どんなものかというと下の図を御覧ください。
別に特別なものでもありません。左のように3選手が一直線に並び、端の選手がパスを出します。この場合は隣の選手を狙うより奥の選手を狙うほうがチャンスが広がるということです。
あるいはこういう言い方もできます。一つのパスに反応する2選手がいた場合、より遠くにいる方の選手にボールが渡ったほうがチャンスになりやすい。
パサーからの見え方は左図のような感じです。
とりたてて語るところもなさそうなパターンですが、サッカーにおいては非常に重要な意味を持ちます。これが「観える」か「みえない」かは天と地ほどの差があると言えます。
では、このパターンにはどのような意味があるか説明していきます。
まずはDF心理を説明します。DFの原則はチャレンジとカバーです。ですから、DFは必ずボールに近い相手選手から順にマークに付きます。
すると、左図のように一つ飛ばされると守備の集団意図を崩されてしまい、そこに穴を作ってしまいます。これが一つ飛ばすパスの狙いです。
10/11欧州CLの決勝、バルサvsマンUのメッシの2点目は丁度左図のような形から決まりました。イニエスタがシャビを飛ばしてメッシへパスを送ったため、パクは逆をつかれてしまいエブラもビディッチもカバーリングに遅れてしまいました。
加えて、このパターンで使われるパスに特別なパスフェイク動作は必要ありません。なぜなら、奥を狙ったキック動作そのものが、手前を狙ったパスフェイクになるからです。通常、DFはボールホルダーのキックモーションを見て次の手を読みます。このパターンの場合、同じキックモーションからキックの強弱だけで2択をDFに迫ることが出来ます。DFとしてはしょうがなく、よりボールに近い側に高い注意力を払わざるをえないので、奥が空いてしまうのです。このパステクニックがDFの習性を利用した技であるということがよく分かっていただけると思います。
斜めにするとこんな感じです。斜めのパターンはスルーパスやサイド突破など最後の崩しでよく使われます。
頻繁に見るのが左のような形です。奥の選手が走りこむところに、水色の線のパスフェイクを使ってDFを引きつけて、一気に裏を取ります。
DFは目の前のマーカーに気を取られてしまい、カバーリングに回るのが遅れるので、崩すのが容易になります。
もうひとつのパターンは左のように、近い選手が走りこむ形です。
2選手間を横切るように味方が駆け抜けてくれば、奥の味方のマーカーはそちらのカバーリングに気を取られますので、その隙に奥の味方へパスを送れば、マークを引き剥がした状態でボールを渡せます。
縦のパターンはゲームのレベルに関係なく頻繁に見ることができます。
例えばGKからのパントキックを前線でFWが競りあって、抜けてきたところをもう一人のFWが狙う形もこのパターンで見ることが出来ます。
あるいはスローインでもこのような形はよく見られます。
崩しで使うとなると左図のようになるでしょう。
クサビを受けに降りてきたFWの裏をSHが狙うような形です。
スルーパスとクサビの見合いで見たように、味方のすぐ近くを抜くとパスが綺麗に決まりやすいです。
クロスからゴールするシーンを集めれば、ほとんどがこの形から生まれていることがわかるでしょう。CKからのゴールもこの形から多く得点が生まれることが分かっています。→蹴球計画「CKを好きになろう」
競り合いを抜けてくるボールはDFの意識が剥離しやすく、ポケットのように小さな空白がボールの軌道上に現れる傾向があります。目測と人の意識のギャップを狙って、味方の影に飛び込めばチャンスは必ずやってくるはずです。
パスは出し手と受け手の二者関係で成り立っていると考えている人が多いと思いますが、サッカーのゲームにおいては三者関係かそれ以上で成り立っている場合がほとんどです。上で見たように、一つのパスを取ってみても、出し手受け手に加えてもう一人関係したほうが容易にパス交換することが出来ます。
日本では未だ、三者関係というと「第三の動き」だけがフォーカスされる風潮があります。第三の動きやワンツーだけだと崩しが直線的になって相手に読まれてしまうことが多いのです。それではダメだと一言いって終わりたいと思います。
最後にメスト・ウズィル選手の目の覚めるようなパス集をご覧いただきお別れです。
ウズィルは中学生の頃、学校の用務員さんにチェスの手ほどきを受けたそうです。そのお陰か、彼のパスは3手、5手先まで読んでいるかのような急所をえぐってきます。羽生名人は「羽生マジック」と言って50手近く読みますが、サッカー選手の場合は3手以上先が読めれば十分な気がします。3手詰めの詰将棋をやりましょう!
