footballhack: クサビとスルーパスの見合い2

2011年1月11日

クサビとスルーパスの見合い2

ちょっと前回の引き続きでクサビとみせかけてスルーパスを出すプレーを考えてみます。このプレーは4-4の2ラインを敷いてブロックを作る守備に対して非常に有効なので覚えておくとお得だと思います。



前回の単純化した図よりもっと実際的な状況を下に図にしてみました。フットサルをイメージしてみました。
 左図のような選手の配置は(アマチュアレベルであれば)よく起こると思います。

水色が攻撃側、オレンジが守備側です。

左図のようにクサビを狙う動作からスルーパスを繰り出したときのDFの動きなどを書いていきます。







 まずピヴォが受けに行きます。このとき、クサビを受けられる状態であり、DFの意識を引き付けられば、ボールに寄っても寄らなくてもどっちでもいいと思います。









 ボールホルダーのキックモーションとともにDFの意識がピヴォに集まります。

この瞬間ピンクの楕円で示した範囲に守備陣の意識が向かいます。オレンジの線はDFの視線や意識を表しています。この楕円は次に起きるであろうピヴォ(水色)とフィクソ(オレンジ)の攻防の範囲を示しています。

ポストプレーからの展開は大まかに分けて1ターン、2キープ、3後ろや横への展開またはフリックパスぐらいなものです。だからDFはこのピヴォの予備動作から次の展開を予測しようとするわけです。


ボールホルダーがキックをしてボールがこの攻防の中を通過しようとすると、DF陣の注意は更に強く楕円内へ向けられます。









しかし、このキックの真意はスルーパスであったためDF陣は後手を踏む結果になります。

出し手に近いDFはこのパスの軌道を読み違える可能性は低いですが、受け手に近いDFほどパスの軌道を読み違えやすいという意味でこれは非常に狡猾なプレーです。

狭いスペースでも有効です。味方の足元を抜くようにして、更に奥にいる選手へパスを狙うことでスルーパスの成功率がアップします。


実際の11人制サッカーでもそんなに珍しくないシーンなので、このパスのトレーニングをすることは無駄ではないと思います。

プロの試合を見ていると、果たして出し手が意図的にこういうプレーをしているのかどうかよくわからないところがあります。結果的にボールが味方の近くを通過しているようにも見えます。一つ言えるのは、上記のピヴォのようにボールに触れなくてもDFの注意を引きつけるだけでチームに貢献できることがあるということです。


キックミスによってこの種のスルーパスが通ることも多々あります。クサビのパスがずれてDFラインの裏に抜けたら、たまたま味方が走っていたというようなシーンです。先日の日本代表ヨルダン戦の前半、香川がGKと1対1を作ったシーンもそんな感じでした。内田は明らかにワンツー狙いであのパスを放ってました。

いずれにせよ、こういう形で裏に抜けるパスをDFが予測することは非常に難しいと言えそうです。なぜならこのパスは守備の集団的意図の裏をかく行為だからです。クサビのパスは守備側にとって絶好のボール奪取機会です。ポストプレーヤーに直近のマーカーだけでなく周辺の選手の守備意識も集中します。ついついクサビの目標地点に意識がいってしまうから、他の相手選手へのマークが甘くなってしまうのです。

このパスを意図的に成功させるためのポイントはイメージ力です。ボールを前向きでフリーで受けてクサビのパスコースが見えたとき、瞬時にその奥にいる選手の動きを視認し、2つ目の選択肢を想像できるかどうかなんです。

次→重なったら一つ飛ばす

2 件のコメント:

  1. 上の記事について何回も考えたんですが、上の図で、最終的に水色チームの右サイドの選手(以下、1)が1のマークの、オレンジの選手(以下、2)の裏を取ったのですが、スルーパスを通した選手(以下、3)がパスを出すモーションとともに2を含めた他の4選手(ピヴォのマークも含む)の意識が集まると書いています。この時2がピヴォへのパスに対してピヴォに向かって動いています(最後の図で2が動いたところの矢印が黒色なので、視線ではなく実際に動いたものだと考えられます)。ただ、この時2はピヴォへの意識があっても、ピヴォへ実際に寄せる(プレス)ことはないと思います。上の図はフットサルをイメージした図ですし、確かにハーフウェイラインより前にいる選手が4対4で、サッカーではカウンター時を除くと、ほとんどない状況です。上の図を実際にサッカーで考えると、ピヴォ(フォワード)に対してCBのうちの一人がマークし、もう一人がカバーリングに入ると思います(仮に2トップだとしても、つるべの動きを取って、必ずカバーリングの選手を一人作るでしょう)。そうすると、裏のスペースが空いてないし、カバーリングの選手がピヴォに対しての動きを見せると、2はそんなにピヴォに対して人数をかける必要はないと判断して1のマークを優先するでしょう。そうすると3のスルーパスは「くさびとスルーパスの見合い」という理論では通らないと思うし、もし通ってもピヴォへのくさびのパスの見合いで通ったことにはならないと思うのですが?

    返信削除
    返信
    1. おっしゃることはよくわかりますし、実際に2の選手がピヴォに寄ることは極めて稀だと思います。

      しかし、トップレベルの試合の中ではクサビとスルーパスの見合いは頻繁に成立します。一緒に観戦して「ここだよ」と言えれば一番いいのですが。

      前回の記事の中で紹介したリケルメの動画を元に言うと、リケルメはポケットポジションのサビオラを囮にして右サイドを駆け上がるマキシ・ロドリゲス?にパスを送りますが、この際上記の2に位置するDFはサビオラに寄っていませんし、むしろマキシ・ロドリゲスを追いかけています。

      しかし、よく見ていただくと、この2の選手が、サビオラに気を取られてボールを見切るのが遅れているのがわかります。丁度、右後方に首を捻って反転する直前の様子でそれがわかります。この一瞬の動作によってマキシへのマークが手遅れになってしまっているのです。

      このようにクサビとスルーパスの見合いでは、物理的にDFを動かすのではなく、視線を集めてから切ることによって(これを僕は“DFの守備意識を剥がす”と呼んでいます)、崩しを可能にしているのです。一瞬の心の隙を突くからこそ美しいプレーが生まれるのです。

      納得いかなければまたコメントください。

      削除