footballhack: ポジショニング5 焦点位置とプレーイメージ

2012年1月13日

ポジショニング5 焦点位置とプレーイメージ

攻撃時のポジショニングに関して以前4つの記事 にまとめましたところ、結論としては複数のDFの中間地点に位置取ることが有効だとしました。このポジショニングを実践すると、パスが回れば回るほど、自分に優位な流れを呼び込むことが出来ます。

つまりは3Dポジショニングはピッチの中央でプレーすることを可能にさせ、よりゴールの近くでのプレーが可能になるということです。ごっつぁんゴールも増えますし、一見崩れてない様に見えるがするするとゴール前へ到達しているようなプレーも増えます。

今回はこれより少し踏み込んで、3Dポジショニングからのプレーモデルをひとつ紹介します。

名付けて『焦点プレー』です。将棋の手筋である「焦点の歩」から着想を得ました。

では説明。





左図ではボールホルダーがフリーで前向きです。右側の水色の選手がパスを受けるとします。

このまま受けると、距離が近い方のDFに狙われるため、2人のDFの間に入ります。
このように直近の複数のDFと等距離を保つようにポジショニングします。ここまでは以前説明した 3Dポジショニングのとおりです。

このとき、サイドステップかバックステップを使うようにすると、体の向きと準備姿勢を整えられます。

ここでパスが出たとします。
例えば、片方のDFが寄せてきたら、ワンタッチで出し手に返して、DFが寄ってきたスペースを使うように攻撃を始めることが出来ます。

左図では出し手がリターンを受けて寄ったDFが空けたスペースを使ってドリブルをしています。








焦点プレーをするには必ずしもDFとDFの間にいなければいけないという事ではありません。次の例を見てみましょう。




左のように2人のDFを結んだ線上に入れなくても、
等距離を保つようにポジショニングできれば同じ事が出来ます。
寄ってきたDFが生んだスペースを使うイメージを持つとよいでしょう。

ポイントは複数のDFと等距離に立つこと。これにより、守備側は誰がアプローチに行くのか迷うことになります。うまい具合に相手が一瞬お見合いをして寄せてくるのが遅れれば、ターンをして自分で仕掛けることも可能です。

守備の狙いをぼかすことで僅かな時間を稼ぐことが出来るのが利点です。それにより、先手を打った攻撃が可能になり、こういう細かいことの積み上げがゴール前でフリーの選手を作ることに繋がります。

このプレーの成功には味方との協調が大前提です。味方が同じプレーイメージを共有していなければ折角DFを寄せて作った時間とスペースが無駄になってしまいます。チーム全体の共通意識としてスペースの概念の理解が必要です。

では実践例から2つほど紹介します。

場面はバルセロナがビルドアップで左から右に攻めているところです。

センターバックからボランチにパスが入ります。

このときボランチは敵の間に入っています。
パスを受け、ダイレクトでリターン。

白の守備側のうち、点線で示した左の選手が、バルサのボランチにアプローチに行っています。

リターン(縦のワンツー)を受けたセンターバックは白のFWのチェイスバックにより空いたスペースを通すようにパスを送っています。
次の例も同じようにバルサの組み立てから。
バルサは右から左に攻めています。

パスがSBからCBを経由してMFに入ります。

MFの選手は相手FWの焦点にポジショニングしています。
パスを受けた時、比較的近い方のDFが寄せてきたので、
彼がもともといたサイドを使うようにパスを通しています。

これにより、バルサMFに寄せた白の選手はバルサSBにプレッシャーをかけることができなくなってしまいました。

いわゆる寄せパスってやつですね。






もちろん焦点で受けてから、間をとって縦パスを入れたり、ドリブルで持ちだしても構いません。実際、上の例では守備者が縦をケアしたことで、横パスを出す隙が生まれていますから。

ここで念を押して言いたいのは、パスを受ける位置と受けてからのプレーイメージを直結させて考える習慣をつけることです。パスを受ける位置とは自分と敵との位置関係のことを指し、プレーイメージとはいわゆる判断力というやつです。

この2つを直結させることはすなわち判断スピードの向上を意味します。受けてからどうしようと悩むのではなく、ここで受けたら相手はこうやって反応するだろうなというイメージを持っておけば、先手を打ってプレーできます。

こういったプレーはブスケツやイニエスタらが得意とするところで、特にシャビは焦点プレーからの組み立てやフィニッシュに繋げる崩しが非常に上手いです。多分シャビはもっと高度なプレーイメージを持っていると思われますが、今回取り上げたように、ポジショニングで相手DFをどうやって動かすかということについては彼の右にでる者はいないでしょう。

画像は下記から
0:28と8:58のシーン



4 件のコメント:

  1. 連続投稿すいません。
    焦点プレーのイメージの共有は日頃の味方とのコミュニケーションだったり、経験だったりが重要だと思います。それについて書いて下さるのはsilky skillsさんぐらいなのですごく感謝しています。

    そんな中一つ質問があるのですが、上の記事の一番最初の図で表した例で、2人のDFと均等な位置にポジションを取ると書いてあるのは分かるのですが、この例では、2人のDFの線上にポジションを取っています。ただ、これだとボールを受けたときに敵を引きつけることは出来ますが、その分プレッシャーを受けてしまいます。そこで、図の2人の線上より右側でボールをもらえば、フリーで受けられると思います。簡単に言うと、上の例は2Dポジショニングだと思うのですが・・・

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    1. 確かに言うとおりで右に抜けたほうが速い攻撃に繋がります。しかしそうならないのは、移動するだけの時間的余裕がないことが一因にあると思います。ブスケツを見るとよくこの動きをしているのですが、彼がなぜこの動きを好むのかは僕にとってもまだ謎です。追って研究していきたいと思います。

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  2. 僕は中学校のサッカー部に入っているのですが、ぼくはこのブログを発見するまでつなぎのセオリーを全く知りませんでした。例えば、バルサのつなぎは綺麗ですけど、そのつなぎにパターン(右から来たら左・縦縦横・一つ飛ばすパスなど)があることを知りませんでした。なので、このつなぎのセオリーを知っているのは、チームで僕だけだと思います。でも、チームの全員がこのセオリーを知らないと、チームとしていいつなぎが出来ないのでしょうか?

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    1. おっしゃるとおり、チーム全員が理解していないと出来ません。ですから、まず監督がこれらのことを知っていなければ、セオリーを練習に落としこむことが出来ず、よって試合でスムーズなつなぎを披露することは不可能になるでしょう。

      ただし、チームメイトのひとりでも「サッカー理解度」が高ければ、仲間へ伝達し、共通理解を育むことができます。チームで一番上手い選手はそのチームへの影響力が非常に大きいものです。つまり、上手い選手=信頼できる選手にのみ、これらの伝達と意思統一が可能になります。

      それはこのセオリーを知っているあなたしか出来ません。ぜひ仲間の意識を高め、良いチームをつくることにチャレンジしてください。

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