次→クロスのトレンド1
関連→味方を追い越してフリーにさせる
とりたてて語るところもなさそうなパターンですが、サッカーにおいては非常に重要な意味を持ちます。これが「観える」か「みえない」かは天と地ほどの差があると言えます。
では、このパターンにはどのような意味があるか説明していきます。
まずはDF心理を説明します。DFの原則はチャレンジとカバーです。ですから、DFは必ずボールに近い相手選手から順にマークに付きます。
すると、左図のように一つ飛ばされると守備の集団意図を崩されてしまい、そこに穴を作ってしまいます。これが一つ飛ばすパスの狙いです。
10/11欧州CLの決勝、バルサvsマンUのメッシの2点目は丁度左図のような形から決まりました。イニエスタがシャビを飛ばしてメッシへパスを送ったため、パクは逆をつかれてしまいエブラもビディッチもカバーリングに遅れてしまいました。
加えて、このパターンで使われるパスに特別なパスフェイク動作は必要ありません。なぜなら、奥を狙ったキック動作そのものが、手前を狙ったパスフェイクになるからです。通常、DFはボールホルダーのキックモーションを見て次の手を読みます。このパターンの場合、同じキックモーションからキックの強弱だけで2択をDFに迫ることが出来ます。DFとしてはしょうがなく、よりボールに近い側に高い注意力を払わざるをえないので、奥が空いてしまうのです。このパステクニックがDFの習性を利用した技であるということがよく分かっていただけると思います。
斜めにするとこんな感じです。斜めのパターンはスルーパスやサイド突破など最後の崩しでよく使われます。
頻繁に見るのが左のような形です。奥の選手が走りこむところに、水色の線のパスフェイクを使ってDFを引きつけて、一気に裏を取ります。
DFは目の前のマーカーに気を取られてしまい、カバーリングに回るのが遅れるので、崩すのが容易になります。
もうひとつのパターンは左のように、近い選手が走りこむ形です。
2選手間を横切るように味方が駆け抜けてくれば、奥の味方のマーカーはそちらのカバーリングに気を取られますので、その隙に奥の味方へパスを送れば、マークを引き剥がした状態でボールを渡せます。
縦のパターンはゲームのレベルに関係なく頻繁に見ることができます。
例えばGKからのパントキックを前線でFWが競りあって、抜けてきたところをもう一人のFWが狙う形もこのパターンで見ることが出来ます。
あるいはスローインでもこのような形はよく見られます。
崩しで使うとなると左図のようになるでしょう。
クサビを受けに降りてきたFWの裏をSHが狙うような形です。
スルーパスとクサビの見合いで見たように、味方のすぐ近くを抜くとパスが綺麗に決まりやすいです。
クロスからゴールするシーンを集めれば、ほとんどがこの形から生まれていることがわかるでしょう。CKからのゴールもこの形から多く得点が生まれることが分かっています。→蹴球計画「CKを好きになろう」
競り合いを抜けてくるボールはDFの意識が剥離しやすく、ポケットのように小さな空白がボールの軌道上に現れる傾向があります。目測と人の意識のギャップを狙って、味方の影に飛び込めばチャンスは必ずやってくるはずです。
パスは出し手と受け手の二者関係で成り立っていると考えている人が多いと思いますが、サッカーのゲームにおいては三者関係かそれ以上で成り立っている場合がほとんどです。上で見たように、一つのパスを取ってみても、出し手受け手に加えてもう一人関係したほうが容易にパス交換することが出来ます。
日本では未だ、三者関係というと「第三の動き」だけがフォーカスされる風潮があります。第三の動きやワンツーだけだと崩しが直線的になって相手に読まれてしまうことが多いのです。それではダメだと一言いって終わりたいと思います。
最後にメスト・ウズィル選手の目の覚めるようなパス集をご覧いただきお別れです。
ウズィルは中学生の頃、学校の用務員さんにチェスの手ほどきを受けたそうです。そのお陰か、彼のパスは3手、5手先まで読んでいるかのような急所をえぐってきます。羽生名人は「羽生マジック」と言って50手近く読みますが、サッカー選手の場合は3手以上先が読めれば十分な気がします。3手詰めの詰将棋をやりましょう!
