footballhack: 観る4 視野の5W1H 方向

2012年1月14日

観る4 視野の5W1H 方向

長らく長らくお待たせしました。視野の確保 5W1Hシリーズの続編です。かなーり前になりますが、良い視野の確保のためには首を振るタイミングが重要だということについて書きました。
「観る3 視野の確保の5W1H その1」

ボールから目を離すタイミングがつかめたら、次は観る方向のことを考えてみましょう。

前、横、後ろの順に難易度が上がる                 

左図は相手ゴールに向かって立った状態を想定しています。つまり、前とは攻撃方向で、後ろとは自チームゴール方向を指します。

観る方向とは、読んで字の通り、首をふるべき方向です。方向には大まかに言って前後左右の4つがあります。そして斜め前と斜め後ろを加えた8方向を基本に考えれば良いと思います。(ポジションにより観るべき方向に制限がある場合がありますが、ここではより一般的な話をするために中盤の中央の選手を想定して書くことにします。)



前を観ない選手はいないと思います。なぜなら、前方にこそ目指すゴールがあるからです。といいつつ時には前を観ることより優先して横や後ろを観るべき局面があります。詳しくは後述します。

次に横なんですが、レベルにもよりますが、大体小学校4年生くらいまで、横はなかなか向けないと思います。9,10歳当たりから、横方向への意識付けが出来れば上等で、12歳までには前と横の2つを組み合わせて攻撃を組み立てられるようになれば良いと思います。ですから、横を向くというのは小学生レベルの話なので割愛します。

図で赤い矢印が示すように、後ろを観れる選手は高校生年代でもなかなかいないように思います。バルセロナのシャビやセスク、特にシャビをよく観察すると、ボールを受ける直前に後方に首を振っているのが分かります。


なぜ攻める方向と反対の方向に首をふるのかというと、敵にボールを奪われない為です。後方というのは大概自分の背後を指します。背後は死角なので、相手のFWがチェイスバックに来るのに気づかないと、容易にボールを奪われてしまうのです。自分に余裕があるのか、前を向いてファーストタッチをして良いのかを判断するために、特にボランチの選手は必ず直前に後方を確認しましょう。

まとめると、
  1. 前を観る→当たり前
  2. 横を見る→12歳までに出来るようにしましょう
  3. 後ろを見る→中央の選手には必須の技術
前が見えるようになったら横を見るように努力し、横を意識できるようになったら後方へ首を振るように試みましょう。「前や横を観ることに加えて」、というのが大事で、後方に注意を払えるようになっても、前方を意識することを忘れないように。

ゲームの流れを意識して戦術眼を磨く               

ここからはパスのつなぎの流れや試合の流れを読んで、首を振るべき方向を決定する方法を解説します。つまりは戦術眼の磨き方ですね。

またここで、戦術眼とはという話になるんですけど、これはつまり、サッカーを知るということに尽きます。ではここで言うサッカーとはなにか、これを幾つかに分けると、
  1. パス(つなぎ)
  2. 収束と拡散
  3. ルーズボール
  4. 守備
の4つになります。今回は1と2に限って話を進めます。

攻撃方向とはつなぎの道筋

つなぎのセオリーについては「ミクロつなぎ論」 という記事で解説しているのでそちらを参考に。

さて、パスを繋ぐ時に観るべき方向は、必ずしも相手ゴール方向が第一優先になるとは限りません流れに沿うようにプレーすることを理解すれば、相手ゴールへ一直線に向かう攻撃が悪手になりうるということが実感できます。

まずは、つなぎの最も初歩的なセオリーである「右から来たら左、左から来たら右」に照らしあわせて考えてみます。
 至ってシンプルです。左図のように右からパスが来たら左方向へ首を振り、左からパスが来たら右方向へ首を振りましょう。

このプレーは将棋で言うならば、初手2六歩、7六歩くらいの基本定石で、悪手になることは滅多にありません。

逆サイドを向いて、ダメそうなら同サイドに戻せばよく、始めに逆サイドを観る行為自体が、有効な判断につながります。



次に見るのは、「縦縦横、横横縦」です。

 自分にパスが回ってくるまで、同じ方向に2回ボールが移動していたら、自分の所で攻撃方向を変化させてやります。

例えば、縦ドリブルから縦パスと縦に連続してボールが動いていたら、次に自分にパスが回ってくるまでの間に、横を見ておきます。(青丸が対象プレーヤーです)

あるいは、横パスが2回つながった後にパスを受ける時は、事前に縦を見ておきます。





このようなセオリーは、情報の限定に役立ちます。つまり、本来なら相手チームの守備者全員の挙動と位置を確認しなければならないのですが、つなぎのセオリーを使えば、彼ら全員を観ずに済むのです。守備者はボールの軌道によって、定形通りに動く傾向がありますから、それを利用すれば、頭の中でDFの動きをイメージできます。観なくても良い情報は捨ててしまうことで、本当に観たいものだけを選別することが出来るのです

