2013年10月19日
トランジション理論(1)
現代サッカーでは攻守の切り替えを制するものが試合を制すると言われています。サボる時間がどんどん減っていき、走力的にも戦術的にも選手への要求が高まっています。FWはカウンターを未然に防ぐために守備へといち早く切り替え、DFはカウンターを決めるために長い距離を走り相手ゴール前へ雪崩れ込みます。こんな風景が常時見られるようになったのは2000年代に入ってからです。
(ちなみにいうと今回の話は選手としてはあまり考えなくてもいいところで、指導者向けのものだと思ってください。選手はあんまり小難しいことは知らないほうが上手くなれる、そんな気がします。)
昨今ではドルトムントやバイエルン・ミュンヘンに代表されるようにトランジションサッカーを標ぼうするチームが欧州の覇権を握っています。その源は攻守の切り替えの移行部、トランジションを支配する試合戦略です。
そういった背景もあって日本でもトランジションの重要性が繰り返し指摘されています。しかし、そのほとんどが闇雲に「攻守の切り替え」を叫ぶだけです。攻守の切り替えを高めることは気合や体力の向上によって成し遂げられる、というような印象さえ受けます。しかしそれでは一昔前の根性論となんら変わりはありません。
なぜ攻守の切り替えが遅くなってしまうのか、その点を明らかにしなければ、トランジションの質を高めることはできないのではないでしょうか?
そこで僕は日頃の草サッカー経験からひとつの仮説を立てました。
その仮説とは
攻守の切り替えが遅くなる理由は、切り替え後のプレーイメージを持てないからではないか?
プレーイメージとは予測であり、セグメント認識です。カオティックな状況を過去のパターンから類推して整理し秩序を与えます。そして、こう来たら次にこうしたい、という意思を示すことです。
言葉をこねくり回してもサッカーはうまくなりません笑。 じゃあここでひとつの体験をしてもらいましょう。
下の画像はだまし絵で有名なルビンの●というものです。
この図は2通りの見方ができます。2つの人の顔と一つの壺です。見慣れたあなたなら壺と顔を交互によどみなく見分けることが出来るはずです。なぜなら、あなたはすでにパターン認識をし終えたからです。
では次の絵は何に見えるでしょうか?
答えは「インディアンとエスキモー」です。
こうすると少し見やすいかもしれません。
白い毛皮のファー付きコートを着た人の背中が見えましたか?
では次にエスキモーとインディアンを一秒おきに見分けてみてください。"切り替え”、出来ましたか?なれるとすぐ出来るようになります。なぜさっきはできなかったのに今は出来るのでしょうか?それは見分けるための意識の"切り替え”ができるようになったからです。パターン認識して識別できるように馴化(トレーニング)したからです。
何が言いたいかというと、認識と馴化ができれば表現を変えられるということです。サッカーに置き換えて言うと、攻撃から守備まで(あるいはその逆)の一連の流れを一つのパターンとして意識することで、トレーニングの質が高まり、高速トランジションの馴化が進むということです。
普段、「切り替え切り替え」と口酸っぱく言われていても、攻撃のセグメントと守備のセグメントを無意識のうちに区別して認識している選手が多いと思います。だから、攻撃が終わったら一息ついてフーッと休み、ボールを奪ったら”は~”と安心して足を止めてしまうのです。
ボールを失ったあとはどう動くべきか、ボールを奪ったらどう動くべきかについての指針がない状態なのです、日本サッカーの現状では。
だまし絵で学んだ通り、まずはそれぞれエスキモーとインディアンの認識からはじめ、次にエスキモー→インディアン、インディアン→エスキモーの切り替えを"ひとくくりにして(セグメント化して)” 認識します。最後に馴化、高速化のトレーニングを行います。ここまでコツコツと努力を重ねてようやくトランジションの質が高まってくるのです。
じゃあ指針を作ろうという話になりますが、それにはまず攻撃と守備を"速い”と"遅い”に分けなければなりません。そして攻守の切り替えのステージに12本の矢印を引きます。これの全てのパターンについて練習を重ねなければなりません。参考としてクロップの練習 ドルトムントのトランジショントレーニングは遅い守備→速い守備の練習です。
なにを言っているかわからないとは思いますが、長くなるのでこれで一旦区切ります。いっつも表現が難しくなってしまうのがよくないところであります。わかりやすく簡単に説明できないとサッカー文化の深化が進みませんからね。twitterのほうで次回以降説明に使う図だけアップしときます。
トランジション理論(2)
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