次→クロスのトレンド1
関連→味方を追い越してフリーにさせる
はじめまして。いつもこのブログを参考にさせていただいてます。質問ですが、「重なったら一つ飛ばす」の記事に書かれている、「重なる」シーンというのは、試合中のどういう状況の時に起こるのですか。教えて下さい。
返信削除@インサイドさん 出し手からみて味方が重なって見えた時です。あるいは2人の選手が一本のパスの軌道上に並んだ時とも換言できます。この時、一直線に並ぶといっても厳密な直線ではなくて、ある程度のいい加減さを持っています。
返信削除記事中の動画の中で言えば、1:23 1:30 1:42 2:06 2:12 2:46 2:50 3:02 3:47 4:47 4:31 5:03 のシーンを指します。とにかく一本のパスに反応する選手が一人でもいる場合、この状況はいつでも起こりえると言えます。併せて「クサビとスルーパスの見合い」も御覧ください。
ご返信ありがとうございます。試合でもこの事を意識してみます。
返信削除疑問に思ったことがあるのですが、例えば、上の記事の上から3番目の図なんかは、真ん中にいる選手がボールをもらって、ディフェンス(中央の選手へのベクトルの矢印が向いている選手)を引きつけてから、一番右にいる選手にパスを出したほうがいいと思うのですが・・・ また、そもそもこの図では、オフェンスが3人、ディフェンスが2人、と、オフェンスのほうが数的優位だから一つ飛ばすパスが可能であって、もしディフェンスも3人で数的同数だった場合、一つ飛ばすパスはあまり意味がないのでは?
返信削除真ん中の選手を経由する選択が勧められる場合は、右のDFが右の選手へ直接送るパスを読んでいる時です。普通はボールの近くから警戒するので、飛ばすパスが有効になります。
削除真ん中の選手を経由する方がよいという考え方に対しての反駁は以下のとおりです。
例1)真ん中を経由する場合
1 左の選手のキックモーションに対して右のDFが反応する。
2 右のDFが真ん中の選手へアプローチする
3 真ん中の選手がボールを受け、右の味方にパスを送るためにキックモーションをする
4 3に対して右のDFは右の選手へスライドを開始する
5 右の味方へボールが到達するまでの間、右のDFは移動して右の攻撃選手に近づくことが出来る
例2)真ん中を経由せず飛ばす場合
1 左の選手のキックモーションに対して右のDFが反応する。
2 右のDFが真ん中の選手へアプローチする
3 ボールは真ん中の選手の目の前を通過して右の選手へ向かう
4 右のDFはボールが真ん中の選手の目の前を通過するまで、右の攻撃手に対してアプローチを開始できない
5 右の選手にボールが渡るまで右のDFは走って移動する
例1と例2の違いは何かというと、「真ん中の選手のボールプレーの有無」です。つまり、飛ばすパスは、真ん中の選手が「止め」て「蹴る」動作をする時間を短縮することが出来るということです。攻撃手がボールを「止めて」から「蹴る」までの間、DFには、「考え」「移動」する時間が与えられます。この時間がないということは、DFに守備陣形を立て直す時間が与えられないということです。
換言するならば、こういうことです。真ん中の選手から右の攻撃選手へボールが渡るまでの間に右の守備者がどれだけ移動できるかイメージしてください。