線だけではなく面でイメージすることも必要

 次は収束と拡散のセオリーです。収束と拡散については以前書きましたのでそれを参考に。

「首を振る方向」をテーマに書いてる今回の記事ですが、注意をはらうべきはひとつの方向だけでなく、その遠近感や人の密度にも及びます。

つまり、方向を線だとするならば、遠近感は面で捉えるのです。

自分の周囲10~15mの範囲を観たいのか、30m以上遠くを観たいのかがハッキリしていれば、自ずと視野に入れておくべき方向が分かってきます。
例えば、周りの人口密度が高く、陣形が収束していたら、事前に遠くの味方を見ておいて、長いパスを通し、相手の守備陣形を拡散させることが有効です。
反対に人口密度が低ければ、無理に長いパスを試みる必要はなく、自分の周囲を見渡して、近くから打開を試みるべきです。

ここが誤解を生みやすいポイントで、日本にはパスは長ければ長いほど良いとされる風潮がありますが、それは全く間違いです。

陣形が拡散していれば、ボール周辺には十分なスペースがあるので、近くから崩したほうが有効なのです。近くから崩して守備者を引きつけて収束させてから長いパスを狙えば、綺麗に崩すことができます。


これを応用すると、一つ飛ばすパスになります。

近い味方を囮にして遠くの味方に出すパスは、一つの挙動で収束と拡散を駆け抜けていく、まさに魔法のパスです。






これらつなぎのセオリーを意識していれば、パスを受ける前に首を振る時、どこを見れば良いのか自然と分かってきます。セオリーを理解することは、予測の精度を高めます。読みが鋭くなれば、どこを観なければならないのか、またどこは観なくて良いのかといったことが分かってきます。情報の選別が精度の高い判断力を生み、パフォーマンス向上につながります。

「自然にできるようになる」だとか「セオリーを理解すれば」とか書きましたが、これらは頭で分かっているだけでは意味がなく、実際には体で覚える必要があります。そのためには練習が不可欠で、特にポゼッションゲームやグリッドトレーニング、パスワーク練習が主に用いられる手法になります。

バルサBの試合を見るとわかるのですが、 かれらはこれらのセオリーをふんだんに使って試合を進めています。ほんとにセオリー通りでびっくりするんですが、それが(ちゃんと練習すれば)誰にでもパスサッカーが出来るということの証明でもあります。バルサのトップチームはセオリーを超越したところにいるんで(特にシャビイニエスタブスケツセスク)その辺はまだまだ研究対象ではあります。

まとめ:戦術眼を磨くことで首を振る方向を決定することが出来る。そのためにはセオリーの理解とそれを実践に活かすトレーニングが欠かせない

追記 最近こちらの読者様のうちの数名が他のHPへ訪問してコメントを乱発する事象が散見されます。コメントをする際は、よく考え、広く読み、自身で実験あるいは実証し、その上で疑問が浮かんだらコメントをして下さい。回りくどい表現やへりくだった言葉選びは必要なく、簡潔で鋭い視点を求みます。コメントから着想を得るということも十分ありうるので、新たな発見があったら是非是非書きこんでください。

次→観る5 視野確保の5W1H 対象

6 件のコメント:

  1. お訊きしたいことがあるのですが、「縦縦横、横横縦」について、例えば、横パスが2回つながっていたら、次は縦を見ると上の記事に書いてあるのですが、これは「右から来たら左、左から来たら右」と矛盾しているのではないでしょうか?また、この場合どちらを優先したらいいのでしょうか?

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  2. 矛盾して居ません。横横縦の2番目の選手に注目してください。一本目のパスを受けて2本目のパスを出すときには右から来たら左、左から来たら右になっていますよね。横横縦は右→左、左→右からの派生だと考えてください。

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  3. バルサの選手たちは、この「つなぎのセオリー」をなぜ知っているのでしょうか?例えば僕はこのブログを見ない限り、一生「つなぎのセオリー」を知らないままだったでしょう。

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    1. それは僕にとっても同じです。結局のところここで紹介しているセオリーはほとんどがバルサのサッカーから抽出したものですし、つなぎのセオリーに関しては高校の恩師の教えそのものです。センスのある選手がセオリーを構築し、それをチームメイトに伝え、素晴らしいチームが出来上がります。そのチームを見て観客や他のチームにもセオリーが波及していきます。そして指導者から子供たちへ伝えられていくのです。これを世代間の伝承といいます。

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  4. よく顧問の先生に「ボールをもらう前に次のプレーをイメージしておけ」と言われます。例えばボールをもらう前に「aくんにパスを出そう」とイメージしておくとします。ただ、サッカーではaくんが今フリーでもボールをもらったらaくんがマークされていることなんか多々あります。そうなれば、aくんにパスを出すことだけを考えていたわけですから、結局パスをどこにも出せなくなります。なので、顧問の先生が言っていることは間違えていると思います。

    この考えはあっているでしょうか?

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    1. あなたは間違っていて顧問の先生は正しいです。理由は・・・以下記事を読めばわかります。同じ質問を顧問の先生にもしてみてください。

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