footballhack: うまくなるサッカー観戦の仕方

2010年8月12日

うまくなるサッカー観戦の仕方

今回はサッカー観戦(TV)の仕方についての記事です。

何を考えながらサッカーを見るかということはとても大切なことです。それによってその試合から引き出せるサッカーのエッセンスは変わってきます。ここでは、選手の視点から観戦する場合、どのように見れば、少しでも多くのサッカー的訓示を得られるか紹介します

 いい試合を選ぶ
何のためにサッカーを見るかというと、自分がうまくなるためです。自分がうまくなるためには、参考になるプレーがたくさん詰まった試合を見るのが一番いいのです。

しかし、ここで勘違いしてはいけません。参考になるプレーとは、自分にもできそうなプレーのことです。身長150cmなのにトゥーリオのような相手の上にのしかかってのヘディングをまねしようとしたり、中学生なのに40M以上のロングフィードにジェラール・ピケのような精度を求めるのは、無理があります。

また、中学生の試合とJリーグの試合では選手のキック力や走力が違うので、選手間の距離も変わってきますし、総じては戦術的なレベルも大きく変わってきます。

このように自分のレベルとはかけ離れた試合から何かを学ぼうとしても、自分の普段の試合には活かせないことが多いと思います。

なので、観戦するのにいい試合というのは、自分のレベルに近くて且ついいプレーが見られる試合です。

たとえば、自分と近い世代のW杯や、自分と同じ年齢の選手が争う全国大会の試合です。

このピッチで戦う選手たちはきっと自分と同じ問題にぶつかっているに違いありません。同じようなプレッシャーと戦い、同じような場面に出くわし、それを解決しているのです。その方法を盗み真似することで、自分が出場する試合にも活きてくると思います。

結論1
同世代のトップレベルの試合から、自分の試合に活かせるプレーを学びましょう。


2 何度も繰り返し同じ試合を見る
いい試合を見つけたら、それを録画し何度も繰り返し見ましょう。はじめはどのように得点が推移したか確認し、その試合の流れをつかみ、次になぜ得点が決まったかということに注意しながらゴールの5~10分前から見てみます。そして、一人の選手に着目しその選手だけを追うように見ていきます。

何度も同じ試合を見ていると、一度見ただけでは気づかないような細かいところに徐々に気がついていきます。試合の次の展開が頭に入っていれば、さらに他の選手の動きに目がいくようになるからです。そして、サッカーのエッセンスはそういう目立たない動きに隠れている場合が多いのです。

元日本代表監督の岡田さんが南アW杯直前にシステム変更を決断したのは、代表戦をビデオで5回ほど繰り返し見たときだと、インタビューに答えていました。

結論2 サッカー観戦は一度きりではなく、何度も同じ試合を見ることでより理解が深まります。

3 ひとりの選手に注目する
いいプレーを盗むにはいい選手を見つけることから始まります。いい選手とはもちろん活躍してチームに多大な貢献をしている選手のことを指すのですが、ここでも参考にすべき選手の選び方があります。

それは、自分と同じポジションをプレーしていることと、自分と身体的特徴が似ていることです。

自分と同じポジションで身体能力が近い選手が、より高いレベルの試合で活躍していれば、そこには必ず参考にすべきプレーがあります。その選手にボールが回ってくる10秒前くらいからスロー再生して一挙手一投足に注目してみてください。そしてその場で真似をしてみてください。そこには今までの自分にはなかった新しい動きやアイディアが示されていると思います。

また、その選手の視野には何が映っているかということを想像しながらプレーを見てみてください。そうすると、一見簡単に見えるプレーもその難しさがよくわかり、シンプルなプレーが自分にはピッチ上でできていないことがよくわかります。

結論3 自分と同じポジションの選手を追い続け、ボールに絡んだときは一時停止やスロー再生で確認することで、新たな発見が生まれます

以上の点に気をつけて観戦をすると、得点の少ない盛り上がりに欠けるような試合も、とても興味深く面白く見えてくるものです。


補足1:
テレビ観戦ではピッチ全体の動きが見えないから、スタンドで観戦したほうがいいという主張もあると思います。しかし、スタンド観戦ではスロー再生や一時停止ができません。録画という技術をつかって時間を引き延ばしてサッカーを考えられることがテレビ観戦の強みです。スタンド観戦ではリアルタイムでピッチ上で起こったことを理解しなければならないという高度なサッカー戦術眼が求められます。なので、スタンド観戦をしながらサッカーの理解を深めるにはサッカーの理解が深い人を隣において解説してもらうのが一番いい方法だと思います。スタンド観戦も一長一短ということです。