例1の場合は、真ん中の選手がキックモーションで足を後ろに振り上げた瞬間に、右の守備者は右の攻撃手へ向かってスタートを切れます。しかもスタートをきる瞬間、このDFは止まっていることができます。振り上げられた足がボールにインパクトするまでの間に守備者は加速に入ることが可能です。
例2の場合は、ボールが真ん中の選手を通過した瞬間にスタートをきることができます。しかしこのとき、守備者は真ん中の選手へアプローチをしているので、体が流れています。必然的にスタートダッシュを切るタイミングが遅れます。また、ボールが止める蹴るの過程を踏まないので、真ん中の選手からノーモーションで右の選手へパスが出たことと同じになります。結果、右の守備者は予測が遅れ、右の攻撃手に近づくことが難しくなります。
以上は僕の脳内サッカーイメージを表したまでで、もちろん「読み」や「パススピード」他、も重要な因子です。あとはご自身で思索、観察、実地検査してください。
数的同数の定義が難しいですね。数的同数と一言で言っても、それぞれのマーカーがマーク対象に対して完璧なポジショニングを取ってるシーン(守備調和)と、ゾーナルディフェンスのようにマーカーに対してのカバーリング位置が曖昧な場合とがあります。
前者の場合、飛ばすパスは実現しません。完璧なポジショニングとカバーリングなら飛ばすパスというアイディア自体無効になります。しかし、実際の試合では、完全な守備調和を保った時間はそれほど長くありません。一瞬の隙を「飛ばすパス」で突くからこそ美しい崩しが実現するのです。
特に後者のように守備を組み立てるチームに対して飛ばすパスは一段と有用性を高めます。
もっと簡単な表現を思いつきました。「DFに2度追いさせる暇を与えない」です。これだけ細かい説明を読んで僕がこのパスにかける思いを汲み取っていただけたら幸いです。
返信削除非常に分かりやすいコメントありがとうございます。silky skillsさんはすごくこの、「重なったら一つ飛ばす」にこだわりをもっていると思うのですが、なぜそれほどにこだわりがあるのでしょうか?
返信削除①一般的に広く知られていないセオリーである
削除②サッカーのあらゆる局面で応用できるセオリーである(もちろん守備時も)
③戦術理解度を一段階上げるテクニックである
④時間軸、空間軸、DF心理を利用した高等テクニックである
からです。
この方法は実用性に欠けると思います。
返信削除理由は
近くの選手へのパスコースを切った時、
一緒に遠い選手へのパスコースも消えてしまいます。
この場合守備に必要な選手は一人です。
でも守備からしたら守備にかける人数が多ければ多いほど
数的優位がつくりにくく守りにくいです。
浮き球を使えば?とおいうこともあると思いますけど
当然遠い方の選手にも守備をする人はいますので
浮き球を使えばトラップがズレたりして奪われる確率は上がります。
なので相手の守備の人数を増やし、確実性を上げる方法を
とった方がいいと思います。
その方法とは
近くの選手が左右にズレるだけです。
そしたら最低でも2人、多くて3人は必要になってきます。
もしそれで守備側が読んでいるというのなら、
ズレた選手によって空いたスペースを利用して
押し上げればいいと思います。
そおすれば勝手に相手の守備も崩れていきます。
否定的な文章を書きましたが、クロスを上げると時は
賛成です。
コレを批判としてみないでほしいです。
この方法は悪魔で僕、個人の意見です。
コレからのサッカー観で参考になったらと思います。
否定的なコメントをしてしまい
申し訳ありませんでした。
コレからも読ませてもらいたいと思います。