footballhack: 考えて走る8 日本人FWが好きなプルアウェイ

2010年9月27日

考えて走る8 日本人FWが好きなプルアウェイ

前回はFWは↓の緑のゾーンにどうやって侵入したらよいか考えました。今回はこのゾーンを拡大してカウンターアタックについて考えます。


中央2対2という非常にシンプルなシーンについて考えます。試合中に遭遇したら確実にシュートまで持って行きたいシーンです。↓


良いカウンターアタックの条件とはなんでしょうか。簡単に整理すると、まずはスピードを落とさずにスムーズにシュートにつなげることです。そのために、ダイレクトプレー的な判断で相手DFに後手を踏ませるようにします。

そこでボール保持者に必要になることは、前進するドリブルです。後ろから追いかけてくる他のDFに追いつかれないようにしなければなりません。これはドリブル方法論で触れました。

サポートする選手に必要なのは、ボール保持者を助ける動きと裏を狙う動きです。

この辺に気をつけてカウンターアタックを見ていきたいと思います。ここでは特にサポートする選手の動き方に注目して考えていきます。

とその前に前回のFWのゴール前での動き方の説明で使用した図をもう一度見てみます。



このゾーンの中を通って、ゴールに向かって走っていけばシュートが決まるという話でした。そこでこのゾーンを縦に拡大します。↓


ペナの端とハーフラインの間まで奥行きを拡大しました。(青いゾーン)なぜこうしたかというと、

カウンターアタックではこのゾーンからはみ出ないように走ることが大事になるからです。

このゴールエリアの幅から外に出てしまうとゴールのチャンスは遠のきます。

では順を追って考えていきます。まず理想的なカウンターの形から。↓


決定的なゾーンへ直線的なランニングで侵入しています。こんなプレーをさせてくれるDFはプロではまずお目にかからないでしょう。というくらいザルDFですね。

普通は中へのパスと中へのランニングは警戒されます。よって↓のようにプルアウェイでボールを引き出すことがよいとされています。


日本人が好きなプルアウェイ(膨らむ動き・ウェーブの動きなどとも言われる)です。この動きはボール保持者を助けますし、自分もマーカーから離れることができます。そしてパスが来れば相手DFとゴールに近い位置で1対1ができます。1対1で勝負できる選手なら有利な動き方です。

しかし、そうでない場合、DFとしてはしめたものだと思うはずです。FWがゴールから離れてくれました。しかもこの状況なら時間をかけて守れそうです。

このようにプルアウェイで青ゾーンから出てしまうとゴール到達まで時間がかかってしまいます。

さらに日本人が好きなプレーはプルアウェイを重ねる動きです。↓


駆け引きの中で何度もプルアウェイを繰り返し、マーカーから離れボールを受けようとします。結果、危険なエリア(青いゾーン)からどんどん離れていってしまいます。パスを受けたときにはウィングのポジションくらいまで開いてしまうことも度々あります。

ではどういう動きがより効果的かというと、↓の図のように、青のゾーンの中でプルアウェイと前へのランニングを繰り返す動きです。下の図はイメージです。


このように青のゾーンからはみ出さないように、しかも攻撃のスピードを落とさないようにランニングしながら出し手とタイミングを図ることが大事になります。実際的には↓のようになります。


A:ボール保持者が前を向いて仕掛けのドリブルを開始したら、彼の前方のスペースを開けるようにプルアウェイで自分のマーカーを引きつけます。そして青色のパスを受けられるように準備します。

B:ここまでパスが来ない場合、ボール保持者はまだ余裕があるが選択に困っている、あるいは自力でのドリブル突破を狙っていると考えられます。外に開きすぎたと感じたら、今度は内側へのランニングに切り替え、緑色のパスを狙って動き出します。ボール保持者には左側へドリブルの進路をとるように促します。

C:まだパスが来ない場合、ボール保持者は縦パスを断念し、適切なパスコースを探すことになるでしょう。このときもう一度プルアウェイで膨らんであげるとパスを受けられるかもしれません。プルアウェイを繰り返して外へどんどん広がってしまうケースに比べ、このほうがゴールに近い位置でより中央にポジションを取ることが出来ます。

↓のような感じです。


DFの心理としてボールサイドに注意が集まる傾向があります。上の図の左側のDFは自分がマークすべき選手が内側へ絞る動きを見せると積極的に付いて行こうとします。なぜならそうすることでボールサイドのカバーリングもできるからです。カバーリングとマーキングを同時に行えるので、中に絞る動きに関しては自然と行なわれます

反対にFWが外へ膨らむ動きに関しては付いてけないことが多いです。なぜなら、その瞬間DFは内へのカバーリングと外へのマーキングの判断に悩まされるからです。選手にとってボールが一番大事であることは周知の事実ですから、この時DFはボールサイドのカバーリングを優先してしまう意識が働くのです。

このようにプルアウェイを使用する際は自分がピッチ上のどこにいるかを把握する必要があります。中と外へのランニングを切り替えることでマーカーと駆け引きをし、それと同時にパスの出し手とのタイミングを図ることができるのです。

以上説明したゴールエリアの幅からはみ出さない動きを実践すると、パスの出し手と受け手の呼吸がぴったり合わない限り突破は図れません。プルアウェイを繰り返して外にどんどん膨らむ動きに比べると、プレーの難易度は非常に高くなります

カウンターの場面ではより積極的にゴールを狙うことが求められますし、そこで時間をかけるようではカウンターアタックは成功しません。難易度が高いがゴールに近いプレーを選択するか、より確実だがゴールからは遠のいてしまうプレーを選択するかは、カウンターアタックに遭遇した選手の判断です。

参考 England v Bulgaria 親善試合 20100903
↑のリンクをクリックでイングランドのカウンターアタック(2:05)を見れます。この時ENGのFWのデフォー選手の動きが秀逸ですので御覧ください。

次は考えて走る9 オーバーラップ


6 件のコメント:

  1. ラーイト86土曜日, 12月 31, 2011

    はじめまして。プルアウェイというのはフォワードだけでなく、サイドの選手も裏でボールをもらうときに使っています。プルアウェイというのはどういう点で優れているのですか?

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  2. ラーイト86さん 「ポジショニングという技」、「考えて走る サイドステップと後ろ走り」 という記事を参照ください。

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  3. ラーイト86金曜日, 1月 06, 2012

    プルアウェイというのは「サイドステップ」で外にふくらんで前にダッシュというイメージでいいのでしょうか?

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  4. @ラーイト86さん 記事中の状況下ではクロスステップが有効で、一般的にプルアウェイというとバックステップを指します。プルアウェイ、ウェーブというのは戦術的な動きの名称で、その方法は歩こうが走ろうがなんだっていいのです。

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  5. 新しく自分で発見したんですが、パスを出した後の動きのセオリーで、「縦パスをしたら横(斜め)に動き、横パスをしたら縦に動く」です。もし、このセオリーを理解すればパスアンドゴーにおいて、どこに走ればいいかと分かると思います。

    間違えていれば教えて下さい。

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    1. 攻撃において使う面積を広くするというセオリーに習えば、上記のような動き方が導き出せると思います。ただし、必ずしもこのセオリー通りに動くべきではなく、場合によってはパスの受け手に寄るようにあるいは離れるように動くことも必要かと思います。ご自身で色々試してみてください。

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