補足2:
僕がこの観戦方法を思いついたのは2003年U-17世界選手権でセスク・ファブレガスのプレーを見たときです。背丈もそれほど変わらず、どちらかというと細身のセスクが中盤でボールを全く失わずにパスをさばいていく様は衝撃的でした。自分もなんとかしてあんなプレーをしたいと思って食い入るように彼のプレーを分析していくと、少しずつそのしくみが理解できるようになりました。

補足3:
本当に上手い人のプレーを間近で見たければ、近くの社会人サッカーの試合を見に行くといいでしょう。社会人になってもサッカーを続けているということは相当サッカーが好きということだし、それなりに上手い人が揃っているはずです。高校の部活でレギュラー主力のうち2〜3人しか社会人でサッカーを続ける人はいません。それが18歳〜38歳くらいまで集まったチームでは、普通に考えて部活より高いレベルの試合を期待できます。ピッチサイドでの観戦も無料なので、上手い人のプレーを盗むには絶好の機会です。是非足を運んでみてください。


7 件のコメント:

  1. 補足1 に関して。

    私は、スタンドで観戦した試合を、録画してスローで見直す、という「折衷案」というか「欲張り案」を支持します。

    レベルに関係なく、「上から俯瞰する」見方は早めに身につけたほうが良いのではないかというのがスタンド観戦支持の理由。

    でも、個別のプレーや相手の逆をつく動き、などについては、これはもうスロー再生を何度も見るしかないのも確かです。
    (本当に逆をつく動作は、観客もだまされますから ...)

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  2. 連投すみません、一つ書き忘れたことがあるので。

    先ほど書いたのは、今時は、スカパーなどでたくさんの試合をテレビ放送するので、観戦した試合の放送を録画してスローで見れば、スタンドとスロー繰り返しを両立できる、という趣旨でした。

    が、それとは別に。

    サッカー少年たちには「自分の出場した試合を録画したビデオ」を見ることをお勧めします。
    それも、「自分のプレーの大写し」ではなく、プレー内容がわかる範囲でワイドな撮影方法で、一試合まるごと、ボールの動きにそって撮影したものがよいと思います。

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  3. 素晴らしいコメントありがとうございます。まさに、完璧な試合観戦法ですね。その方法ならサッカーのエッセンスをしっかり消化できると思います。

    それと、自分も、「自分の出場した試合を録画したビデオ」をみることについても書こうと思ったのですが、そこから何かを得たという経験が少なかったので、書くのを見合わせていました。ただ、自分達の試合を仲間と見て話し合うという体験は本当に素晴らしいものです。

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  4. はじめまして。中学のサッカー部に入っています。
    サッカー部の顧問の先生にバルサの試合やチャンピオンズリーグの試合など、プロのサッカーの試合を見ろとよくいわれます。上の記事に書いてある通り、中学生のサッカーとプロのサッカーでは全然違うので、いまいち参考になりません。だからといって、プロの試合を見て、全く意味がないことはないと僕は思います。例えば、ボールをもらう前の駆け引きだったり、ドリブルだったり、盗めるところはいろいろあるんです。でも、それを試合中にいかせるのかと言われれば、いかせません。一体どういう所をみればいいのでしょうか?教えていただければ非常にありがたいです。

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  5. @検索さん 記事にも書いたように同年代のトップレベルの試合です。中学生ならU-14W杯、U-15クラブユース選手権、中体連全国大会等です。高校生ならU-17W杯、U-18クラブユース選手権、IH、選手権等です。最近は地上波で放送することが少なくなっているので、視聴環境がない場合は、顧問の先生か知り合いに録画してもらうように頼みましょう。また、近くで全国レベルの大会が開催されるのであれば、積極的に見に行きましょう。一番良いのはチームメイトに見習うべき選手が居ることなのですが。。。

    何を見るべきか決めるということは基準を作ることと同義です。基準とは比較です。つまり、自分と彼らのプレーの違いを比較するのです。このためには自分を客観的に見直す必要があります。自分のプレーの問題点を1つずつ洗い出せば自ずと基準が見えてきます。

    質問の回答になるようなことはすべて記事中に書いてあるので、あとは自分で考えてください。自分で考えられない選手はよい選手になれませんからね。

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  6. ご返信どうもありがとうございます。ではプロの試合は見ても意味がないということなんでしょうか?

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  7. @検索さん プロの試合を見ることは選手として当然やるべきことだと思います。しかし、この記事で言いたかったことは、プロの試合だけでなく同年代の試合にも眼を向けるべきだということです。これが意外と盲点になりやすく、同年代の試合をつぶさに観察する人は少ないのです。もちろんプロの試合のほうが見習うべきプレーがたくさんあります。よって、両方をバランスよく見ることをお勧めします。

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