footballhack: マクロつなぎ論7 安定不安定その2

2010年9月19日

マクロつなぎ論7 安定不安定その2

前回はサッカーのゲームを安定状態と不安定状態に分けて観ることを考えました。結論として不安定状態を少なくし安定状態を長くすることでゲームを支配することと、そのためにボール奪取後は安全にパスをつなぎチームとして素早く安定状態に入る重要性を説明しました。

今回はこの安定不安定を更に細かく考えていきます。

ルーズボールや攻守切り替え直後以外で不安定と呼べる状態は他にどんなものがあるかというと

1 ボールが空中に浮いている

2 ボール保持者がDFに1m以内に寄せられている、または身体が接触している

3 ボールコントロールが乱れている

4 ボール保持者のパスコースが読まれて味方が全員ぴったりと守備陣にマークされている

以上の状態について「不安定状態」と分類します。以下それぞれの説明です。

1:ボールが宙に浮いているときのすべてが不安定状態というわけではないですが、安定状態を目指すのにあまり望ましくない場面が多いと思います。例えばスローインやゴールキック、DFからのロングボールなどは、次の展開がルーズボールに近くなるシーンが多くなります。ボールを弾ませたままでは確実なプレーは難しくなります。正確なロビングパス以外は不安定状態といえるでしょう。

2:この認識は日本人にあまり重要視されていないです。ボール保持者に対して相手が1m以内に寄せてきた場合、ボール保持者のプレーの選択肢はかなり狭められます。身体が接触している場合(ポストプレーなど)体の動きを制限されるので必要な技術を発揮しづらくなります。この状態は不安定といえます。すぐにでもボールを失ってしまうような条件がそろっているからです。例えばクサビのパスもこの種類の不安定状態を導きます

3:ボールコントロールがグラウンド状況などにより乱れている場合、不安定状態といえます。ボールがイレギュラーバウンドしているときは安全に安定的につなぐことが難しくなります。

4:味方が相手の守備網に捉えられている場合、次の展開は無理なドリブル突破か無理なクサビのパスかロングボールしかありません。このときはボール保持者に余裕があったとしても不安定状態に分類します。一見安定した状態に見えますが、ボール保持側にとって次の展開が難しいときは、逆に言うと守備側が安定しているということなのです。こんなとき攻撃側がすべきことは、ボール保持者が上手に運ぶドリブルを使って、相手を一人引き付けてやることで味方一人をフリーにしてボールを彼に渡してあげるというプレーです。

不安定時にはミスが増えます。これは世界共通事項です。レベルやカテゴリーに関わらず必然的なことなのです。バルセロナだって不安定状態ではミスが頻発します。

何度も繰り返しますが、良いプレーとは安定状態を連続させるパス交換からシュートチャンスをつくるプレーのことであり、極力不安定状態を避けて安定状態を維持することが勝利を掴むキーポイントになるということです。

そして、安定状態でのパス交換から相手ゴールに迫るプレーはスペクタクルです。バルセロナが時折見せる素晴らしい攻撃は、ボール奪取してからシュートシーンを作るまで一貫して安定状態でボールをつないでいます。つまりDFに寄せる暇を与えていないということです。このような状況下(フリーで前向きな状態)でしたら練習でみるような高いパフォーマンスが発揮できますし、ミスが格段に減ります。

日本では不安定時、俗に言うプレッシャーがかかった状態で“イイプレー”ができる選手が良い選手だとされる、選手に対する評価基準があります。これが選手たちに不安定状態でサッカーをさせることを促すという悪習慣に繋がっています。競り合いに強い選手、どっちつかずのボールをマイボールにできる選手、むずかしいプレーで難しい局面を打開できる選手が試合を決められる選手として指導者たちに重宝される風習があります。

確かにこれらの能力も非常に大事なのですが、これらの能力を磨きに磨いた結果が今のJリーガーたちなのです。難しいプレーを優先的に選択するあまり、攻守の交替が頻繁に起こるゲームが多く、それが外国人選手たちに「日本のサッカーはテンポが速い」と言わせる原因になっています。

しかもこれらの能力の価値は世界に出て行くと無に近いです。つまりルーズボールをマイボールにする能力やポストプレーの能力は身体能力に頼る部分が多く、世界レベルのフィジカルコンタクトの中ではそういったプレーは成功しづらいという現実があります。

繰り返し同じ結論を述べますが、全ての日本人サッカー選手はここで説明した「安定」したプレーを志向する習慣をつけ、「安定」したサッカースタイルで勝利を目指す戦い方を身に付けるべきなのです。レベルやカテゴリーに関係なく、草サッカーやフットサルや育成年代からJリーグに至るまで。

次→マクロつなぎ論8 フィボナッチ数列


追記になりますが、この安定・不安定という考え方は審判団にとっても重要です。なぜなら、レフェリングを必要とするシーンはほとんどの場合不安定状態で起こるからです。レフェリングには試合の流れを読むことが必要ですが、この安定・不安定の考え方が試合の流れを読む一つの助けになると思います。

具体的に言うならば、試合が安定状態の時に審判は自分のポジショニングを確認し良い準備を行ない、不安定状態で起こりうる選手の衝突や不測の事態に対処するべく集中すべきです。

話は変わりますが、セントラルMFにとって主審の動き方はとても参考になります。何故なら主審は常に空いたスペースに位置取りますし、そのために後ろ走りやサイドステップを有効に使っているからです。運動量も多いです。しかし如何せん試合の流れ(空気)を読めてことがありますね。

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