更に浮きニュートラルから急激に加速することで、敵に加速のタイミングを悟らせることがありません。DFとしては「目の前から一瞬で消えるように、突然加速して抜かれた」と感じると思います。

      浮きニュートラル=軸足の2度着きのテクニックは、また、急激な方向転換や加速に向いています。直立の姿勢から足を大きく外側に着き、上体を進行方向に倒すようにすると、地面から最大の反発力を得ることができるからです。

      つまりこの技は「動的正対」技のひとつとして考えることが出来るでしょう。

      いづれ動的正対技についてもまとめようと思います。

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    5. 分かりやすい解説ありがとうございました。

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